最近、夫の元気がなくなってきて、なんだか今までと様子が違う…こんな場合、実は男性も「更年期症状」の可能性があるのです。女性の更年期と比べ、まだまだ知られていない「男性更年期」、それはどんなもので、どのような対策があるのでしょうか?全6回の連載でご紹介。パートナーの更年期を女性の立場からサポートするヒントに!
【教えていただいたのは】
低侵襲治療センター長。ロボット支援手術プロクター認定医、日本メンズヘルス医学会理事、日本抗加齢医学会理事など。前立腺がん、腎臓がんのロボット手術などから、男性更年期などまで、泌尿器科で扱う幅広い診療内容に長けたエキスパート。 市ヶ谷ひもろぎクリニックでは男性更年期外来を担当
男性にも更年期があるけれど、女性の更年期とは少し違う
「女性は、加齢とともに女性ホルモンのエストロゲンが減ってくると更年期を迎えますが、男性も加齢に伴って男性ホルモンのテストステロンが減っていき、さまざまな不調が生じます。これが男性更年期です。
ただし、男性の更年期は女性の場合と少し違います。女性の場合は、閉経という大きなイベントがあり、それを挟む“前後10年間”を更年期と呼びます。日本人女性の閉経年齢の平均は50.54歳なので、多くの女性は45〜55歳頃に更年期を迎えます。また、女性は更年期にエストロゲンの分泌量が急激に減り、閉経後にはほぼゼロに近くなるのも特徴です。
これに対して男性の場合は、テストステロンの分泌量は20代をピークに減っていきますが、女性の更年期のように急激に分泌量が減ることはなく、また閉経という大きな変化もないので分泌量がゼロに近くなるわけでもなく、40歳以降に緩やかに減っていきます。
ですから男性の更年期は40歳以降になればいつでも起こり得ます。またテストステロンの減り方に個人差もあるので、40代で更年期症状が出る人もいれば、80代になってから症状が出る人もいたりと、個人差が大きいのも特徴です。
男性も更年期にはさまざまな不調が現れますが、女性の更年期とは少し違うので、正式にはLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)と言います」(井手先生)
↑女性は、40代後半にエストロゲンが急激に減って更年期を迎え、閉経を迎えると分泌量はゼロに近くなります。一方、男性は40代になるとテストステロンがだらだらと緩やかに減少。ただ実際に体内で活躍する活性型男性ホルモンは急に減り、40代以降はいつでも更年期症状が起こり得ます。
パートナーに、イライラ、うつっぽさ、性欲減退などの症状が出たら要注意
では、男性が更年期になると、どんな変化が生じるのでしょうか?
「イライラしやすくなったり、落ち込みやすくなったり、無気力になったり、うつっぽくなったりといった症状のほか、女性のようにのぼせや多汗などの症状が起きることもあります。また、性機能の低下も顕著に見られる症状です。例えば、今までは週末になるとゴルフに出掛けていたのに、行かなくなって家にいることが増えたりした場合は、男性更年期の可能性があります」
娘が父親を毛嫌いするようになるのも、実は男性更年期にも原因!?
そして、こんな夫の変化を感じるのは、妻だけでなく子どもも…。
「娘さんのいる家庭の場合、父親が年をとるにつれて、父親を毛嫌いするようになることが少なくありませんが、実はその原因にも男性更年期は関係しています。
50〜69歳の父親を持つ20〜39歳の女性200名に、父親の魅力が減った理由を調査したデータによると、1位が『イライラすることが多くなった、短気になった』。2位が『薄毛が気になるようになった』。3位は『神経質になった』…以下、『口臭・体臭が気になるようになった』『太った』『覇気がなくなった』『実年齢以上に老けた』と、さまざま。
これらは加齢の結果にも見えますが、実は、テストステロンが減って男性更年期になると起こる症状と一致しています。娘さんが父親を毛嫌いするようになっていくのは、男性更年期も大きく影響しているのです」
「男性更年期の症状はさまざまなので、“年のせいかな”と思って放置してしまいがちですが、放っておくと症状が悪化する場合もあります。男性更年期は病院で治療も可能なので、正しい知識をもって対処することが大切です」
次回は、男性ホルモン「テストステロン」についてさらに詳しく解説します。
イラスト/カツヤマケイコ 取材・文/和田美穂