2020年3月、トム・ハンクスはオーストラリアで最新作“Elvis “ の撮影中に、新型コロナウイルスに感染したとTwitterで公にしました。
“人間国宝”とも”ハリウッドで敵がいないたった一人の男”とも呼ばれている彼と、妻のリタ・ウィルソンが新型コロナウイルスに感染したというニュースが飛び込んだのは、カリフォルニア州のロックダウン(アメリカでも最も早く施行された)がスタートする直前で した。
多くの米国人は、新型コロナウイルスの何がそんなに怖いのかわからず、かえってすべてが怖くなるモヤモヤ状態の中にいました。そんな時の”ハンクス夫妻感染”のニュースは、”迫り来る危機”を一気に目の前の現実にしました。
その後、ハンクス夫妻は順調に回復して帰国。後日、自主隔離しているトム&リタに、オーストラリアの8歳の男の子から「ニュースでハンクスさん夫妻が新型コロナに感染したと聞きました。大丈夫ですか?僕の名前はコロナです。最近友だちがコロナウイルスと僕を呼ぶようになってちょっと悲しいです」というメッセージが届きました。
優しいトムおじさんは「コロナ君、お手紙ありがとう。君からの優しい言葉はリタと僕をとてもハッピーにしてくれたよ。太陽を囲む輪、王冠の”コロナ”と言う名前の友だちは君が初めてだ。このコロナというタイプライターは君にぴったりだと思う。使い方は誰かに聞いてね…..」とお返事し、自らも愛用するスミス・コロナ社のタイプライターをプレゼントしたのです。彼らしいエピソードですよね。
トム&リタの新型コロナ感染ニュースに関しては、彼の2人の息子、長男のコリン・ハンクスと次男のチェット・ハンクスがそれぞれのインスタグラムで「ご心配かけました」のメッセージをアップロードしました。
コリンは「ご心配ありがとうございます。両親は危険な状態ではなく、迅速な回復が見込まれてますのでご安心下さい」と礼儀正しいメッセージを。 役者でありラッパーでもある次男のチェスター・ハンクスは「両親がコロナウイルスにやられちゃったよ。でも大丈夫。tripping/パニクっては居ないから」とスラング満載のヒップホップ調の対照的なメッセージ動画を流しました。
そのメッセージを読んでるチェスターは、凝った入れ墨が施された上半身裸の姿でした。彼の動画メッセージが型破りだったことからメディアで何回も繰り返されました。
そんなチェット(チェスター)には優等生が嫌いなタイプのフォロワーが結構大勢いるのです。 私も、個人的には繊細な顔と破天荒な行動がちぐはぐで、とても面白いキャラクターだと大注目。
トム・ハンクスはかつて「自分の高校時代は、嫌味なほど問題を起こさない優等生だった」と述懐し、「子供たちは自分の好きな道を選んで進むべきだと思ってる」と語りました。10代で薬物やアルコールに依存するなど、いろいろな問題に遭遇したチェスターですが、どんな時も両親は僕を暖かく見守ってくれたと感謝してます。
今年のゴールデン・グローブ賞でトム・ハンクスは、ハリウッドに貢献した俳優や監督を称える最高の賞でもあるセシルB.デミール賞を受賞しました。ステージの真ん前にあるセンターテーブルに全員集合したハンクス・ファミリー。トムの受賞の挨拶を聞きながら涙ぐんでいるのが、会場の両サイドにある巨大モニターに映し出されていました。
「長い道のりを、どんな時も支えてくれたのは家族です。愛とは何かを教えてくれた妻のリタ、僕なんかよりずっとずっと多くの勇気を持ってそれぞれの人生の選択をして進んで行く子供たち、本当にありがとう」とスピーチする トム自身、感極まって涙声になってました。もちろん会場もウルウル。
トム・ハンクスを悪く言う人はいません。誰もがナイス・ガイと言います。アカデミー賞主演男優賞を2年連続で受賞した(『フィラデルフィア』と『フォレスト・ガンプ』)名優、ハリウッド星座の中でも特に輝く星であり、素晴らしい映画やテレビシリーズをたくさん世に送り出した、名プロデューサーでもある彼ですが、いつも屈託がなく近づきやすい雰囲気を崩しません。
あのにこやかな顔と正直なコメント。「普通じゃない環境の中でできるだけ普通であるように努力してる」と言います。正直さについて聞かれると「嘘は言わない、いずれバレるから。実は、真実の半分だけ君たちに言ってすべて正直に話してると思わせるのが上手いんだよ」とウィットに富んだ答え。
彼のTwitter をフォローしてます。先日、彼が新型コロナウイルス感染の最前線で命がけで働いている人のサポートをしよう、と持ちかけると「金持ちなんだから自分で助けりゃいいだろう」とか「あんたの言うこと何で聞かなきゃなんないの」みたいな書き込みが続々あってびっくりしました。有名人って大変です。
2019年にアメリカで公開された映画”A Beautiful Day in the Neighbor hood”のインタビューで会ったとき、「理不尽な批判や悪意ある書き込みなどに出くわした時は?」と質問されて「僕は63歳。今の僕をヘコませることなんて何もないよ。もう驚くことはないんだよ」と言ってたのを思いだしました。