いつも笑顔がステキな篠原涼子さん。
3月12日に公開される新作映画『ウェディング・ハイ』では、今まで見せてこなかった新しい魅力を発揮している。
相変わらずキレイで元気、凛とした表情はそのままに、すべてを受け入れ、ゆったりと落ち着いた大人の女性の存在感が、作品全体をまとめているのだ。
48歳という年齢を味方につけて、長く活躍する人がみんなそうであるように、彼女もまた進化を続けている。
撮影/土山大輔(TRON) ヘア&メイク/岡野瑞恵(storm) スタイリスト/宮澤敬子(WHITNEY) 取材・文/岡本麻佑
篠原涼子さん
Profile
しのはら・りょうこ●1973年8月13日、群馬県生まれ。’90年、東京パフォーマンスドールのメンバーとしてデビュー。’94年にソロシングル「恋しさと せつなさと 心強さと」が200万枚を超える大ヒット。女優としてもテレビ、映画、舞台と幅広く活躍し、「ハケンの品格」や「アンフェア」シリーズなど多数の代表作がある。
ヒロインだけど裏方仕事。
出しゃばらずに演じました!
主演映画『ウェディング・ハイ』の篠原涼子さんは、ひと味違う。
本作で篠原さんが演じるのは、ウェディングプランナーの中越。結婚式を陰で支える裏方だ。新婚カップルの希望を細やかに聞き出し、すべての要望に応えようとする、NOと言わないキャリアウーマン。
今まで辣腕刑事やハイスペックな契約社員を演じてきた、その印象が強いけど、今回演じる中越は・・。
「なんだろ、ちょっと不器用なんですよね。すごく一生懸命で、クライアントの夢や希望をなるべく叶えてあげたい。満足してもらいたい。一生に1度のこの日、素敵な思い出を作ってあげたいんです。でも、いろいろな事情とか邪魔が入って、今回、ちょっとパニックです(笑)。
今まではどちらかというとパーフェクトに近い、血の通っていないようなキャラクターを演じることが多かったかもしれませんけど、中越は全然パーフェクトじゃない。そこがまた彼女の魅力だと思います」
中越の目の前には次から次に味の濃い、個性的な人物が登場する。結婚披露宴に招かれたゲストの面々がそれぞれの人生を背負い、それぞれの思いを込めて、その宴に参加しているのだ。
新郎を演じる中村倫也さん、新婦の元カレ役の岩田剛典さん、謎の男を演じる向井理さんはじめ、高橋克実さん、皆川猿時さんなどなど実力派ばかり。俳優陣がみんな、これでもか、というくらい熱演している。
結婚式の限られた時間内に、いったいどうやってこのカオスを交通整理するのか、すべては篠原さん演じる中越の手腕にかかっている。
「ですから私、今回は自分が出過ぎないように、裏方に徹して演じています。本当はもっともっと、いろいろやりたかったんですけど、あまりにもまわりの方々が濃いメンバーでしたので(笑)。
脚本のバカリズムさんとご一緒するのは初めてなんですけど、スピード感のある台本で、ひとりひとりの登場人物のキャラクターを丁寧に書き込んでいらっしゃる。この台本が実際に映像になったらどれだけ面白くなるんだろうって、撮影に入る前からすごく楽しみでしたし、撮影中もほんと楽しかったです!」
役作りのヒントは、思わぬところにあったという。
「大九明子監督が、まさに中越そのものだったんです。個性的な俳優さんが次から次へと出てきて、それをどう演出してどう撮るか、大九さんご自身が中越みたいにいっぱいいっぱいになっていて。ですから大九監督の奮闘ぶりとか髪の乱れ方とかを見て、盗ませていただきました(笑)。もちろん、ご本人にOKいただいてますよ」
まるでおでんのスープのように、多種多様な具材たちを全部受け入れて、しっかりと全体をまとめ、良い味を出しているのが篠原さん。ベテラン女優としてここ一番、懐の深さが感じられる。
その篠原さんが「実は女優になりたくなかった」と聞いて、驚いた。
「芸能界に入るとき、女優さんだけはやりたくないって、決めていたんです。だけど私も中越と同じ、NOと言うのが嫌いな人間なので(笑)、やれと言われてついつい『はい』と言ってしまい、ずるずるずるずるやっていくうちに、気がついたんです。他の人間になりかわれる、いろんな人たちとの出会いがある、いろんな人生を体験できる、そしてそれを皆さんに見ていただける。なんかこの仕事、楽しいなって」
女優になりたくなかった、そのワケは?
「笑いたくもないのに笑ったり、泣きたくないのに泣いたり、そんな、いきなりヨーイドンで嘘をつくのが、私にはできないなって。器用じゃないし、そんなことができる自信もなかったし。憧れはあるけれど、生半可でやってはいけない、恥ずかしいという思いがありました。
でも私、ほめられると木に登る性格なので(笑)。みなさんの言葉ひとつひとつが私の勇気、糧になってくれました。それに私、仕事をしながら気が付いたんですけど、何か難しいこと、イヤなことがあると、その瞬間はすごく拒否反応がでるんですけど、すぐ忘れるんですよ。忘れてすぐ、次に切り替わっちゃうんです。そうやって乗り越えて来たんですね(笑)」
新人女優の頃には、こんな逸話もある。
「あの緒形拳さんと共演させていただくことがあったんです。緒形さんはとてもチャーミングで、フランクな方。大御所の方にはそういう方が多いんですけど、オーラがすごいしお芝居もハンパなく素晴らしいんですけど、全然偉そうじゃなくて、怖さを感じさせない。
それで私、当時すごく若くて空気も読めない人間だったので、緒形拳さんにケンケンって、あだ名をつけちゃった。緒形さんも笑って『おはよう、ケンケンだよ』なんて返してくれたりして。今思い返すだけでヒヤヒヤするんですけど(笑)、緒形さんにはすごい刺激をいただきました」
そして今、大人の女優として篠原さんは、次のステージに進もうとしているようだ。
「今回の作品ではいつもより控えめに、我を出さず、なるべく丁寧に丁寧に、演じました。コメディ作品ですけど、人を笑わせようとは考えず、この人間は何を考え、どう動くべきなのか、それだけを考えていたと思います。
おかげさまで前評判がとても良いんですけど、それも出ている私たちだけじゃなく、実は裏の人たちが本当に努力してくれているおかげ。それぞれの人たちが主体的に、そして力を合わせてやるチームワークの力って、すごいんです。今回、裏方を演じて余計に、それを感じました。
コロナ禍でまだまだ先の見えない状況ですけど、だからこそ、この無条件に明るくて元気の出る映画を、みなさんに見ていただきたいです!」
実はこの映画の撮影も、感染予防対策などなど厳しい条件下、とてもハードなスケジュールで進行したとか。
その間、篠原さんは気力体力をどうやって維持していたのか、そして48歳の今、美容と健康にどんなケアを続けているのか。
そんな話は、3月1日(火)発売、篠原さんが表紙を飾る『MyAge 2022 春号』のインタビューで、たっぷり語っていただいているので、お楽しみに!
『ウェディング・ハイ』
バカリズムのオリジナルストーリーを大九明子監督が映画化。穏やかだけど流されやすい新郎(中村倫也)と天真爛漫だけどしっかり者の新婦(関水渚)が人生最大のイベント、結婚式に臨む。ウェディングプランナーの中越(篠原涼子)と打ち合わせを重ね、当日を迎えるが、ふたりの上司(高橋克実、皆川猿時)をはじめ、共に祝おうとするクセの強い参列者たちの熱い思いが暴走し、式は混乱を極め・・・。乱入を企てる新婦の元カレ(岩田剛典)や謎の男(向井理)まで現れて、〝絶対にNOと言わない〞中越は、二人に最高の結婚式を贈ることができるのか?
2022年3月12日(土) 〈大安吉日〉全国ロードショー!
©2022「ウェディング・ハイ」製作委員会
脚本:バカリズム
監督:大九明子
出演:篠原涼子 中村倫也 関水渚 岩田剛典 向井理 高橋克実ほか
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/wedding-high-movie/