漢方の診察では、「舌」を診る「舌診」が欠かせません。ここでは舌診の重要性とポイントを知っておくとともに、更年期に不調を感じる女性に多い「肝熱」の舌の様子をご紹介します。
漢方は、ドクターまかせではなく、自分でも整える
自分を診るには、まずは「舌」から
舌には体の状態が面白いように記されている
更年期のさまざまな症状を解消するには、まず自分を知ることから。
「自分の現状を知る簡単な方法は、舌を見ること。舌には、その人の体調が面白いように映し出されています。毎
日、鏡の前で舌をチェックする習慣をつけましょう」と樫出さん。
舌を見るポイントは色、形、苔(こけ)のつき具合。多くの更年期女性が陥っている肝熱と腎虚も、舌にその特徴が表れています。
「今回ご紹介するのは肝熱と腎虚の舌の例。舌の状態は十人十色ですが、自分に近いものをチェックしてみて」
漢方薬を飲んだり、生活を正して養生すると、舌の色、形、苔の様子がしだいに変わっていきます。
「健康で若々しい舌は、薄紅色で滑らかな形で、苔が偏りなく薄く生えています。そんな舌を目指して」
舌のここを見る!
色
薄紅色が漢方でいうところの中庸で、バランスのとれた状態。肝熱に陥っていると赤みが強く、腎虚だとグレーっぽい
形
長さや幅、厚み、側面が波打っていないかを診ます。肝タイプ(肝熱)は大きく丸みがあって厚く、腎タイプ(腎虚)は薄くて細い形
苔
日本人は舌の粘膜が薄く、刺激に弱いため苔がつきやすい。つき方、色で体調がわかる。苔は基本的に取ってはいけません
<肝熱の舌の例>
舌裏怒張タイプ
【特徴】
舌の裏側の静脈2本が太く
くっきり浮き出ている
縦に走る静脈が太くて2本が近寄っているほど、血液がドロドロになる瘀血(おけつ)の可能性大。不調の大きな原因は血流の悪さにあり。
【起こりやすい更年期症状】
肩コリ、腰痛などがあり
目の下のくまやシミができやすい
痛みに弱く、肩コリ、首コリ、腰痛に悩まされがち。手足は冷えるのに顔や頭はボーッとする冷えのぼせになりやすい。あざが消えにくいことも。
【漢方薬の例】
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
・田七人参(でんしちにんじん)
桂枝茯苓丸は滞った「血」の巡りをよくする漢方薬。田七人参は中性脂肪やコレステロールを分解し、血液をサラサラにして血流を改善。
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両脇が赤いタイプ
【特徴】
両脇が赤く
舌に厚みがある
高血圧で血流が悪くなりがちな肝熱の典型的な舌。舌の両脇が鮮やかな濃いめの赤色。肝熱の舌は総じて厚みがあり、大きめ。
【起こりやすい更年期症状】
イライラしやすく
のぼせ、ほてりなどの症状も
ストレスをためやすく、イライラしがちで、のぼ
せやすい。不眠に悩まされることも。
【漢方薬の例】
・加味逍遙散
・黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
加味逍遙散は「血」の不足を補い、自律神経を整える漢方薬。黄連解毒湯はのぼせを抑え、イライラを落ち着かせて、不眠を改善。
苔が黄色いタイプ
【特徴】
両脇が赤く
苔の色が黄色っぽい
肝熱の特徴である両脇の赤みと厚みのある舌に加え、苔が黄色っぽいのは、体に熱がこもった状態を表しています。
【起こりやすい更年期症状】
胃腸が弱く食欲がない
胃腸が弱り、食欲がなく、食べても消化不良に。周囲の出来事に敏感になり、気にしたり、怖がったりするように。
【漢方薬の例】
・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
・抑肝散(よくかんさん)
柴胡加竜骨牡蛎湯は落ち込んだり不安になったりするのをケア。抑肝散は神経の高ぶりを抑えてうつうつとした気分を解消。
形が波々タイプ
【特徴】
舌のまわりが赤く
側面が波打っている
舌のまわりが赤く、厚みがある肝熱タイプで、側面が波打っているのは、漢方でいう水毒の状態。体に余分な水がたまっています。
【起こりやすい更年期症状】
アレルギー症状が出やすく
神経質になりがち
花粉症、鼻炎などのアレルギー症状を起こしやすい。物事に神経質になりやすい。自分を出さず、息が詰まりがち。
【漢方薬の例】
・柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
・クマザサエキス
柴胡桂枝乾姜湯は冷えを改善し、神経過敏をケア。クマザサエキスは抗菌作用に優れ、アレルギー症状を抑えて免疫力をアップ。
撮影/鈴木康久(千代田スタジオ) イラスト/内藤しなこ 構成・原文/小田ユイコ