口は「消化のスタート」地点。噛むことがすべての第一歩
「食べたものが通る消化管は、口から肛門までつながった1本の管。口はそのスタート地点です。ここでしっかり食べ物を噛んで唾液と混ぜることが、体へ栄養を送り込む鍵なんです。
まずはよく噛む。これを意識することが、歯ぐきケアの入り口。ひと口20回、できれば30回は噛みましょう。それが今日から始められるいちばん簡単な“内側からのケア”ですよ」
と、優しくも熱く語るのは歯科医師の塚原妹美先生。

忙しい日々のなか「よく噛まずにパパッと食べてしまう」「気がつくと味わう余裕なく食事が終わっていた」。そんな人は意外と多いもの。
さらに、口呼吸の人は鼻で呼吸しにくい分、噛む回数が減りがちで、どうしても「早く飲み込むクセ」や「水などで流し込むクセ」がついてしまいます。その結果、食べ物が唾液と混ざらず、栄養の吸収力もダウン。
唾液は天然の消化液です。よく噛むことで分泌され、消化酵素がスムーズに働きます。
40代からの歯ぐきは、食べたもので変わる!
歯ぐきや歯を作る材料、健康に保つ材料は口からしか補給できません。よく噛まずに食べていると、消化吸収がうまくいかず、胃や腸に負担がかかるのは当然ながら、腸内環境も悪くなります。
そして、食事選びが偏っていると歯ぐきは弱くなりがち。さまざまな食材を食べることが、40代からの歯ぐきケアには効果的です。
特に不足しがちなタンパク質やビタミン類、ミネラル類。これから紹介する7つの栄養素を意識してとることで、「歯ぐきがしっかりする」「出血しにくくなる」など、体の内側からの変化も感じやすくなります。
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歯ぐきが喜ぶ7つの栄養素。食べてつくる未来の健康
歯周病のケアというと、歯磨きだけに意識がいきがちですが、意外に大切なのは食べる力と栄養バランス。
「例えば、歯ぐきや粘膜を作るおもな材料はコラーゲン。つまり元になるのはタンパク質です。
コラーゲンを多く含む食材をとることも大事ですが、その吸収を助けたり、コラーゲンの生成を助けるためには鉄やビタミンCも欠かせません。
これらは毎日の食事からしかとることができないもの。偏りなくいろいろな栄養素を意識して食べることが、40代からの歯ぐきケアにいちばん効きます」
ここで、塚原先生が考える、歯ぐきのためにとりたい栄養素を整理しておきましょう。ビタミンはABCDと全部です。覚えやすいはず!

━━★ 歯ぐき・歯周病ケアに必須の7大栄養素 ★━━
【タンパク質】
歯ぐきも骨もおもな材料はタンパク質。不足するとハリがなくなり、再生力も落ちる。肉、魚、卵、大豆製品をしっかり意識して。
【鉄】
コラーゲンを作るために不可欠。足りないと歯ぐきがふわふわしたり、口内炎もできやすくなる。レバー、ひじき、小松菜など、鉄分豊富な食品も忘れずに。
【亜鉛】
粘膜や唾液の分泌、粘膜の修復に欠かせないミネラル。亜鉛不足は、口内の傷が治りにくく味覚にも影響。牡蠣、ナッツ、赤身肉などを食卓へ。
【ビタミンA】
口腔内の乾燥や粘膜のあれを防ぐ。レバーやカラフル野菜(にんじん、ほうれん草、かぼちゃなど)でビタミンAを補給。
【ビタミンB群】
粘膜の健康維持にはB群が欠かせない。不足すると口内炎・口角炎ができやすく。納豆、卵、豚肉、緑黄色野菜、乳製品などさまざまな食品で。
【ビタミンC】
コラーゲンの合成に不可欠。ビタミンC不足は歯肉出血のもと。ブロッコリー、いちご、キウイ、パプリカなどの野菜・果物を意識して。
【ビタミンD】
歯や歯ぐきを支える骨を強く、免疫力もサポートする意外な立役者。鮭やしらす、きのこ、そして日光浴も大切な味方。
「栄養素は食事からとるのが基本だと考えています。サプリメントも補助的に使ってもかまいませんが、まずは毎日の食事から見直して。食べることが歯ぐきを育てていくイメージでいてほしいですね」
食べ方も食材選びも、今日のひと口が未来の歯ぐきを作る。それを少しでも意識して、自分の歯と笑顔を守っていきましょう。
【教えていただいた方】

歯学博士(再生医療)。医療法人社団宏礼会 塚原デンタルクリニック勤務。医療法人社団宏礼会 行徳TM歯科院長。歯科衛生士学校で講師を務めたり、新聞でコラムを担当するなど、歯科医院へ行くことの重要性を訴える歯科医師。 塚原デンタルクリニック 行徳TM歯科
イラスト/内藤しなこ 取材・文/蓮見則子


