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「糖尿病」があると動脈硬化が10~20年早く進む

将来の「寝たきり」を回避するはじめの一歩といえるのが、40代からの「生活習慣病」の予防とコントロールです。その中でも糖尿病があると、高血圧や脂質異常症を合併しやすく、動脈硬化を加速させます。そんな糖尿病の医療の現状について、医師で外来診療から訪問医療介護を実践する鈩裕和(たたらひろかず)先生に伺いました。

40代から知っておきたい糖尿病との付き合い方

糖尿病で治療を受けている患者総数は552万3000人(厚労省・令和5年調査)。前回(令和2年)の調査より多少、減少傾向にあるものの、相変わらず深刻な状態です。

 

「糖尿病は、インスリンというホルモンが十分に分泌されなかったり、働きが悪くなるために、血液中のブドウ糖濃度を示す血糖値が慢性的に高くなる病気です。

 

インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、血液中のブドウ糖を細胞に取り込ませて、血糖値を一定に保つ働きしています。これがなんらかの原因で十分に機能しなくなります。

 

大きく1型と2型に分けられ、2型がいわゆる生活習慣が原因の糖尿病です。糖尿病があると、ない人に比べて、動脈硬化が10~20年早く進むといわれています。

 

治療をせずに高血糖の状態を放置すると、動脈硬化が原因による心筋梗塞や脳卒中などを引き起こすリスクが高まります。そのほかにも、網膜症(視力低下や失明)、神経障害(手足のしびれなど)、腎症(腎機能の低下)、足病変(足の壊疽)などを引き起こします。実はこの合併症が怖く、寝たきりにつながる大きな要因になります」(鈩裕和先生)

 

糖尿病の診断は、空腹時血糖値が110 mg/dLを超えたら注意信号! そして、初期では無症状なことが多いのですが、こんな症状も目安にしてください。

 

【糖尿病初期の自覚症状】
こんな症状があったら要注意!

〇喉が渇く
〇尿の量が増える
〇疲れやすい
〇体重が減る
〇空腹感
〇目のかすみ
〇手足のしびれ・こむら返り
※初期の場合は自覚症状がない場合もあります。

 

「治療の基本は食事療法、運動療法、薬物療法です。

 

食事療法では、主菜と副菜で栄養バランスのよい食事を1日3食、腹八分を心がけます。主菜にはタンパク質(肉・魚・大豆製品など)を十分にとり、筋肉量の維持を。副菜にはビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富な食材(野菜やきのこ、海藻など)をたっぷりと! 果物やスイーツは食後のデザートとしてとり、間食は極力とらないようにします。これは空腹時にとることによる血糖値の急上昇を避けるためです。

 

運動はウォーキングがおすすめ。連続して20分、これを週3~5回を目安に! いずれも無理のない範囲で続けることが最も重要です」

 

進化した薬を上手に活用する!

「薬も上手に使っていくことが推奨されています。特に、2型糖尿病の薬物療法では、それまでの薬の弱点であった低血糖になるリスクが低く、体重増加が起こらない薬が登場し、2010年頃から急速に進化して選択肢が増えています」

 

では、薬の種類を見ていきましょう。特に★印のものが画期的で、糖尿病の治療シーンを大きく変えた薬です。

寝たきり 糖尿病 治療 薬 イメージ

【糖尿病の薬】
【インスリンの分泌を促す薬
★DPP-4阻害薬
血糖値を下げるインスリンの分泌を促すのがインクレチン※というホルモン。この働きを阻止してしまう酵素DPP-4の働きを阻害することで、インスリン分泌を促して血糖値を下げます。単独使用では低血糖や体重増加を起こしにくい薬です。
副作用:スルホニル尿素薬(SU薬)などを服用している場合は低血糖。

※インクレチンは腸管から分泌されるホルモンの総称で、GLP-1やGIPがその一種。血糖値が高いときにインスリンの分泌を促し、血糖値を上げるホルモンのひとつであるグルカゴン分泌を抑制する働きがあります。

 

★GLP-1受容体作動薬
インスリン分泌を促すインクレチン(=GLP-1)様の作用により、血糖値が高いときにインスリン分泌を促し、血糖値を上げるホルモンであるグルカゴン分泌を抑制します。単独使用では低血糖や体重増加を起こしにくい薬です。
副作用:食欲不振、吐き気、便秘、下痢、スルホニル尿素薬(SU薬)などを服用している場合は低血糖。

 

〇スルホニル尿素薬(SU)
膵臓のβ細胞を刺激してインスリンの分泌を促します。
副作用:低血糖、体重増加など。

 

〇速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
短時間で作用し、インスリンの分泌を素早く促します。食事の直前に服用し、食後の血糖値の上昇を抑えます。
副作用:低血糖など。

 

【インスリンの働きを高める薬】

〇ビグアナイド薬
肝臓から糖の放出を抑え、インスリンの感受性を高めます。単独使用では低血糖を起こしにくい薬です。
副作用:食欲不振、吐き気、便秘、下痢など。

 

〇メトホルミン薬
肝臓での糖の生成を抑え、筋肉での糖の利用を促進。インスリンの無駄遣いを抑えることで、インスリンの効きをよくします。肥満治療に使われることも。
副作用:下痢、食欲不振、腹痛、吐き気、発疹、かゆみなど。

 

【糖を尿に排出する薬】

★SGLT2阻害薬
尿細管から血液中へのブドウ糖の再取り込みを妨ぎ、尿への糖排泄を促すことで血糖値を下げます。体重減少効果があるので、痩せる必要がある人に適しており、腎臓の保護効果も確認されています。

副作用:低血糖、尿路・性器感染、脱水、頻尿、皮膚症状など。

 

〇α-グルコシダーゼ阻害薬
小腸での糖の分解・吸収を遅らせて、食後の血糖値上昇を抑えます。単独使用では低血糖を起こしにくい薬です。
副作用:お腹のはり、おならの増加、下痢など。

 

〇インスリン製剤(直接補充)
インスリンを直接体内に注入して血糖値を下げます。

 

これ以外にも、異なる作用を持つ薬を複数合わせた配合薬もあります。

 

「こうした薬を服用するようになると血糖値が下がるため、食事や運動療法をやめてしまうケースがとても多いです。しかしながら、糖尿病の治療の基本はあくまでも食事と運動療法です。薬物療法を始めても、生活改善を継続することがとても大事です。

 

一方で、逆に『薬には頼らない』と薬を拒否するケースもあります。食事と運動療法をしっかり実行すればいいのですが、結局はそれもできず、症状を悪化させてしまう人が少なくありません。

 

薬を上手に用いながら、ある程度食べたいものを食べるという方法も、人生を楽しむという側面を考えれば、私はよいのではないかと思っています。その人に合った方法で、血糖値をきちんとコントロールしていくことが大切です」

 

【教えていただいた方】

鈩 裕和
鈩 裕和さん
医師

医療法人社団つくしんぼ会理事長。平成9年に、外来診療から訪問医療介護、在宅看取りまで連携したサービスを提供できる専門機関「つくしんぼ会」を設立。職種間の垣根を越えて自由に議論できる環境作りに努め、治療介護計画を立案し実践する体制を構築。患者に寄り添う医療を実践する。著・監修書『身近な人の突然死・寝たきりを防ぐ心臓と脳の正しいケア』(自由国民社)など。 鈩 裕和 書影 身近な人の突然死・寝たきりを防ぐ

 

イラスト/小迎裕美子 取材・文/山村浩子

 

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