12年以上も不健康な期間を過ごしたいですか?
こんにちは。産婦人科専門医の吉形玲美です!
これを読んでくださっているのは、プレ更年期、更年期、ポスト更年期のいずれかの時期にいる方だと思います。
どの時期であってもぜひ考えてみてほしいのは、一生元気に過ごすために何をすればよいかということ。今ある不調をどうするかも大事ですが、将来のことを想像してほしいんです。
日本人の平均寿命が延びて、人生は100年と言われます。でも、平均寿命と健康寿命の差はほとんど縮まっていません。
そのことを真剣に考えたことがありますか?
健康寿命とは「健康に生きていられる期間」=日常的な医療や介護などがいらず、健康上の問題で活動が制限されずに生活できる期間のこと。
女性の平均寿命は87.45歳、健康寿命は75.38歳(2019年の調査)。つまり「死ぬまで12年以上も不健康な期間がある」ということです。これは怖いことだと思いませんか?
ずっと元気なまま生活を送るためには、平均寿命ではなく健康寿命を延ばす必要があるわけですが、漫然と生活していたのではそれはかなわない。少なくとも、40歳を過ぎたらしっかり健康管理と病気予防を考えていかなくてはならないんです。
更年期に女性ホルモンが減少すると、それに伴ってダメージがくることはいろいろあります。
そのうち、その後の人生にいちばん影響を与えるのは「骨と血管」の健康です。このふたつのケアをやっておくかおかないかで、健康寿命の差は確実に出てくると思います。
骨、そして血管、まずはこのふたつを健康に保つことを考えて
それまでのライフスタイルがとても健康的で、骨と血管に関する検査の異常も遺伝のリスクも見当たらず、ラッキーに生きてきた人は、それを高齢期まで保てるように努力しましょう。
だけどそうではない人のほうが多いはず。それならなるべく早く、ライフスタイルの改善をしませんか。遺伝疾患がわかっているなら、なおさら早めに予防ケアしなければなりません。
そのために必須なのは、「毎年の健康診断や人間ドック」です。
健康診断で骨密度もしっかりあったし、動脈硬化リスクも血管にプラークもないという人は、それを保つことを考えて。
今は健康だけど、骨のためにカルシウムとビタミンDのサプリをとっておこうとか、プラークをつくりたくないからEPAやDHAのサプリをとろう、とか。
エクオールサプリも骨量減少予防や動脈硬化予防作用はあるので、それもいいと思います。
「私は健康のために何をしているか?」
今一度、自分に問いかけてみてください。
サプリはいや、薬は飲みたくない。そう頑なに考えている人こそ、自分に問いかけてみてほしい。
薬には、卒業できる薬と卒業が難しい薬があります。
更年期の不調は期間限定のことが多いので、更年期障害の治療薬は卒業できます。
逆に、骨のサポートをするためのサプリや薬、血管のプラークが大きくなってしまった人の薬は、ほぼ一生だと思ったほうがいいと思います。
検査で骨や血管の問題が出てきたら、生活習慣の改善はもちろんですが、早めに対処すること。サプリも薬も飲まなかったらどうなるの? と、自分に問いかけて、その先の未来をちゃんと想像してほしいのです。
高齢で健康を害したら、損するお金はいくらでしょう?
費用の問題を考える人もいると思います。
サプリなどは保険が使えない。検査にサプリに、はたまたフェムケアアイテムを買ったり。
月に1万円じゃすまないということになります。それはちょっと痛い出費かもしれません。
でも、プレ更年期にいる人は、今のうちにライフスキルを軌道修正してケアしていけば、不調に悩まされたり症状がひどくなったりして病院に通うより、お金がかからないですむということ。
また、寝たきりになったら、当然お金がかかりますよね。
日本人の生涯医療費は約2,700万円。そのうち半分の約1,350万円が70代以上にかかるというデータもあります。
高齢になって不健康な人は、健康な人と比べて1,350万円も損するということなんです。
それを考えたら、今、健康のためにかける月々5000円とか1万円を惜しいと思ってはいけない気がしてきます。使うだけではなく、快適な生活も一緒に伴ってくるわけですから。
高齢になって莫大なお金を使いつつ不健康に暮らすことを想像したら、もはやチョイスは決まってくると思います。
日本人のヘルスリテラシーの低さは、しばしば問題にされます。
ヘルスリテラシーとは、健康や医療に関する正しい知識や情報を手に入れ、活用する能力のこと。
日本人の乳がん検診の実施率を見てもわかります。欧米諸国や韓国と比べても検診率がいちばん低いんです。
※乳がん検診受診率 国際比較(50~69歳女性)がん研究振興財団「がんの統計2022」より
私が以前にみた、日本と中国における大規模な健康意識の調査では、健康のために使っているお金は、中国は日本の10倍以上でした。
※電通 『大規模調査から考察!「日本と中国」ヘルスケア意識の違いとは?』より
日本人女性のヘルスリテラシーを高めて、健康寿命を延ばしたい。
私のように女性医療にかかわる産婦人科専門医が、今いちばん力を入れているのはそこなのです。
【教えていただいた方】
浜松町ハマサイトクリニック特別顧問。大学病院で医療の最前線に立ち、女性医療・更年期医療のさまざまな臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、現クリニックへ。更年期、妊活、月経不順など女性の体のホルモンマネジメントが得意。著書に『40代から始めよう! 閉経マネジメント』(講談社)
イラスト/Shutterstock 取材・文・画像制作/蓮見則子