心に喝を入れてくれる「詩仙堂のししおどし」
皆様、こんにちは。少しご無沙汰してしまいました。
すっかり寒くなりましたが、風邪などひかれてませんか?
あと少しで、冬至。日に日に年の瀬を感じる今日この頃ですね。
実は私、夏頃から大切な人と小さなすれ違いがあって‥・
ちょっと凹んでおりました。
もう何年も家族同様に接し、絆を結んできた人でしたが
お互い気の緩みというか、我儘が出てしまったというか。
占い師と言えど「相手の気持ちが全部わかる」なんてことは
ありゃしません。
そんなストレスを抱えたままだから、
萌える紅葉を眺めても、今ひとつ酔いきれない。
一刻も早く立ち直らねば!と、私の心が求めたのは「力強い音」でした。
京都で暮らしていると
実に様々な音があることに気づかされます。
祇園祭のコンチキチン。
神社の神楽、笙や笛、太鼓の音。
西陣の織物の音‥‥etc
そして今回
私が力を貰いたくて
会いに行った、詩仙堂の「ししおどし」の音。
「ししおどし」といえば、水の流れる細い竹がコトン‥と静かに石を打ち、わびさびを感じさせる‥‥
そんな風雅なイメージですが
詩仙堂のは、ちょっと違う。
太く長い竹が醸し出すのは
おへその奥というか、まるで丹田がぶるっと震えるような
男性的で力強い音!
詩仙堂は江戸初期の武将・文人でもあった石川丈山が晩年を過ごした住居でした。
現在は詩仙堂丈山寺として曹洞宗大本山永平寺の末寺になっています。
ここには「詩仙の間」という、丈山と林羅山が選定し、狩野探幽が描いた三十六人の詩人の絵と詩が飾られている部屋があることから、いつしか詩仙堂と呼ばれるようになったそうです。
畳に座って目を閉じていると、時折、除夜の鐘のように
ゴーン
と響き渡る、ししおどしが聴こえてきます。
本当はもっと竹らしい音ですけどネ‥・。
つい、鐘のような印象を受けてしまうのは
この凛とした深く温かい音に
自らの運に、喝を入れて貰える気がするからでしょうか。
庭を歩いて、そばで聴くのもいいけれど
おすすめは、詩仙の間に座ったままで、庭の空間いっぱいにダイナミックに響くししおどしに、素直に耳を傾けてみること。
温かい大きな力に包まれて、安心して前へ進んでいける気持ちになれるのです。
ししおどしは「鹿おどし」と言い、人間の居住域まで降りてきてしまった野生の鹿や猪を、音でびっくりさせて山へ帰そうという仕掛け。
罠にかけるのでもなく
火縄銃で撃つのでもなく
お互いに良い共存を保つための
思いやりに満ちた、賢者の知恵だったのでしょう。
そんな愛に溢れた音に励まされたからでしょうか。
この後、絶交中?だった人と、お互い勇気を出して再び向き合うことができ、
無事コミュニケーション復活。
やれやれ一件落着。
中心部から少し遠いけれど、バスを使えば案外、便利。
私は市バス5号系統に乗り「一乗寺下り松町」で下車して歩きます。
道中、和菓子屋さんで名物に舌鼓をうつのも楽しみのひとつ。
今回、「ししおどし」の音に
「しっかりせよ」と励まされ、勇気づけられ、
私は心の傷が癒された気がするのです。
令和2年もきっといろんなことがあるでしょう。
でも、
気持ちが弱くなった時は、この竹の力強い音にぜひ逢ってみて下さい。
きっとまた、笑顔になれると信じています。
イラスト/sino