宮本信子さんインタビューの最終回となる今回は、毎日の過ごし方、まわりの人たちとの接し方、自分の人生をどう引き受けるか。その考え方に迫ります。
前回のインタビューはこちら
若い頃からいぶし銀のような女優だねって/宮本信子インタビュー①
欲張りな人間には神様は何もしてくれない/宮本信子インタビュー②
毎日楽しい、毎日幸せ、それで十分じゃない?
今年、宮本信子さんは76歳になります。以前からずーっと、年齢を隠すことはありませんでした。
「だって年をとるのは当たり前ですもの! 私はいつもありのままで、どんなことがあっても受け入れようと思っています」
年齢を重ねることが怖くて、少しでも若く見せたい、自分の年齢を受け入れられないという読者も多いのですが。
「な〜に言ってるんですか。年齢を気にして、ため息をついたりシワを気にしたり、そんな時間があったら掃除でもしたらどうかしら?(笑) いつまでも若い人と張り合うのはおかしいでしょ? あきらめが肝心なんですよ。あきらめるって悪いことみたいに言う人もいますけど、あきらめきれずにぐーっと歯を食いしばっていたら、人相が悪くなって、困ると思うの」
「年をとるのは当たり前。ありのまま、あきらめが肝心です」(宮本信子さん)
宮本信子さんがこの先なりたいと願うのは、シワがいっぱいのオバアサン。
「地方の農家のオバアサンで、とてもいい顔の方がいらっしゃるじゃないですか。笑うと顔中に、よいシワがいっぱいあって、人生いろいろあったでしょうに、すべてを乗り越えて今、こんなにいい顔をしている。いいな、素敵だなって思います」
若さへの執着はさらりと捨てて、今すべきは、とにかく楽しく生きること。
「私ね、毎日楽しいんです。仕事があることが幸せだし、好きなことがあるのも幸せなことだと思うの。暇なときは家の近所をぐるぐる散歩したり、ラジオ体操をしたり、歌を歌ったり音楽を聴いたり。その日そのとき好きなこと、自分に合っていることだけをする。それで十分幸せだし、楽しいんです。何より、自分でそういう楽しい生活にもっていかないと、ね」
毎日をどう過ごすか、まわりの人たちとどう接するか、自分の人生をどう引き受けるか。生き方そのものが表情に表れ、シワとして顔に定着するのかもしれません。楽しい毎日から生まれるシワは、笑顔そのままの、きれいなシワになってくれるはず。
「やっぱり、心の中からじゃないと、よいシワはできませんものね。不平不満を言わないで、現状を見て、考えて、楽しく生きていきたいわね!」
「楽しく生きて、きれいなシワをいっぱい作る!」(宮本信子さん)
『キネマの神様』
借金まみれで妻の淑子(宮本信子)や娘(寺島しのぶ)に迷惑ばかりかけるゴウ(沢田研二)だが、若き日のゴウ(菅田将暉)には、映画監督への夢や、食堂の娘・淑子(永野芽郁)への恋心、映写技師・テラシン(野田洋次郎)と友情を育む青春時代があった。変わらない「映画」への愛が過去と今をつなぎ…。山田洋次監督による、松竹映画100周年記念作品。8月6日(金)全国公開予定
宮本信子さん Nobuko Miyamoto
1945年3月27日、北海道生まれ。63年、文学座附属演劇研究所に入所。69年に伊丹十三氏と結婚し、二児の母に。84年の映画『お葬式』以降、『タンポポ』『マルサの女』など伊丹監督作品全10作に出演。ドラマ「あまちゃん」「ひよっこ」、資生堂のCMなど多方面で活躍中
撮影/萩庭桂太 ヘア&メイク/奥川哲也(dynamic) スタイリスト/石田純子(office DUE) 取材・原文/岡本麻佑