尿もれに悩まされた経験をもつ女医の慶田朋子先生の、超音波での膣治療についてお話に続き、今回は八田真理子先生に膣ケアを伺います。
2.腟炎、子宮脱などの原因にも??「腟のトラブル」
八田真理子さん
Mariko Hatta
1990年、聖マリアンナ医科大学医学部卒業。順天堂大学、千葉大学産婦人科学教室、松戸市立病院産婦人科などを経て、’98年ジュノ・ヴェスタクリニック八田を開業。日本産科婦人科学会専門医、日本抗加齢医学専門医。※モナリザタッチ1回¥30,000
腟錠やクリーム、レーザー治療など
自分に合った方法で腟ケアを
「加齢による女性ホルモンの減少は、腟にも大きな影響を及ぼします。まず腟粘膜の厚みが減少し、ひだが薄くなり、腟が萎縮。同時に腟粘膜細胞も減っていくため、潤いがなくなり、乾きやすくなってしまうのです。性交時に痛い、デリケートゾーンがヒリヒリする、かゆみを感じるなど、これらにはすべて女性ホルモンの減少が関係しています。また腟内の常在菌のバランスも変化するため、においのあるおりものが出ることもあります」。
そう説明するのは、ジュノ・ヴェスタクリニック八田院長の八田真理子先生です。
「口にしにくい悩みかもしれませんが、つらい症状がある人は、ぜひ婦人科医に相談を。例えば性交痛なら潤滑剤などで対応できますし、今は腟の弾力や潤いを取り戻すレーザー治療『モナリザタッチ』などもあります」
具体的に、更年期の腟トラブルを防ぐ方法としては、どのようなものがあるのでしょうか?
「代表的なものとしては、HRT(ホルモン補充療法)ですね。ただ、なかには『腟の乾燥には効果がなかった』『乳がんへの影響が心配』という人もいます。そういう人には局所的に効く、エストロゲン含有の腟錠がおすすめです。また先ほど紹介した腟外陰のレーザー治療は、ホルモン剤を使わずに腟粘膜を活性化させることができるもの。痛みもなく短時間で済み、腟の緩みや乾燥、かゆみやにおいへの対処はもちろん、尿もれや頻尿などの排尿障害も改善できます。この排尿障害には、骨盤底筋トレーニングも有効です」
反対に避けたいのは、おりものパッドや尿もれパッドの使用。女性器はムレやすいため、デリケートゾーンをふさぐのは好ましくないのだそう。
「デリケートゾーンがムレると、雑菌が繁殖して、かゆみやかぶれの原因になることも。使う場合は短時間で交換するようにしてください。同じ理由で、下着の上にガードル、タイツと何枚も重ね着するのも避けましょう」
デリケートゾーンを洗う際は、泡立てた洗顔ソープや弱酸性の専用ソープを手に取り、なでるように。スポンジでゴシゴシこするのはNGです。
「自分の腟の状態を知り、ケアするのは、大人の女性としてのたしなみです。ぜひ自分の体に関心を持って、生き生きと更年期を乗り越えてください」
次ページで、いろいろある膣ケアの方法についてまとめました。
腟ケアの方法、
どんなものがある?
HRT
ホルモン補充療法。経口、肌に貼りつけるパッチ、皮膚に塗って使用するジェルなど、さまざまな種類がある。症状が腟の不快感のみで乳がんへのリスクが不安な人は、局所投与の腟錠やエストロゲンクリームがおすすめ
腟錠
性交痛や腟炎への予防・対策には、腟の中に直接入れて使う、腟錠(エストロゲン製剤など)が効果的です。局所投与なので乳がんなどへの影響がなく、安心して使えます。婦人科で相談を
エストロゲンクリーム(軟膏)
外陰部に塗ってエストロゲンを補充するクリーム。萎縮性腟炎からくる、かゆみなどの不快症状への対策に効果的です。局所投与なので乳がんなどへの影響がなく、安心して使えます。婦人科で相談を
潤滑ゼリー
60代前半の女性のおよそ9割が、セックスの際に痛みを感じているというデータも。性交時に市販の潤滑ゼリーを使用することで、潤い不足による性交痛や、摩擦によるかゆみを防ぐことができます
デリケートゾーン用クリーム、オイル
デリケートゾーンの乾燥対策には、専用のクリームやオイルなどでの保湿も有効。お風呂上がりに塗ることで、乾燥によるかゆみや痛みなどを防ぐことができます。刺激の少ないワセリンなどでの代用も可能
レーザー治療
超音波を用いて腟のたるみを強力に引き締め、尿もれや子宮下垂の予防・改善に効果のある「ヴィーナスハイフ」、腟壁にCO2フラクショナルレーザーを照射し、性交痛や乾燥、排尿障害といった症状を改善する「モナリザタッチ」などがあります
次回からは、OurAge世代の反響が大きかった「手の不調」について、ご紹介していきます。
イラスト/内藤しなこ 構成・原文/上田恵子