更年期から閉経後、女性の体や健康は、より注意が必要に!? 女性ホルモン「エストロゲン」がほぼゼロになったあと、自覚症状のない隠れた病気リスクがあるのです。更年期の今からぜひ知って、ヘルスリテラシーを高めておきましょう。60代になった増田美加さんが、ご自身の経験も踏まえてナビゲートする連載、スタートです!
私がナビゲートします!
増田美加さん
Mika Masuda
女性医療ジャーナリスト。1962年生まれ。35年にわたり女性の医療、ヘルスケアを専門に取材。自身が乳がんに罹患してからは、がん啓発活動を積極的に行っている
60代になった増田さんだからわかる!更年期世代から気をつけたいこと
誰にでも必ずやってくる閉経。日本女性の初潮の平均年齢が12.5歳、閉経は50.5歳が平均だから、38年間もつき合ってきた月経と女性ホルモンの揺らぎから、やっと解放される時期です。
私も子宮筋腫、不妊、乳がん、更年期障害…といろいろな不調や病気を経験しました。私の閉経は、日本女性のちょうど平均の50.5歳。その5年後の55歳頃からは、これが女性ホルモンの揺らぎのないバラ色の人生なのか!と思うほど、60代になった今も体調が安定して快適な日々を経験しています。
「閉経したらどうなっちゃうの?」と不安に思っている人もいるかもしれません。でも、ちょっとしたコツを知っていれば、大丈夫です。
私たち女性は、閉経後の人生を35年以上生きるのです。寝たきりやフレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)を予防し、人生100年時代を健やかに生きるために「閉経後の患者学」を伝授させていただきます。
エストロゲンがほぼゼロになると体はどう変わるのか?
まず、エストロゲンがほぼゼロになると、今までの健康状態が変わることをしっかり自覚する必要があります。これが、更年期の今から、気をつけるべき重要なポイントです。では、具体的に何がどう変わるのか…。
エストロゲンの分泌の減少に反比例して、悪玉コレステロール値が上がります。肝機能の数値も異常値を示しやすくなります。肝機能の代表的な数値は「AST(GOT)」「ALT(GPT)」「γ-GTP」など。肥満のリスクも上がり(太りやすくなる)、血圧も上がってきます。血糖値や中性脂肪値も高くなります。
エストロゲンが分泌されていたときには、これらの数値が上がらないように守ってくれていたのです。しかし、エストロゲンがほぼゼロになったら、そうはいきません。更年期前と同じ生活をしていたら、多少の個人差はありますが、これらはほぼ異常値を示すようになるのです。
健康診断の結果を見直してみてください。まだ、異常値は示していなくても、年々少しずつ、数値が上昇してきていませんか?
【エストロゲン減少によるチェックポイント】
・血圧
・血糖(血糖値グルコースだけでなく、HbA1cもチェック)
・LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
・中性脂肪
・肥満(BMI が 25.0以上)
・肝機能(AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP)
閉経後、多くの女性に現れるのが、血圧、血糖、コレステロール値の急激な上昇です。エストロゲンだけでなく基礎代謝が低下することによる肥満、中性脂肪の増加が、高血圧や動脈硬化へとつながる危険性も高まります。
骨と筋肉にも注目して
生活習慣病以外に忘れてはならない重要なチェックポイントは、「骨と筋肉」です。
骨密度は、20代をピークに年1%ずつ徐々に低下していきます。そして閉経後、エストロゲンの分泌量が減るのと同時に、骨密度の減り方も加速します。なんの対策のとらなければ、年2~3%ずつ減っていきます。特に閉経後10年の間に、骨密度は急激に減少しますので、年1回は骨密度を測定していくことが大切。骨密度が70%以下になると骨粗しょう症と診断されます。
筋肉量も同様です。何もしなければ、20歳頃から年1%くらいずつ筋肉量は減っていき、70代では20代の4割程度に減少するというのが、一般的な推移と言われています。
生活習慣病の予防と骨と筋肉の対策の基本は、食事と運動です。「それはわかっているけど、うまくできない!」という人に、どうしたらいいか、この連載の中でお伝えしたいと思います。
ちなみに、50歳で閉経した現在60代の私は、食事はガッツリ食べ、アルコールも結構飲んでいますが、血圧、中性脂肪、コレステロール、血糖、肝機能もすべて正常値で、肥満もありません。乳がんや更年期障害などさまざまな病気や不調を経験した私でもできたことです。きっと、皆さんもできます!
定期的な健康診断でチェックしつつ、食事と運動でコントロールしていくことが、閉経後、快適な人生を送るためには重要なのです。一緒に頑張っていきましょう。
イラスト/かくたりかこ 構成・文/増田美加