リラックス法の前編では重心を下に意識させる動作で体をほぐす方法を練習しました。後編では息を吐くことを重視した呼吸法で、副交感神経を高めて心を楽にする練習を実践してみましょう。
教えていただいたのは
伊藤絵美さん
Emi Ito
1967年生まれ。公認心理師、臨床心理士、精神保健福祉士。カウンセリングの専門機関「洗足ストレスコーピング・サポートオフィス」所長。クライアントへのカウンセリングのほか、企業研修やセミナー、ワークショップを積極的に開催。『セルフケアの道具箱 ストレスと上手につきあう100のワーク』(晶文社)など著書も多数。
息を吐くことを意識して
心身が嫌な感じになると、人は呼吸が浅くなり、時には無意識に息を止めてしまっています。そこで「苦しいな」と思うと、「息を吸わなきゃ!」と“吸う”ことばかりしがちです。
でも、心身を緩めるには、息を吸うより”吐く”ことが大切。息を吐くことを重視した呼吸法を、毎日1回ずつでもいいので実践してみましょう。
声を出すため息で息を吐ききる
「ヒュー」とか「ヒャー」と声を出しながら大きなため息を。大げさなため息をつき、息を吐いて吐いて、とにかく全部吐ききります
鼻から静かに息を吸い込む
全部吐いて苦しくなったところで、鼻から静かに静かに息を吸いはじめます。お腹に手をあて、お腹がふくらんでいくのを感じながら
1〜2秒間息を止める
吸ったらいったんピタッと息を止めます。このときもまだ、お腹が大きくふくらんでいるのが正解です
口からほんの少しずつ吐く
口から静かに細く長く息を吐いていきます。頭の中でゆっくり数を数えながら。もう吐けなくなったところで1回の呼吸が終了。1からまた繰り返します
いろいろな姿勢でトライ
呼吸は練習するほど身についていきます。いつでもどこでもできるので、座っているとき、立っているとき、寝ころんでいるときなどいろいろな姿勢でできるようになるのが理想です
副交感神経を高めると自然と心が楽になる
「心が張り詰めていると自律神経が戦闘モードに入り、交感神経が優位なままになってしまいます。リラックスするためには、副交感神経を優位にしてバランスをとること。
特に、呼吸と自律神経は深くかかわっていて、息を吐くときに副交感神経が優位になり、筋肉も弛緩してリラックスモードに変わります」(公認心理師・伊藤絵美さん)
イラついたり心がギクシャクして、じっくり呼吸法を試している暇もないという人は、ため息だけでもいいのです。そもそもため息というものは、心身の緊張や疲れを取るために体に備わった知恵だとか。
ならば意図的に、思いきり大げさにため息をつくのは、最強のセルフケアといえるかもしれません。気づいたときに何回でも、ため息をつきまくりましょう。まわりが気にならなければ、「はぁ〜〜」と大きな声とともに。
息を吸い続けると「過呼吸」になるおそれもありますが、息を吐くことにはメリットしかないことが医学的にも証明されています。
イラスト/雨月 衣 指導・監修/伊藤絵美(洗足ストレスコーピング・サポートオフィス) 構成・原文/蓮見則子