『MINAMATA―ミナマタ―』に続く新作が途絶えていたジョニー・デップですが、次回作はフランス映画、ルイ15世の話(タイトル未定)と発表されました。女優で監督のマイウェン(映画『フィフス・エレメント』『パリ警視庁;未成年保護部隊』などに出演)が監督し、ルイ15世に死ぬまで寵愛された最後の愛人マダム・デュバリーも彼女が演じることになってます。
(C)HFPA
ルイ15世はマリー・アントワネットと結婚したルイ16世の祖父に当たるキングで、フランス史上二番目に長く君臨したのですが、浪費からフランス経済を破壊し、国民を貧困のどん底に陥れた、“最も嫌われたキング”としても知られてます。贅沢三昧で経済を破壊、国民無視の自己快楽追求、政治的腐敗…その結果がフランス革命、という、良いとこなしの王様でした。
愛人の数がすごいのでも有名です。彼のお気に入りがポンパドールというヘアスタイルを後世に残したマダム・ポンパドール。その後がマダム・デュバリーという、娼婦上がりのソーシャルクライマー(手段を選ばず上流階級に入り込もうとする人)でした。
ジョニーがどんな風にこのルイ15世をクリエートするか、とっても楽しみですね。この夏にはベルサイユ宮殿周辺で撮影が始まるそうです。フランス語で演じるのでしょうか?またもやハリウッドを離れての作品です。
ハリウッドとジョニーは現在、疎遠。アンバー・ハードとの離婚、DV(家庭内暴力)訴訟、英国タブロイド誌「ザ・サン」への名誉毀損訴訟の敗訴。二人の結婚より長く続いている離婚後のゴタゴタですが、アンバーが虚偽の証言をしたというジョニー側の訴訟に対し、却下を求めたアンバー側からの申し立ては認められませんでした。これはジョニー側の一歩前進です。それでもジョニーは『ファンタスティック・ビースト3』、『パイレーツ・オブ・カリビアン6』から降ろされ、キャリアに大きな傷跡を残しました。
私達が知ってるジョニーの話に戻ります。
ジョニーの原点は1987―1991の彼をアイドルにしたテレビシリーズ“21 Jump Street”にあります。5シーズンも続き、ティーン誌の表紙を飾るトップアイドルになりましたが、それはジョニーが求めていたこととはかけ離れていました。
面白いことに、シーズン2のエピソードにブラッド・ピットがちょい役で登場してます。印象の薄い金髪高校生という感じで、ハンサムだけが取り柄の“駆け出しアクター”そのものでした。この二人が、いずれハリウッドを背負って立つ大スターになると誰が思ったでしょうか?チャンスを見つけるのも、そのチャンスをものにするのも才能で、それに努力をプラスすると賞味期限が永遠になることも可能なのだとつくづく思いました。
(C)HFPA
このテレビシリーズのお陰でジョニーはハリウッドでの“これからの自分”を、はっきり見つめたのです。「毎日同じことを繰り返し、ハリウッドファクトリーという感じで、ベルトコンベアに乗せられて出来上がっていく大量生産の一部になった気分だった。クリエイティビティは微塵も無く、毎日が憂鬱だった」と教えてくれたことがあります。ですから、切符の売上高が一番重要視されるハリウッド大作には長い間顔を出さず、ギャラは低くても役作りに自由があるインディペンデント系を選んで、自分を大切にしながらキャリアを築いたのです。
いつも「僕は収入面では決してハリウッドスターではないよ。銀行の残高なんてしょぼいもの」と笑ってました。ハリウッドに媚びずに世界中にファンを作り、独特のハリウッドスターになったのは見事です。
40歳になって、初めて正真正銘のハリウッド大作『パイレーツ・オブ・カリビアン』を選びました。それも彼にしかできないキャップテン・ジャック・スパローを作り上げたのです。制作側は、彼のはちゃめちゃなキャプテンにびっくりして文句をつけました。自分なりの役作りができないなら降りる、というジョニーの答えにディズニー側が折れた、と本人から聞きました。世界中のファンは海賊物語が好きで見るのではなく、ジョニーのキャプテン・ジャック・スパローを見たいのだと思います。
シリーズ5までの総計興行収入は4.5兆円です!ジョニーが抜けた“カリビアン”は当然ながら同じ映画になるはずがありません。スピンオフの女海賊シリーズは、マーゴット・ロビー主演で進んでるようですが、『パイレーツ・オブ・カリビアン6』に関しては進行中というだけで何の情報もありません。ジョニーなしでこのシリーズの続行は無理ではないでしょうか?彼へのDV疑惑が晴れる事を祈るばかりです。
(C)HFPA