Eさん(会社員・56歳)の場合
■47歳 献血前の血液検査で貧血を指摘され、病院を受診。子宮筋腫が判明
■47歳 子宮筋腫を小さくする治療(リュープリン)を6カ月行う
■47歳 月経過多のための治療(子宮内膜アブレーション)を行う
■51歳 筋腫が大きくなっていることが判明。筋腫を小さくする治療(レルミナ)を4カ月行う
■52歳 定期検診でまた筋腫が大きくなっていることが判明。再度レルミナを6カ月服用。
■53歳 閉経
大きな筋腫が判明、薬でコントロールしながら趣味も仕事も生活も大車輪
47歳で子宮筋腫がわかった当時、Eさんは正社員として週5日勤務とは別に、月10~15日アルバイトをするWワークの多忙な毎日でした。
「高校生のときから献血を続けているのですが、筋腫がわかったのは献血がきっかけでした。事前の血液検査で貧血のレベルがかなりひどいということで、その日は献血はNGに。
婦人科を受診すると、13cmの子宮筋腫があることがわかりました」
このときのHb(血中のヘモグロビン値)は8.2g/dl。基準値を大幅に下回る重度の貧血でした。
「当時は息切れがして疲れやすく、二枚爪などもあったのですが、『年齢のせいかな』くらいに考えていたんです。下腹もぽっこり出ていましたが、もともと下半身ががっしりめなので、筋腫のせいとはまさか思っていませんでした」
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病院では開腹手術による子宮全摘をすすめられましたが、Eさんはそれは避けたいと思っていたそう。
「友人に開腹手術で全摘した人がいて、術後3カ月くらいは体がしんどかったと言っていたのです。
当時は長男が大学受験の年だったので、サポートが十分にできないのは困る、と思いました。
また、私はバイクのツーリングが趣味で、福山雅治さんの推し活も生活の一部。
体の自由が利かないことでそれらが制限されてしまうのはなぁ…という思いもありました。
また、当時は、子宮全摘すると女性ホルモンが出なくなると、間違って思い込んでいたせいもあります。
『子宮はエネルギーがたまる場所』と話す動画を見て、できることなら残したいと」
手術は選択せず、筋腫を小さくするリュープリンの治療を始めたEさん。副作用は大きかったそうで…。

「ホットフラッシュと倦怠感がつらかったですね。そのほかにも頭痛や嘔吐してしまうときもありました。
治療中も1泊2日でツーリングに行って、日を置かず福山さんのライブに遠方まで行ったりしていて、ツーリングやライブのときはワーッとハイテンションで過ごしているのですが、帰宅して気が抜けると不調がドッと襲ってきて…という落差の大きな生活をしていました。
趣味も目いっぱいやりつつ、Wワークも続けていたので、疲れもあったのかも…と今では思います」
月経過多を解消するために受けた子宮内膜アブレーション
そんなアクティブで忙しいEさん、当時の一番の困り事は月経過多でした。
「生理の2日目はもうひどい。
タンポン+夜用ナプキンをつけていても2時間ともたないんです。
デスクワークをしていてタイミングよくトイレに行けないと漏れてしまうし、車を運転中にドッときてしまうと、もうアウト。2日間通しのツーリングも無理。
この不便さをどうにかしたくてさまざまな情報を集める中で、月経過多の解消に効果が高い『子宮内膜アブレーション(MEA)』という治療法を見つけました。
1泊2日の入院治療ですみ、子宮の摘出もせず、副作用もないということで、私に最適な治療法だと思いました」
MEAはマイクロ波で子宮内膜を焼灼し、経血量を減少させる治療。
EさんはMEAを受けられる病院を探し、6カ月のリュープリン治療の後、治療を受けました。
「手術の翌日には自分の足でスタスタと歩いて帰ることもでき、副作用や痛みもまったくありませんでした。
月経もこなくなり、『わずらわしさから解放された!』とホッとしました。
筋腫を小さくする治療ではないため、警戒はしていましたが、4カ月後の検診ではサイズはほぼ変わっていませんでした。
でも、さらに半年後の検査で月経滞留があると指摘され、ドレーンで経血を抜く処置を受けました。
その翌月には家事の最中に突然ドッと出血。MEAのあとに少し癒着があったようで…。それによる出血が少しずつたまって、一気に出てきたということらしいです。
その後は月経が戻ってきましたが、月経過多はなくなり、本当に楽になりました」
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再度筋腫が大きくなるも閉経を迎えて治療は終了
それからも半年ごとに筋腫の検査は受けていたEさん。
MEAを受けてから3~4年たったころ、急に筋腫が成長しているのを感じて受診したところ、また大きくなっていることがわかったそう。
「『新生児の頭くらいある』と。確かに、胃に圧迫感があって食欲が落ちてはいたのです。
ホルモン値を調べると、閉経まではまだ少しかかりそうとのことで、医師からは手術をすすめられました。
その頃には私も知識が増え、子宮への執着もなかったのですが、手術だと1週間入院、その後2~3カ月は安静にしないといけないとのこと。
季節は秋で、涼しくなってきてツーリングに最適の時期にそれは困る。それに冬に温泉に行ったときに傷あとが目立つのはちょっと…という思いもあり、手術は避けて、再度筋腫を小さくする治療を選びました。
そのときはレルミナで、まず4カ月間服用したところ小さくなったので投薬は終了。
ところが、翌年の検診でまた大きくなっているということで、3カ月のレルミナ服用を2ターン行って、筋腫は6cmにまで小さくなりました。
ちょうどその頃に閉経を迎え、治療は終了となりました」
閉経まで手術なしで”逃げ切った”Eさん。
ライフスタイルに合わせて、その時々でベストな選択をしてきたため後悔はありませんが、思うこともある、と言います。
「治療は長くかかったし、リュープリン、MEA、レルミナと、治療費もそれぞれ数万円と大きな痛手でした。
結果論になりますが、最初にわかった時点で手術を決断しておけば、もっと早い段階で身軽になれて、余計な出費もなかったかな…とは思います」
イラスト/本田佳世 取材・文/遊佐信子


