50代に突入したら、朝起きたときに心にハリがないというか気力がわかないことが増えました。
そういうときに朝ごはんが地味な色の食べ物ばかりだとさらに気持ちがシャキッとしません。
「さぁ、朝ごはんだ、今日も一日がんばるぞ」という気にならないのです。
そこでよくつくるのが「トマトのもしゃもしゃサラダ」です。
真っ赤なトマトに緑の大葉。
派手な一皿です。
ただ野菜を切ってお皿に盛るだけですが、こういう存在感のある食べものが厚揚げの煮びたしとかひじき煮とかナスの糠漬けなんかの横にあると「よし、一日の始まりだ」と元気になってきます。
私が単純なのかもしれませんが、色のもつ力を感じる瞬間です。
これに酢、ゴマ油、醤油を1:1:1(つまり全部同じ量)合わせただけの超簡単ドレッシングをかけていただきます。
とてもさっぱりとしていて大葉ともよく合い、これをかけるとどんな大きなトマトでもあっという間に丸々一個食べちゃえます。
実はこの「もしゃもしゃサラダ」は作家向田邦子さんの料理本で紹介されていたのを自分好みに少々アレンジしたものです。
(向田さんは酢とゴマ油の割合がもっと多い)
向田邦子さんはご存じの方も多いと思いますが女性の社会進出がまだ進んでいなかった時代にまず編集者としてバリバリ働き、そのあと売れっ子脚本家になり、そのあと人気作家になりました。
よく働き、よく食べ、よく遊ぶ……充実した人生を送った女性の代表のような人で、そのライフスタイルは憧れです。
そう思うようになったきっかけのひとつが25年くらい前に買ったこの本。
料理上手だった向田さんが執筆の合間につくり食べていた料理のレシピ、愛用の食器、お取り寄せしていたもの、食に関するエッセイなどが収録されています。
おいしくて簡単で何度食べても飽きない家庭の味がたくさん載っていて、サツマイモのレモン煮、わかめの炒めもの、いわしの梅煮、いちじくのブランデー煮などこの本を見ながらいろいろつくってきました。
中でも一番つくったひとつがこの「もしゃもしゃサラダ」です。
いまいちシャキッとしない朝にこのサラダを食べていると「向田さんもこれを食べて頑張ってたんだなぁ」とふと身近に感じてしまいます。
遊びに来た知人にこのサラダを出したら教えてほしいというのでドレッシングの作り方を教えたら、「あのドレッシング、冷奴にかけてみてもおいしかったよ!」とメールがきました。
元気をくれる赤と緑の「もしゃもしゃサラダ」は簡単でおいしいのでぜひみなさんも試してみてください。