閉経前に起こる不安定な月経。更年期のホルモンバランスの乱れによる困った事態に産婦人科医の八田真理子先生がお答えします。不安や不調を解消して、少しでも快適に過ごしましょう。
お話を伺ったのは
八田真理子さん
Mariko Hatta
産婦人科医。1990年、聖マリアンナ医科大学医学部卒業。順天堂大学、千葉大学、松戸市立病院を経て、98年、千葉県松戸市で女性のためのクリニック「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開業。幅広い世代の女性の診療を行い、クリニックはいつも女性でいっぱい。著書に『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)など。
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不安定な月経が新たな不調を生む前に…
「閉経年齢は平均すると50歳前後。その前後10年間が更年期に当たります。社会や家庭において忙しい時期であり、一人で何役もこなす責任世代ともいえます。こうした日々のストレスや疲れの積み重ねが、閉経前の月経異常をさらに悪化させることもあります。
女性は血を見るとテンションが下がりますよね。だらだら続いたりドバッと出血したりすると、気分的にうつっぽくなったり自律神経が乱れやすくなる人もいます。こんなとき、婦人科を受診していただければ、例えば、黄体ホルモン剤で月経のリズムをつけるといったサポートも可能です」
不調を我慢したり、明らかに今までと違う体調を「更年期だから当たり前」と思わないで。定期的な検診や診察を受けて不調を解決し、より快適に更年期を過ごせるようにしていきましょう。
八田真理子先生、教えて!
閉経前の困った事態はなぜ起こる?
Q 月経がたびたび起こるのはなぜ?
周期が短くなり(24日以下)、回数が多くなることを頻発月経といいます。エストロゲンと黄体ホルモン、ふたつの女性ホルモンの分泌パターンが乱れるためで、卵胞期か黄体期のどちらかが短いこと、もしくは排卵がないことが原因。閉経前にはよくある変化です。
Q 周期が長くなるのはなぜ?
周期が39日以上と長くなるのが稀発月経。急に長くなったり緩やかに長くなったり、また前の周期に戻ったりを繰り返す人も。これは閉経に向けて卵巣の機能が低下している状態です。ただし、何かの病気からくる不正出血の可能性もあるので慎重な判断が必要です。
Q 月経以外に突然の出血、なぜ?
更年期の不正出血の原因はホルモンバランスの乱れであることが多いのですが、子宮や卵巣の病気などの可能性も視野に入れる必要があります。特に、更年期に多い子宮体がんの初期症状は不正出血です。自己判断はせず、念のため婦人科を受診しましょう。
Q だらだら長引くのはなぜ?
周期が長い短いにかかわらず、8日以上だらだらと出血が長引くのは過長月経です。長いと1カ月以上続く人もいます。これはエストロゲンと黄体ホルモンが減ったことにより、子宮内膜はできるものの、厚くならないうちに剝がれてしまうのがおもな原因です。
Q 突然のドバドバ大出血、なぜ?
妊娠に備える役割の女性ホルモン、エストロゲンの分泌が減ると、子宮内膜があまり厚くならず、長く剝がれずにいた内膜がなだれのように一気にドバッと出血します。びっくりするほどの出血量ですが、内膜がそれほど厚くないので、塊などはないのが特徴。
Q 月経の異常があるとき、病院に行く目安は?
不正出血、大量出血、レバーのような血液の塊が出る、出血が長引くなど、心配なことがあったりつらいと思ったら迷わず受診しましょう。隠れた病気がないかも確認できます。本来はかかりつけ医を持っておくのが最良ですが、閉経前の変化を機にぜひ受診を!
カメラ&スタイリスト/中山ユカリ 構成・原文/蓮見則子