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ホルモン補充療法(HRT)は、年齢に関係なく受けられるってホント?

かつてはややネガティブなイメージを抱く人が多かったホルモン補充療法。「閉経後5年までに始める」「5年間しか続けられない」「60歳を過ぎてからは始められない」など、さまざまな制限ルールもよく聞かれていました。でも、現在のガイドラインにそうした決まりはありません。最新知見にも詳しい吉形玲美先生とともに知識をアップデート!

 ホルモン補充療法で補うホルモン量は、低用量ピルのわずか10分の1

こんにちは。産婦人科専門医の吉形玲美です!

今回もホルモン補充療法(HRT)のお話です。

 

まず最初に、ピルとの違いをはっきりさせましょうか。

なぜかというと「低用量ピル」という名前に引きずられてか、ピルに含まれる女性ホルモン量が、ホルモン補充療法よりも少ないと思っている人が多いんです。

それ、まったく逆ですから〜!

低用量とはいえ、従来のピルに比べて低用量になっているだけであって、エストロゲンの補充量は更年期世代にとっては多いのです。

 

一方、低用量ピルのおよそ10分の1程度のエストロゲンを補うのがホルモン補充療法です。

月経困難症の治療や避妊のためにピルを使っている人は昔より多いのですが、月経がある世代にとってのピルは「女性ホルモンを抑えて安定させる」役目。

それに対して、更年期世代のホルモン補充療法は「減ってしまった女性ホルモンをわずかに補う」役目です。

 

それと、閉経が近づくと「いつピルをやめたらいいの」「ピルのままじゃいけないのですか」と言う人がいます。

そのとき前述のような誤解を解いておかないと、リスクを抱えることになります。

 

というのも、40代後半までピルを使っている人は、血栓症(血の塊が血管を塞ぐことで引き起こされる)のリスクが上がってしまいがちなのです。

閉経前後には女性ホルモンが激減しているので、ピルほどのエストロゲン量は必要ない。わずかにホルモンを補うホルモン補充療法に切り替えても十分コントロールできるのです。

ネットで購入してピルを飲んでいる人ならなおさらのこと。

40代後半になったら、必ず婦人科を受診して相談することが大事ですよ。

 

Point

・ピルの目的:女性ホルモンを抑えて安定させる

・ホルモン補充療法の目的:女性ホルモンをわずかに補う

 

 

 何歳で始めていいの? 何歳まで続けていいの?

ホルモン補充療法についてよく質問されるのは、「閉経して何年後なら始めてもいいのか」「何歳まで続けていいか」。ほとんどがそれです。

ホルモン補充療法の知識を後から得て、閉経してずいぶんたったり、60歳前後になってから「やってみたいな」と思うようになる人がけっこう増えてきました。

確かに昔は「閉経後〇年までに始めること」と言われていたこともありました。

 

では、「〇年まで」の根拠は何なのでしょう?

ホルモン補充療法を行っていいかどうかは、実は年齢ではなく、その人の体の状態次第。特に血管の老化度によるのです。

 

エストロゲン剤は血管が老化してから始めると、血管をより老化させてしまうことがあるのです。

そういう意味では、早く始めたほうが理想的。 どこかで「60歳を過ぎてのホルモン補充療法は自費診療になる」などと聞いたことがある人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。閉経年齢が遅い人もいますし、更年期の症状のような体の不調があるなら保険適用でしょう!

 

もし、60代で初めてホルモン補充療法を希望されたら、私はまずは閉経年齢を確認し、ガイドラインにはなくても動脈硬化のスクリーニング検査やDダイマー(血栓が形成されている可能性の有無の指標)を調べます。

そして血管系のリスクが少ない場合、少ない量のホルモン剤で始めてみることを検討します。

始めてからは、普通1年に1回の血液検査や検診も2回にします。

 

私の外来では、70代でもホルモン補充療法をやっている人がいますよ。50代のときに始めていた人ばかりではありますが。

70代の人だと、エストロゲン量はごくごくわずか。例えば貼り薬の「エストラーナテープ」でイメージすると、2日に1回貼るところを月に数枚とか、2週間に1枚とかですね。

 

Point

・年齢に規制はないが、閉経後なるべく早く始めるのが理想的

・人によっては60代で始めることもできるし、70代まで続けることもできる

 

 

ホルモン補充療法のやめどきは自然にやって来る!

次に覚えておきたいのは、ホルモン補充療法はいつまで続けるか、いつやめたらいいのか?

 

ずばり、つらい症状が緩和されたときが卒業のときです。

これもまた年齢ではないんですよね。

ホルモン値を検査して、やめどきを決めるわけでもありません。

確かに、血液検査でホルモン値は見ていますが、それはその人の治療の経過状況を見るため。

保険診療でのホルモン補充療法はあくまで症状改善のためのもので、エストロゲンの数値を上げるのが目的ではないのです。自由診療ではホルモンの数字で調節する場合もあるのかもしれませんが…。

 

 

例えば、貼り薬「エストラーナテープ」を2日に1枚貼っている人のエストロゲン値は、皆さん全然違う。

ホルモンの変動にもよりますし、血液濃度に反映されない可能性もあるので、あまり指標にはならない。

エストロゲン値が低いままなのに、症状はもうばっちり改善している人もたくさんいます。

しかも、閉経間際ではホルモンのアップダウンも激しいですからね。 エストロゲンの数値に一喜一憂しないでほしいなと思っています。

 

ただ、卵巣に「ホルモンを出して」と指令する卵胞刺激ホルモン(FSH)は、だいたい下がります。

それは改善の指標、ちゃんと薬が体に届いているという確認になります。

 

ホルモン補充療法は、あるときパタリと突然やめることはないですね。

薬の量を減らしていって、減量しても問題ないと確認しながら卒業するのが普通です。

もし、量を半分にしたところで「なんだかまた汗が出やすくなりました」となったら、ちょっと戻しておこうか、という感じで調整していきます。

 

え、もっとずっと続けたい?

でも、皆さん、必ずいらなくなってくるんです。

自分で「もういらないかも」とわかる。

「これからは薬をお守りみたいな感じで持っておきたい」と言われたりもします。それが自然なやめどきかもしれません。

 

Point

・ホルモン補充療法は、つらい症状の軽減・症状が改善されたとき、徐々に薬を減らして卒業するのが自然

 

 

【教えていただいた方】

吉形玲美
吉形玲美さん
産婦人科医、医学博士
公式サイトを見る
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浜松町ハマサイトクリニック特別顧問。大学病院で医療の最前線に立ち、女性医療・更年期医療のさまざまな臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、現クリニックへ。更年期、妊活、月経不順など女性の体のホルモンマネジメントが得意。著書に『40代から始めよう! 閉経マネジメント』(講談社)

 

イラスト/Shutterstock   取材・文・画像制作/蓮見則子

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