『若いときがいちばんピークで、そのあとは落ちていくだけ、というイメージを、私は受け入れたくないの』と話してくれた風吹ジュンさん。今回は、体の変調を感じるようになった50代に行った、風吹さん流のアンチエイジングについて伺いました。
アンチエイジングは日傘を差すようなもの
かわいさだけでなく、したたかさやひたむきさ、すごみや切なさも併せ持つ女優として、ずーっと活躍してきた風吹さん。二人の子どものシングルマザーでもあり、その人生は山あり谷ありの、大忙しでした。そんななか、
「年齢を意識するようになったのは、50代からです。40代から『年をとるってどういうことだろう? 準備も何もできていないのに』って思っていたんですけど、いざ50歳になってみたら思い知らされました。
体にはコトンコトン、と階段を踏み外すみたいに問題が起きるし、世間が自分を見る目も変わるんです。若い人の反応とか、ね。ああ、これが年をとるということなのかなって」。
最初に体の変調を感じたのは、50代に入ってすぐのこと。
「疲れが抜けないんです。やる気が出ない。これはおかしいぞ、と思って」
アンチエイジング専門のクリニックに足を運ぶと、意外なことが。
「検査したら、ホルモンがゼロですって言われました(笑)。やる気を起こさせるテストステロンという男性ホルモンがゼロで、女性ホルモンも、もうないって。びっくりしました。ホルモンがこんなにもマインドに影響するなんて! ですから“自分らしくないな”って感じたら、体の中に変化が起こっていることを疑ったほうがいいですね。
それに、疲れというのがいちばん、加齢を加速するらしいんです。だからまず、疲れにくい体をつくる必要がある。そこで私は、アンチエイジングを始めたんです」
アンチエイジングというと、年齢に抗うイメージ。でも風吹さんのアンチエイジングは、またひと味違います。
「お医者さまに言われました。日傘を差すようなものですって。日焼けしないように傘を差すのと同じで、予防してダメージを減らして元気を長もちさせる、そのためのものなんです、と。だったらやってみようかと」
処方されたサプリメントをとるうちに、体力と気力は徐々に回復。すると、いろいろなものに興味が湧き、行動力も増してきました。そこから、風吹さんの楽しい50代、60代が始まったのです。
『Arc アーク』
ケン・リュウの「円弧(アーク)」(『もののあはれ ケン・リュウ短篇傑作集2』所収)を原作に、石川慶監督が映画化。出演は芳根京子、寺島しのぶ、岡田将生、倍賞千恵子、風吹ジュン、小林薫ほか。近未来を舞台に、不老不死の施術を受けて生き続ける女性リナ。彼女が最後に下す決断は…。6月25日より公開中
風吹ジュンさん Jun Fubuki
1952年生まれ。’75年、テレビドラマ「寺内貫太郞一家2」で女優デビュー。映画『無能の人』(’91年)で日本アカデミー賞優秀助演女優賞、『コキーユ〜貝殻』(’99年)で報知映画賞主演女優賞を受賞。幅広い演技力で映画、ドラマに活躍中。近年の出演作に映画『マチネの終わりに』『浅田家!』、テレビドラマ「やすらぎの刻~道」。2020年、毎日映画コンクール田中絹代賞を受賞
【特集】前回の風吹ジュンさんインタビュー
撮影/萩庭桂太 ヘア&メイク/石邑麻由 スタイリスト/岡本純子(Afelia) 取材・原文/岡本麻佑