今回は女優の原日出子さんが登場。つらい不調を抱えつつ、顔で笑って心で泣いて。そんな時期を乗り越えたのは「知識」という特効薬でした。「今がいちばん健康!」という原さんに、私たちも元気をもらいましょう。
知らないことは怖いこと。
必要以上に暗くなっていた更年期不調の時期
原 日出子さん
Hideko Hara
1959年生まれ。女優。専門学校で演劇を学び、劇団四季の研究生に。’79年、映画『夕焼けのマイウェイ』でデビュー。’81年、NHKの連続テレビ小説「本日も晴天なり」のヒロイン役に抜擢。以来、テレビや映画、舞台女優として活躍。バラエティ、情報番組、CMなどにも多数出演中。最新作は2016年秋公開の映画『怒り』。出演者のそうそうたる顔ぶれに、早くも話題沸騰!
何か悪い病気?
不調の始まりは突然に…
「今、こんなに元気ですけど、更年期の症状があった時期は大変でした。ほんとボッロボロだったんですよ〜」
56歳とは思えないチャーミングな表情で笑う原さん。女優としてずっと仕事を続けてきた中で、それほど体調が悪い時期があったことはあまり知られていません。
「ひどい時期は、人に話せなかったですからね。言えないですよ、外に出るときは精一杯元気を出そうと頑張っていましたから。家ではその反動でぐったり。朝、子どもを送り出してソファにドンと座ったら、もう横にならずにいられないんです。2階の寝室へ行くのにも、息切れして上れない。冷えて歯がガタガタ鳴る、夜は眠れない…、最初は何かとんでもない悪い病気なのかもしれないと思ったほどです」
原さんが、そんなひどい不調を感じはじめたのは44歳の終わり頃のこと。不調はあまりにも急に始まったので、更年期とは思わず、内科に行きました。すると「鉄欠乏性貧血」だと。子宮筋腫があったので経血量も多く、そのせいでひどい貧血という診断。
「ドクターからは『一人チベット状態だ』と言われました(笑)。ヘモグロビンの値が低すぎて、酸欠状態。血液検査で調べられるものはすべて調べたので、ほかには何もないと。子宮頸がんや体がんも問題がなく、ほかに悪い病気は何もないとわかるまでにすでに1年ほどたっていましたね」
その後、婦人科へも行ってみたほうがいいと言われ、診てもらいます。女性ホルモンの数値的には、まだはっきり出てはいないけれど、年齢的に更年期の症状でしょうという診断。とりあえず更年期向けの基本的な漢方薬「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」を処方されました。
それでも、生理のたびに全身汗びっしょりになったり、トイレで倒れてしまったり。これは仕方がないんだろうと言い聞かせるしかなく、仕事があれば、前日から気分を一生懸命上げて行く。そしてまた落ち込む…。その繰り返しのまま3年が過ぎていくのです。
ひどい不調に光が見え始めたのは、あることがきっかけだったそうです。
光が見えはじめたのは
先輩に相談したときから
どうしてそんなに、不調を引きずってしまったのでしょうか? まわりのサポートは?
「その頃はうつ状態だったんだと思います。子どもは二人とも気遣うタイプなので癒し系でしたけど、主人は『不調は医者に行けば治る』と思っているタイプ。更年期の不調なんて、どう説明していいのかわからない。『どうしたの? 大丈夫?』って。大丈夫じゃないっ、聞かないで! とイライラする。何か手伝ったかと思えば全然要領を得なくて、こちらのイライラを増幅させるばっかり!(笑)
更年期について調べていくと、45〜55歳くらいの約10年間だと書いてあるじゃないですか。『え〜、これが10年も続くのか』と思ってさらに暗くなったりしてましたね」
そんなとき、仕事の先輩方に何気なく体調の話をすると、カミングアウトすべきだと皆さんにアドバイスを受けます。夫にも、もっとちゃんと説明したほうがいいと。
「それからです。主人にも『この状態をただ受け入れてほしい。私が横になっていたら具合が悪いということだから、静かにしていてくれるだけでいい』ということから説明して。主人も理解を示してくれて、徐々に家でも気持ちが楽になっていったと思います」
原さんの更年期
■44歳:不調を感じ、何か重大な病気ではないかと悩む。
■45歳:貧血、動悸・息切れ、冷え、不眠、冷や汗など、さまざまな症状。更年期の不調だとわかってはいるものの、何もできず、休みの日は家に引きこもり、うつ状態に。
■47歳:先輩などにカミングアウトし、気持ちが楽に。
■48歳:食生活によって体調がよくなることを実感。
■50歳:生理がまばらに。体調が徐々によくなる。
■53歳:閉経。健康でも、人生のMAXまで太ってしまう。
■54歳~56歳:健康に関する知識を深める。食事と運動による緩やかなダイエットで、健康に磨きをかける。
次回は、原さんが更年期を克服するために行なった対策をご紹介します。お楽しみに。
撮影/江原隆司
ヘア&メイク/長綱志津子
スタイリスト/石田純子(オフィス・ドゥーエ)
取材・原文/蓮見則子