更年期以降は女性ホルモンがゼロに近づいていきます。健康を保ってくれていた守り神がいなくなり、病気のリスクも高まる年代。目に見えないリスク、気がつきにくい病気を知ることで正しく体に向き合いましょう!
お話を伺ったのは
八田真理子さん
Mariko Hatta
産婦人科医。1990年、聖マリアンナ医科大学医学部卒業。順天堂大学、千葉大学、松戸市立病院を経て、98年、千葉県松戸市で女性のためのクリニック「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開業。幅広い世代の女性の診療を行い、クリニックはいつも女性でいっぱい。著書に『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)など。
ホームページはコチラ
子宮体がんは50代がピーク!
近年、50代〜60代女性に急増しているのが子宮体がん。子宮内膜にできることから「子宮内膜がん」という別名も。頸部にできる子宮頸がんはウイルス感染が原因で若い人に多い一方、体がんはおもにエストロゲンが関与し、出産経験がない、肥満などもハイリスク。自覚症状はほぼ不正出血です。更年期になって不正出血があったら、婦人科で超音波検査をしてもらいましょう。
年齢別:子宮体がんと子宮頸がんの罹患率
目に見えないリスク、気がつきにくい病気
乳がん
10人に1人はかかるといわれる時代に。早期発見のために、1年に1度は乳がん検診を。
子宮体がん
更年期に特に多くなるがん。初期症状は不正出血なので、気になったら即、婦人科へ。
卵巣がん
初期症状がまったくないがん。子宮がん検診と一緒に、腟からの超音波で卵巣もチェック!
各種のがん
年齢とともに各種がんのリスクも上がります。職場や自治体のがん検診を賢く利用して。
尿トラブル
40代以上の女性がほぼ経験している尿もれ。重症化する前に骨盤底トレーニングを。
臓器脱
骨盤底が弱って起こる臓器脱も、知識があれば事前に予防できます。
骨粗しょう症
女性ホルモンの減少により起こることが多いもの。更年期になったら骨密度検査もぜひ。
高血圧
女性ホルモンの低下につれて高血圧になることは多いもの。低血圧だった人も要注意!
甲状腺の病気
閉経前後から増える甲状腺関連の病気。一部の婦人科では婦人科検診に検査が含まれます。
メニエール病
難病指定されていて、激しい回転性のめまいが特徴。更年期症状と似ているので要注意。
膠原病
ひとつの病気ではなく、いろいろな炎症が起こる自己免疫疾患。更年期に多発します。
目の病気
特に気をつけたいのは、失明の恐れもある緑内障。更年期以降は年に1度、眼科検診も。
変形性関節症
膝関節や股関節に起こる病気。放置していると進行するので、痛みを放っておかないこと。
歯周病
歯周病にも女性ホルモンが関係することがわかっています。更年期以降は気を配って!
動脈硬化
脂質異常症から動脈硬化に進行するリスクに注意して。生活習慣を改めるのが先決。
コレステロール値は高くなって当然!
降下剤によるデメリットにも注意
更年期になると、コレステロール値が高いと健康診断で突然指摘され、高脂血症治療薬の処方を受ける人も少なくありません。これに警鐘を鳴らすのは八田真理子先生。
「コレステロールは女性ホルモンの原料であり、ホルモンが減少すれば補おうとしてコレステロール値が上がるのは当然。数値のとらえ方は男性とは違いますし、善玉、悪玉の比率や中性脂肪、血圧も考慮に入れるもの。むしろ降下剤による副作用やデメリットがあることにも目を向け、正しい知識で数値と向き合いましょう」
カメラ&スタイリスト/中山ユカリ 構成・原文/蓮見則子