顔よりも先に老化すると言われるフェムゾーンのトラブルは、積極的に解決していこうという時代に。「年だから仕方がない」「受診するのが恥ずかしい」と思っていた人も勇気を出して前進を!
顔より先に老化する! 「腟まわり」
GSMは、女性特有の老化現象として長い間スルーされてきたような症状をひとまとめにした概念。閉経前後から起こる腟の乾燥や萎縮、性交痛、尿もれなどの問題を指します。
GSMと総称されたことで、これまで線を引くのが難しいとされてきた尿もれ問題も、婦人科と泌尿器科で、科をまたいで一緒に治療していこうというムードに。
「腟まわりを含め、骨盤底がカチコチにこり固まっている女性が多いですね。下半身が冷え、足を組んで座るので骨盤が歪む、そ径部が詰まる。そのうえに腟まわりを触らないから筋肉のこりも一向にほぐれない。
加齢で衰えた状態をフレイルと呼びますが、最近のこの傾向は『骨盤底フレイル』と呼びたいほど。腟まわりは顔よりも老化が早いです。顔と同じように、毎日ケアしてみてください」(対馬ルリ子先生)
あなたのフェムゾーン、こうなっていない?
●若いときのふっくらしたフェムゾーン
●GSM症状のあるフェムゾーン
- ◆クリトリス(陰核)
クリトリス(陰核)に潤いがなく包皮ががめくりにくい - ◆大陰唇
大陰唇が痩せてたるむ、垂れ下がる。かゆみや痛みがある場合も - ◆小陰唇
小陰唇に潤いも弾力もなくなり、炎症を起こして赤くなることも - ◆尿道口
尿道口がはっきり見え、炎症を起こし赤くなることも - ◆腟前庭、腟
腟前庭や腟、腟内粘膜が乾燥。腟口が開き、腟壁が見える。腟口のまわりに炎症も
顔と同じお手入れで差がつく! フェムゾーン
GSMの予防と改善法
●毎日のセルフケア
お風呂ではフェムゾーン専用の洗浄剤を使い、その後、保湿剤を。リラックスできる体勢で植物性オイルを手に取り、外陰部全体に優しくなじませて。
大陰唇周辺は円を描くようにマッサージし、こりなど硬い部分をほぐします。小陰唇や腟の細かい部分は指でつまむように丁寧に。できれば、骨盤底筋トレーニングも毎日実施。
息を吐きながら腟を引き込むように締め、息を吸いながら腟を緩めるのを繰り返すだけでOK。
●クリニックでの治療
セルフケアだけではGSM症状が進行してしまう人は、クリニックでの治療も考慮を。婦人科での治療はホルモン補充療法(HRT)が基本。局所専用のホルモン補充クリームや、性交時用の潤滑ゼリーもあります。
外陰部・腟のレーザー照射治療も普及し、八田真理子先生のクリニックでは「モナリザタッチ(炭酸ガスレーザー治療)」、対馬ルリ子先生のクリニックでは「フェムタッチ(炭酸ガスフラクショナルレーザー治療)」を実施しています。
尿トラブルは婦人科? 泌尿器科?
「ウロギネ外来」にも注目
女性の尿トラブルは婦人科と泌尿器科の両方の要素を含むため、どちらの受診でも大丈夫です。最近よく見かけるようになったのは女性専用の「女性泌尿器外来」、そして「ウロギネ外来」も全国に登場。
ウロギネとは、ウロギネコロジー(Urogynecology)の略で、ウロ(Urology泌尿器科)とギネ(Gynecology婦人科)を合わせた造語。泌尿器科と婦人科の境界領域にある病気を治療する診療科です。
尿トラブルのほか、臓器脱、フェムゾーンの悩みなど、骨盤底全般が対象です。
その名もずばり「女性骨盤底センター」という名前の外来を持つ病院もあるのでぜひ検索を。
◆コラム
2人に1人が悩んでいる!「GSM」はどんな病気?
Genitourinary Syndrome of Menopause
閉経関連泌尿生殖器症候群
閉経前後の女性に起こる外陰部や腟の萎縮変化、それに伴う身体症状の総称です。2014年に、新たな概念として国際学会で提唱されたもの。以前は老人性腟炎、萎縮性腟炎などと呼ばれていました。症状は大きく分けると次の3つです。
- ●腟まわりトラブル(乾燥によるかゆみ、ヒリヒリした痛み)
- ●尿のトラブル(尿もれや頻尿、膀胱炎など)
- ●性交トラブル(性交痛や出血・痛みによる性的意欲の低下)
お話を伺ったのは
対馬ルリ子さん
Ruriko Tsushima
1958年生まれ。対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座・新宿理事長。産婦人科医、医学博士。女性の生涯にわたる健康推進活動に積極的。『「閉経」のホントがわかる本 更年期の体と心がラクになる!』(集英社)が大好評。
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八田真理子さん
Mariko Hatta
産婦人科医。1998年、千葉県松戸市で女性のためのクリニック「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開業。著書に『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』 (アスコム) など。
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イラスト/かくたりかこ 構成・原文/蓮見則子