パートナーとのセックスのとき、痛くて入らないといった悩みに、産婦人科医の丹羽咲江先生が答えます!
● お悩み
セックス時、痛くてなかなか入りません。以前はこんなことはなかったのに…。無理にすると出血することもあります。(49歳)
● 先生の回答
セックスでの痛みを性交痛といいます。フェムゾーンの乾燥や萎縮などが原因で多くの人が悩んでいる症状のひとつです。
セックスだけではなくこれからのQOLのためのケア
性交痛外来を持つ丹羽咲江先生のクリニックには全国から人に言えず悩みを抱える女性たちが訪れます。
「離婚し40代、50代で新しくパートナーができた人で、悩んでいる場合も多いですね。久々にセックスをしたら痛くて入らないというケースもよく聞きます。
更年期になると潤いが減り、フェムゾーンの萎縮、腟壁の乾燥が生じます。
さらに、しばらくセックスをしていないと腟や腟口の柔軟性が低下し、機能低下も起こりやすくなります。こういうきっかけで腟の衰えに気づくことも大切です」(丹羽咲江先生)
痛ければあきらめたらと思う人もいるかもしれませんが、愛を育みたいときにできないのはつらいもの。また腟の衰えはその後のQOLを左右します。でもケア次第で改善は可能です。
「まず潤滑剤で腟内の潤いを上げます。それでも痛みが出るときは、腟、外陰部レーザー治療やホルモン補充療法を併用します。それでも難しい場合はダイレーターを使い、段階を経て腟の柔軟性、可動域を上げていきます。解決法はあるのであきらめないでください」
「痛みを感じても、時間をかけてケアすれば痛みは解消されます。エクササイズと同じで、日々のケアが重要です」(丹羽咲江先生)
日本製で抵抗感がない「ダイレーター」も
正式には腟ダイレーターといい、狭窄部を拡張する、性交痛などの治療のための医療器具です。
今までは海外製ばかりで、大きさなどが日本人には合わないものが多かったのですが、最近は日本人仕様の製品も登場。
性交痛の場合、機能や心理的な要因で腟の可動域が狭くなっているので、ジェルなどを塗って、まず細いものから挿入し、段階を追って少しずつ大きなものを使用して、可動域を上げていきます。
日本性科学会が開発した腟ダイレーター。日本人向けのサイズと大きさで、太さは5段階。細いものから次第に太さを上げて使用します。医療機関でのみ販売。
腟ダイレーター4種セット ¥10,000〜(医療機関で価格が異なります)/咲江レディスクリニック
丹羽先生が開発に携わったダイレーター。明るい気持ちで使用してほしいと、ポップな色合いに。1本の両端で太さが異なるため、3本で6段階の太さになり、長さも日本人に合う大きさに。ポーチと下でご紹介するヴィスコジェルWR付き。
ダイレーター3本セット ¥9,680/咲江レディスクリニック
男性任せではなく、潤滑剤を上手に使って
更年期による女性ホルモン減少で性交痛が起きている場合は、腟内の乾燥により痛みが起こっている可能性大。
挿入には分泌液で適度に潤った状態を保つことが必要ですが、分泌液が低下していると無理やり挿入することになり、痛みが発生します。ケアするには人工の分泌液を使うといいでしょう。
腟内の乾燥をケアするpHバランスなどがいいもの、使いやすいものをセックス前に準備しておくと心理的負担も軽減されます。
丹羽先生が開発に携わったジェルは、サラッとしていながら潤滑力は高く、腟内に入っても自然に落ちて、洗浄もしやすい。ダイレーターとの併用はもちろん、セックス時の潤滑剤としての使用も可能。
ヴィスコジェルWR 80㎖ ¥858/咲江レディスクリニック
タンポンのように腟内に挿入し、ピストンを押し込むだけで使える手軽さが人気。肌に優しい天然成分配合でなめても大丈夫。
ウェットトラストゴールド 10本入り ¥2,242/ハナミスイ
お話を伺ったのは
丹羽咲江さん
Sakie Niwa
咲江レディスクリニック院長
産婦人科医。1991年名古屋市立大学医学部卒業。日本産婦人科学会専門医、日本性科学会幹事。性科学者。2002年開院。性交痛などの相談、治療、フェムゾーンケアの情報発信を積極的にしている
撮影/ケビン・チャン 構成・原文/安藤由美