人気イラストレーターとしての主な活躍の場が女性誌だった進藤やす子さんは、美容や健康分野の取材ものも多く、健康の知識はしっかり持っていそうなタイプ。それでも、40代半ばから女性ホルモン・甲状腺ホルモンの大波小波にあおられ、右往左往した一人です。どんな苦労があったのでしょう?
進藤やす子さん(49歳・イラストレーター)
■44歳:更年期の症状かと思ったらバセドウ病が発覚、治療開始
■46歳:子宮筋腫の症状がひどくなり、子宮全摘手術。それにより閉経
■46歳:コロナ禍でメンタル不安定ぎみ、ホットフラッシュに悩まされる
■48歳:准教授として大学で勤務することに。
新しい環境で多忙になり、更年期症状を忘れることが多くなる
■49歳(現在):ホットフラッシュは続くものの、更年期と上手におつき合い中
更年期かと思ったら、甲状腺の病気だった
「44歳の頃、やたら汗をかいたり息切れがしたり、ちょっと手が震えたりするようになって、早めの更年期がきたかな〜なんて思っていたんですよ。そうしたら甲状腺の病気、バセドウ病だったんです。
私は母も弟も甲状腺の病気だったので、母に言われて甲状腺の専門病院を受診したからわかったのですが、普通は更年期の症状と勘違いすると思いますね」
そう話す進藤やす子さん。
バセドウ病は女性に多く、甲状腺ホルモンの分泌が多くなって新陳代謝が活発になり、汗かきになったり動悸がしたり、食べても痩せていくような症状が起こる甲状腺の代表的な病気です。
もうひとつ40代以降の女性に多い甲状腺の病気は、逆に甲状腺ホルモン分泌が低下する甲状腺機能低下症や橋本病。こちらは倦怠感や冷え、肌の乾燥、太りやすいなどの症状が出ますが、やはり更年期の不調と間違えやすいといわれます。
「手が微妙に震えたりもして、細かいイラストが描きにくい感じはしたけれど、愛犬が病気だったり心配事も多く、何か心理的なものだと思っていたんです。
それが、実家でお茶を入れてもらって湯呑みを持ったときに、母が『手が震えているよ』と気づいてくれて。クリニックで検査したらやはりバセドウ病だった。すぐに治療を始めたのですが、治療といってもメルカゾールという薬を飲むだけ。バセドウ病は完全に治ったりはしないから寛解というレベルですけど、私の場合は薬さえ飲んでいればホルモンの数値が落ち着いて、症状もほとんど出なくなりますね。
その後は定期的に受診して安定していましたが、今度は子宮筋腫の症状が気になり始めたんです」
筋腫があることは30代のときからわかっていましたが、良性だし、経過観察でよいと言われていたため、たいしたことがないと思っていたのだそう。
それが徐々に経血量が増え、月経がくるたびに失敗をすることも多くなり…。“子宮筋腫あるある”な状況です。
「血の量がめちゃくちゃ多くなって、夜はよく布団を汚してしまったほど。不正出血も起きるようになり、真っ白なスカートをはいてタクシーに乗っているときに『あぁ!』みたいなこともあって。
昼でも夜用の生理用ナプキンをつけたり2枚をT字に貼ったり、漏れないようにあらゆることをしてみるんですけど、やっぱりだめ。生理の周期も乱れてきていたので、いつもドキドキでしたよ。
毎月毎月このままではいけない、ちゃんとしようとは思うんですが、無類の病院嫌いで…。健康診断にすら長いこと行っていなかったし、婦人科にもなかなか足が向かなかったわけです」
子宮筋腫の症状に悩み、子宮全摘手術へ。
そのうちにやってきたのがコロナ禍。進藤さんの目に止まったのが人間ドックの割引広告でした。寝ているだけで検査ができる、次世代のMRIを使ったもの。特に婦人科検診と乳がん検診は、マンモグラフィのように痛みがなく、子宮・卵巣の検査も内診がなく、どちらも寝ていれば検査が終わると知り、受けてみました。
その検診で、子宮筋腫の状態がかなり悪くなっていると判明。「今すぐ治療」の指示が出たのだそうです。その後、婦人科にかかり、最新の手術を取り入れている大学病院を紹介してもらいました。
「私の筋腫は症状が出やすい入り口のほうにできているので、筋腫だけを取ってもかなりの確率で再発するという診断で、すぐに手術とは言われませんでした。年齢が45から46歳になるときだったし、先生は閉経まで逃げ込みを考えていたのかもしれません。筋腫を小さくするような薬を処方していただきました。
それでもすぐに小さくはならないし、生理は全然終わりそうにない。これをずっと続けて50歳になるのかなと思ったらいたたまれなくなって、『先生、私は手術したいんです』と訴えた。そこからはスルスルと早く進みました。
年齢的にも、もう子宮を残しておかなくてもいいかなと思ったので子宮ごと全摘手術です。ロボット支援下の腹腔鏡下手術だったので、傷がものすごく小さいうえに回復もかなり早かったです」
まわりの友達もすでに子宮を全摘した人が何人かいて、不安はまったくなかったといいます。むしろいいことしか聞こえてこなかったのだそう。
だんだん周期が乱れていつ月経がくるのかわからないストレスもなく、閉経できる。
いつでも旅行に行けるし、温泉も何も気にせずに入れる。
旅の取材をライフワークとしている進藤さんにはそれも魅力。そうして子宮筋腫もクリアになり、「これからはバリバリ仕事して思いきり旅行も楽しめるー!」となるはずが…、世はコロナ禍。悶々とした精神状態とともに、新たな更年期の症状が待っていました。
更年期にライフスタイルががらりと変化した進藤さんの新たな症状は、インタビュー後編で。
●HAPPYに過ごす秘訣●
ホテル取材、旅の取材はライフワークと語る進藤さん。写真は十和田市現代美術館へ行ったときのもの。
進藤やす子
Yasuko Shindo
1974年生まれ。武蔵野美術大学卒業後、ライオン広告制作部デザイン室にパッケージデザイナーとして5年間勤務後、フリーランスのイラストレーターとして独立。女性誌や広告媒体で活躍するとともに、イラストコラムを連載して人気に。多数のブランドとコラボ商品を展開するほか、各地のホテル取材もライフワーク。『簡単におしゃれ度UP! 大人の着こなしルール』(宝島社)ほか、著書多数。2023年4月より東北芸術工科大学デザイン工学部グラフィックデザイン科准教授としてのキャリアもスタート。Web「よみタイ」にて「イラストレーター、准教授になる」連載中。
Instagram:@yasukoshindo
撮影/富田一也 取材・文/蓮見則子
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