バランスのよい食事と塩分コントロールが基本!
寝たきりを防ぐためには、血管の健康を守ることが大切です。
まず気をつけたいのが「高血圧」でしょう。
「高血圧を招く原因には、喫煙や過度の飲酒、ストレス、運動不足などさまざまな要因が挙げられます。そのなかでも大きいのが塩分の過剰摂取です。特に現代では、すでに塩分が多量に含まれる加工品なども多く、知らず知らずのうちに塩辛い味に慣れてしまっている傾向です。
人の味覚の敏感さは4~5歳頃がピークといわれています。特に苦味や酸味、塩味にも敏感です。ピーマンが嫌いな子どもが多いのも、苦味の刺激に弱いからと考えられます。
しかしながら、その後は徐々に受け入れるようになり、現代ではファストフードの味に慣れてしまって、どんどん味の濃いものを好むようになります。そして、大人世代になると塩味がないと物足りなく感じ、薄味のものだと食欲がわかない人もいます」(鈩裕和先生)
塩分をとりすぎると、血液中のナトリウム濃度が高くなります。
「すると、それを薄めようとして水分を保持するので、結果として血液量が増加。血管への圧が高くなり高血圧になります。
高血圧が続くと血管壁がもろくなり動脈硬化を引き起こし、血栓ができるリスクを高めます。日常的に減塩を習慣化することが大切です」
厚労省が推奨している1日の塩分摂取量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満。高血圧や慢性腎臓病の人は重症化予防のために6g未満とされています。
しょうゆ小さじ1杯の塩分量が約1g、味噌大さじ1杯が約2g、ラーメン1杯が約3~5g、カレーライス1杯が約3gなので、1日6g未満に抑えるのはなかなか難しいものがあります。
減塩を実践するにはちょっとした工夫の積み重ねが大切! そんな工夫を下にまとめました。
【減塩に役立つ工夫】
〇塩、しょうゆ、ソースは直接食品にかけずに、量をはかって小皿に入れてつけて食べる。
〇ハム、ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、漬物などの塩分を含む加工品を控える。
〇しょうが、にんにく、わさび、みょうが、こしょう、ハーブなど香りのよい食品、レモンやゆずなどの柑橘類などを上手に使って、減塩の物足りなさを補う。
〇味噌汁は1日1杯までとし、麺類のつゆを全部は飲まない。
〇塩分が含まれるだし汁は控え、かつお節や昆布、干しいたけなどの天然だしを使う。
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体内の塩分調整をするミネラルを積極的にとる
「食事の内容は、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素をバランスよくとることが基本です。
その中でも、血液中の塩分を増やしすぎないように働き、血圧上昇を抑える働きがある、カリウム、カルシウム、マグネシウムといったミネラルを意識してとるといいでしょう。
カリウムは過剰な塩分(ナトリウム)を尿として排出するのを促し、マグネシウムはその働きを助けます。カルシウムは不足すると血管を収縮させて血圧を上昇させます。現代の日本人はカルシウムが不足傾向なので、摂取を心がけたいところです。
カリウムが豊富な食材は海藻類、豆類、ほうれん草やトマトなどの緑黄色野菜。カルシウム豊富なのは牛乳や乳製品、小魚、海藻類など。マグネシウムが豊富なのが、海藻類、豆類、ナッツ類などです。
タンパク質のメインおかずに、これらの食材を副菜や味噌汁などに加えるように心がけてみてください」
【教えていただいた方】

医療法人社団つくしんぼ会理事長。平成9年に、外来診療から訪問医療介護、在宅看取りまで連携したサービスを提供できる専門機関「つくしんぼ会」を設立。職種間の垣根を越えて自由に議論できる環境作りに努め、治療介護計画を立案し実践する体制を構築。患者に寄り添う医療を実践する。著・監修書『身近な人の突然死・寝たきりを防ぐ心臓と脳の正しいケア』(自由国民社)など。

イラスト/小迎裕美子 取材・文/山村浩子


