実はあまりよく知らないという人も多いHRT(ホルモン補充療法)。今回は4つの最新の知見についてご紹介します!
寺内公一さん Masakazu Terauchi
1994年、東京医科歯科大学医学部卒業。2003年、医学博士。
’05 年、米国エモリー大学リサーチフェロー。
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科女性健康医学講座教授
乳がんとの関係
日本でHRTが普及しない原因のひとつに、2002年に発表されたアメリカのWHI(Women’s Health Initiative)の研究報告があります。そこで「5年間HRTを続けると乳がんの発生リスクが上昇する」と発表されたことで日本でも不安が広がり、HRTを選択する人が激減したのです。ところがその後、臨床試験の被験者たちがHRTを開始した平均年齢が63歳と高齢だったこと、喫煙者や肥満、高血圧の人が多かったことなどから、この試験自体が疑問視されるようになりました。現在では世界的に、HRTを行うことによる心疾患・骨粗しょう症などの予防というベネフィットのほうが高いとして、改めてHRTへの期待が高まっています。(寺内先生)
ナチュラルホルモンって?
「ナチュラルホルモン」は「バイオアイデンティカル(生体内同一)ホルモン」とも呼ばれる、体内で産生されるものと同じ化学構造を持つホルモンです。日本でも"副作用がないホルモン剤"と銘打ち、輸入・使用している医療機関があります。ただし明確なエビデンス(治療における医学的根拠)はなく、もちろん保険適用もありません。そして現在アメリカでは、このナチュラルホルモンが大きな問題になっています。アメリカでは調剤薬局が独自に調整したホルモン剤を販売でき、それがどこの国の何を原材料とし、どれだけの分量のエストロゲンを配合しているのか、FDA(日本の厚生労働省にあたる組織)が把握できないまま、市場に出回ってしまっているためです。HRTをするなら、きちんとした効果が認められている保険適用薬での治療をおすすめします。(寺内先生)
HRTのやめどきは?
これは患者さんによってまちまちです。「更年期症状がつらくて始めたが、中断しても問題なかったのでやめます」という人もいれば、「やめた途端に症状がぶり返したので再開します」という人もいます。また「特に症状はないけれど、母親が骨粗しょう症だったので予防のために」という人もいます。ホルモン剤を減らしながら漢方薬へ移行する人もいるなど、ケースバイケースですね。ただしホルモン剤は使い方を間違えると危険なこともあるので、自己判断は避け、医師の管理のもとで使うことが大切です。(寺内先生)
プラセンタのこと
「プラセンタ」と称している商品はたくさんありますが、効果や品質において大きな差があると感じています。各製品にどのような成分がどれくらい含まれているか明確にわからず、さらに何が有効成分であるのかも不明といえます。けれどもその一方で、ラエンネックやメルスモンなど、ごく一部の製品は、医薬品として認められ、更年期障害などの治療にも使われています。プラセンタを使用することで「調子がよくなった」「幸せだ」と感じる人もいるので、それを否定するものでもないと思います。(寺内先生)
撮影/伊島 薫 ヘア&メイク/Yoboon モデル/田村翔子 スタイリスト/安野ともこ(CORAZON) 取材・原文/上田恵子