実は、私は「地図が読め」て「会議で話が長い」女です。いつも話したいことが山盛りあって、手短かにまとめられない自覚はあります…トホホ。
あ、いえ、別に今日は男女平等の話をしたいのではまったくありません。
「地図が読める」ことで高々だった鼻が、スマホのせいでへし折られ、何の役にも立たなくなり、さらには困りごとまで引き起こしてしまう、今の私の哀しみを告白させてください。
地図との出会いは18歳、東京地図から
父親の転勤で中高時代を地方で過ごし、大学入学で再上京したとき、父親が東京の地図を買って渡してくれました。その地図を飽きることなく眺め、いつかここに行ってみよう、などと年中思い巡らしていたことを今も覚えています。
地図が得意だと自覚したのは30代の頃。テレビで見た、さまざまな能力テストをする参加型の特番がきっかけです。番組中に始まった方向感覚テストに、何の気なしにトライしてみたら、「え? こんな簡単なのが問題になるの?」といぶかしむほど難なく正解(当時ドヤ顔)。
数問あったのですが、たしかこんな感じの問題です。画面に碁盤の目のような道が描かれていて「あなたは今ここに立って画面の上側を向いています。目を閉じてください。前進して、2つ目の角を右に、一つ目の角を右に、振り返って前進して3つ目の角を右に、一つ目の角を左に、Uターンして二つ目の角を右に。さあ、あなたは、今画面のどちらをむいているでしょう?(または、今どの位置にいるでしょう?)」というような感じでした。ちなみに、この場合は画面左側ですね。こんな設問が3問ほどあり、全問正解したのが、職業別に集められたスタジオの150人だったかの1割程度だったんです。しかも、正解したのはタクシー運転手さんグループと東大生グループのメンバーがほどんど。
「話を聞かない男、地図が読めない女」という、今となっては問題発言的タイトルの本がベストセラーになったこともあって、それ以来私は方向感覚がよくて「地図を読める女」という自己イメージに胡坐をかいていました。
言い訳しますが、ガチの「歌ヘタ」で「運動オンチ」で「人前で話すのが苦手」な私。となると、方向感覚にすがるしかないじゃないですか!?
「地図が読める女」が「地図アプリ」に完敗した日
さて、方向音痴で地図が読めない友人や仕事仲間(特に男女を意識したことはありません)を笑って(もちろんずいぶん助けても)きましたが、最近は、立場が逆転しがちに!
私のまわりの方向音痴な人達は、スマホの地図アプリを賢く使いこなしているんです。そして、スマホ画面に出ている小さな地図範囲で、スイスイ上手に移動してしまいます。
数年前に、超ド級の方向音痴の後輩(会社の昼休み、近所のご飯屋さんから出て会社と反対方向に歩き出した強者)とライターさんが、地図アプリで難なく到着したというスタジオに、私だけ迷って遅刻したとき、はじめてその事実に気付き愕然としました。
なにせ私と来たら、なまじ「地図が読める」というおごりがあるので、「住所を打ち込むなんざ、面倒くさいわい」と打ち込まない。そもそも地図アプリを少し疑ってかかっているし。
さらに致命的なのが、小さな範囲の地図だと不安なんです。とにかく広い範囲で、駅とか大通りとの位置関係を把握しておきたい。よって、スマホの地図をしばしば縮小して広い範囲を確認しながら移動するので、かえって目的地を見失いがちで時間がかかったりするんですよ~。
本当は、広い範囲の地図をプリントして持参し、狭い範囲は地図アプリに頼るという組み合わせだと完璧なのですが、今やプリントも減らすべき時代ですし…。
さらにさらに!50代ともなると、記憶力や注意力などと同様、方向感覚も鈍くなってきたような気が…。ふ~、唯一の自慢が消えゆく寂しさよ…。
地図のデザインが好きで捨てられない
もうひとつ困っているのは、地図が好きなあまり手にした地図が捨てられないこと。
若いころはときどき海外取材の機会もあり、店紹介には嬉々として地図をつけていました。昔は地図検索などもできませんから、必ずその土地の地図が必要です。
このたび、会社のロッカーや引き出しの大掃除を敢行しましたら、地図が出てくる出てくる。最近は海外に行く機会も減っており、ほとんどは10年以上前のものです。
「ときめくものはとっておき、ときめかないものを捨てる」法則で行きたいけれど、どれも胸がキュンとなる~。さ~、どうする!?
こちらは、80年代から2000年代頃の蛇腹折りの地図。右側はフランスの地方の地図で、意識していませんでしたがミシュラン社のものが多かったですね。街の全体像を把握したいので、仕事でも旅行でも、とにかくまず地図を購入して、自分やホテルの位置を確認。ヨーロッパの地方の街は、あまり道に変化がないとはいえ、30年も前の地図だしな~、2度と行かない街も多そうだし…。でも、ときめくよね~。
こちらがパリとロンドンの愛用の地図。
なにしろ若い頃パリかぶれだったので、20代から40代半ばまで、このパリの赤地図本を使い倒しました。ずいぶん前に背表紙が破れましたが作りがしっかりしていて壊れません。
たぶん、91年の2度目のパリ取材で購入し、6区にポストイットを貼ってそのまま。6区サンジェルマン界隈に滞在することが多かったし、6区に目印があれば、そこからマレの3区や、バスティーユの11区などと、ぱっと開きやすかったため、はがす機会を逸しました。
ご存じの方も多いと思いますが、パリはすべての通りに名前があり、マドレーヌと名がつくだけでも大通り、アーケード、広場など4つも住所に使われているので、しっかり確認しないとたどり着けません。この字の小ささで、40代半ばからはあきらめて、大判サイズの地図に乗り換えました。
左下が、今までの赤地図。40代半ばからは約4倍サイズのものを利用。
プライベート旅でパリ滞在が2日間だけというような時には、効率よくまわれるように、行きたい場所にポストイットを貼っておく作戦も。この1枚とメトロ路線図さえあればOK。店のラインナップからすると2006年頃?
デザインに惹かれて買った地図も。1900年のパリの万国博覧会のお土産用など、昔のパリ地図の復刻版。建築物の絵にぐっときます。
地方の観光案内所やホテルでくれる街地図も、しばしばデザインにときめきます。独特の色使いとタッチで、それぞれの世界観を醸し出しています。
ということで、先行きの見えないコロナ禍の中、会社のロッカーを整理したために、久々に再会した地図達にときめきっぱなしのひとときを過ごしました。
しかし、これらの地図を、ものであふれかえった我が家のどこに収納する!?
「昔、地図が読めた女」の苦悩はつづきます。
では失礼して今回も「50代あるある(かもしれない)川柳」を。
「エモい」って こういうことか! 地図見つめ