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日本における更年期のHRT治療の現状は?/HRTの最新知見(前編)

知っているようで実は知らないHRT(ホルモン補充療法)。ここでは最新の知見についてご紹介します。

今回は、日本における現状と種類や使い方についてです。

 

 

寺内公一さん Masakazu Terauchi

1994年、東京医科歯科大学医学部卒業。2003年、医学博士。

’05 年、米国エモリー大学リサーチフェロー。

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科女性健康医学講座教授

 

松峯寿美さん Hisami Matsumine

1970年、東京女子医科大学卒業。

東京女子医科大学病院に〝不妊 外来〞を創設。

その後がん研究会病院勤務を経て、

’80年、東京・木場に東峯婦人クリニックを開設

 

 

日本におけるHRTの現状

女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲストーゲン※(黄体ホルモン)があります。HRTとは体内にエストロゲンを補充し、一定期間、プロゲストーゲンも一緒に補充する治療法です。理由はエストロゲンだけを補充すると子宮内膜が厚くなり、子宮体がんを発症するリスクが高まるからです。よって子宮がある女性は、必ずプロゲストーゲンを併用する必要があります(子宮がない人はエストロゲン単独投与が可能)。閉経後女性のHRT使用率はオーストラリアで50%以上、アメリカやフランスでも40%近いなど、欧米ではスタンダードな治療法となっていますが、日本での普及率は約2%に留まっているのが現状です。(寺内先生)

 

※黄体ホルモン様作用を持つホルモンの総称「プロゲストーゲン」=天然の黄体ホルモン「プロゲステロン」+化学合成された黄体ホルモン「プロゲスチン」です。現在日本でHRTに用いられるのはすべてプロゲスチンですが、海外ではプロゲステロンも使われています。

 

 

種類と使い方

HRTで使用するホルモン剤には、下表のようにさまざまな種類があります。そして大切なのがレセプター(受容体)の存在。ホルモンにはレセプターと呼ばれる受け皿がありますが、その機能は加齢とともに衰えていきます。50代の女性に20~30代並みのホルモンを入れたところで受け止めきれませんし、むしろそれが新たな疾患を招くことも。ホルモンの状況は血液検査でチェック。方法については医師と相談して足りない分を少しだけ足し、「不快な症状が軽減した」状態にもっていくのがHRTの正しい使い方です。(松峯先生)

 

HRTの種類

 

◆エストロゲン(卵胞ホルモン)◆

 

<使用法> 皮膚に塗る(ジェル状)

<薬剤名>「ル・エストロジェル」「ディビゲル」

 

<使用法> 皮膚に貼る(パッチ剤)

<薬剤名> 「エストラーナ」

 

上記共通

◎成分名と特徴

・天然型 エストラジオール

皮膚から直接血中に吸収されて胃腸や肝臓を通らないため、肝障害などの副作用のリスクがない。パッチ薬でかぶれる人は、ジェル剤 がおすすめ

 

 

<使用法> 飲み薬(錠剤)

<薬剤名> 「プレマリン」

◎成分名と特徴

・結合型エストロゲン

不妊治療でも使われている

 

<使用法> 飲み薬(錠剤)

<薬剤名> 「ジュリナ」

◎成分名と特徴

・天然型 エストラジオール

低用量の使用でも大丈夫

 

 

<使用法> 飲み薬(錠剤)

<薬剤名> 「エストリール」

◎成分名と特徴

・エストリオール

効果が穏やかで、子宮内膜への影響が少ない

※エストリール、ホーリンは腟座薬もあり

 

 

◆プロゲストーゲン(黄体ホルモン)◆

 

<使用法> 飲み薬(錠剤)

<薬剤名> 「プロペラ」「デュファストン」「プロゲストン」「ルトラール」「ノアルテン」

◎成分と特徴

・プロゲストーゲン(黄体ホルモン)

月に10~12日間続けて服用する

※エストロゲンとともに毎日服用する方法もある

 

 

◆配合型◆

 

<使用法> 皮膚に貼る(パッチ剤)

<薬剤名> 「メノエイドコンビパッチ」

 

<使用法> 飲み薬(錠剤)

<薬剤名> 「ウェールナラ」「ルナベル」

 

上記共通

◎成分と特徴

・天然型 エストラジオールとプロゲストーゲン

エストロゲンとプロゲストーゲンを併用する、持続併用投与法

 

 

 

次回は、HRTと乳がんとの関係、やめどきなどについて、「HRTと治療の最新知見」(後編)をご紹介します。

 

 

イラスト/坂田優子 取材・原文/上田恵子

 

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