漫画も連続ドラマも大人気の『ミステリと言う勿れ』がこのたび映画化され、鈴木保奈美さんはキーパーソンのひとりとして出演している。
次々と意欲作、注目作に出演し、俳優として存在感を増すのと同時に、スタイリッシュでクールな大人の女性として、多くの女性の支持を集めている。
きりっとしたそのたたずまい、どうやって保っているのでしょう?
(オファーされる前から原作漫画もドラマも大好きだったという、『ミステリと言う勿れ』についてのインタビュー前編はコチラ)
撮影/富田一也 ヘア&メイク/福沢京子 スタイリスト/犬走比佐乃 取材・文/岡本麻佑
鈴木保奈美さん
Profile
すずき・ほなみ●1966年8月14日生まれ、東京都出身。1984年にホリプロタレントスカウトキャラバンで審査員特別賞を受賞。 86年俳優デビュー。91年に出演したドラマ『東京ラブストーリー』が大ヒット。98年の結婚を機に芸能活動を休止していたが、2008年に復帰。2011年NHK大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』で本格的な活動を再開。近年はドラマ『SUITS/スーツ』『35歳の少女』『ちむどんどん』、映画『おとなの事情 スマホをのぞいたら』などに出演。初のエッセイ本『獅子座、A型、丙午。』(中央公論新社)も話題に。
荷物は捨てて、すっくと立っていたい
3年前、鈴木保奈美さんが上梓した初のエッセイ本『獅子座、A型、丙午。』には、日常のディテールが詳しく書かれている。50代を迎えて感じる体の変化や、美容、健康に関することもあれこれと。
たとえば、冷えるので靴下を欠かせない、とりわけお気に入りは5本指のもの、とか。リップクリームは手放せない。髪がパサパサ。ファスティングを試してみた。リーディンググラス、もとい、老眼鏡をかけるようになった、などなど。
俳優だからとかっこつけることなく、ありのままを綴るそのスタイルは痛快だ。
「最近は朝起きて、自己流のヨガストレッチを。ちょっと腹筋くらいのことは日課として続けています。
あと今年に入ってジムに通い始めました。なんちゃってヨガだけでは、足りないなと思いまして。
もともと私、心肺機能が弱いんじゃないかと思うんです。筋肉はあるのに、階段を昇ったりすると息切れすることがあって。走るのは苦手ですし、有酸素運動も好きじゃない。
でもね、今年はあえて苦手なことに挑戦してみようかと」
通っているのは、いわゆる低酸素ジム。アスリートが高地トレーニングをするように、低酸素の環境で運動することで、運動効率を高め、体力を増強するのだとか。
「私は持久力、スタミナが欲しいんですよね。
私が通っているところは、富士山の五合目くらいの酸素濃度に設定してあるそうです。ランニングマシーンもあるけれど、歩くとか軽い運動でもいい。そこにいるだけである程度の効果はあるらしくて。
30分やればいいので、忙しくて時間がない人が通うジムだそうです」
さらに15年ほど続けている習慣もある。
オイルプリングという、インドのアーユルヴェーダが提唱してきた、オイルでうがいをする美容法だ。朝起きたとき、ココナツオイルをひとさじ口に含んで、しばらくの間クチュクチュと口の中を洗い、あとはぬるま湯でゆすぐだけ。
「有名なエステティシャンの方に教わったんです。初めは『油で口をゆすぐの?』って抵抗があったんですけど、やってみたら気持ちいい。
クセになって、いつのまにか風邪もひかなくなっていたので、もう15年ぐらい続けています。クチュクチュするのは3分間くらいですね」
起き抜けに水やぬるま湯でうがいをするのは、続けている人も多い健康法。たしかに風邪をひきにくくなるし、気持ちよい。でもココナツオイルには、どんな効果が?
「私はオイルでしかやったことがないので、その違いはわかりません。
さらに、そのエステティシャンの方にお目にかかったときに、ずっとオイルプリングを続けているという話をしたら、『え? 私、そんなことおすすめしました?』って、すっかり忘れていたんですよ(笑)。
ただ、いろいろな健康法を始めてもすぐにやめちゃうことが多い中で、これだけはなぜか続いているんです。クセになってて、悪くないので続けているという感じです。もう始める前がどうだったかというのも、よく覚えていないのですが」
食生活は20年来、玄米食を実践中。
「健康法というより、おいしくて好きだから。お寿司屋さんに行けば白米をいただきますし、ロケのお弁当も普通に食べますし。家では基本玄米ですが、気を付けているわけではなくて、わりと食べたいものを食べています」
スタミナのためにここ一番、食べるものがある。
「去年舞台に出演したときに、まわりの俳優さんたちに『馬肉がいい』と教えてもらって、ちょっとマイブームになりました。馬刺しは、今もときどき食べます」
10月1日から11月12日まで、意欲的な舞台に立つ。
『レイディマクベス』、天海祐希とイギリスの俳優アダム・クーパーがタッグを組む、世界初公演の新作だ。
「舞台が始まってしまったらもう、走り続けるしかないので、そこまでに体力をつけておきたいと思っています。
台詞覚えに関しては、大丈夫。私、なんだか負けず嫌いなところがあって、稽古に立つ時点で、『私はもう覚えたわ』って台本を先に手放したいタイプなんです。
まったく、誰と何の勝負をしているんでしょうね(笑)」
ここ数年、気の合う仲間と「演劇部」という名目で集まって、演劇のワークショップを自主的に続けて来た、と、これはTVのバラエティ番組で得た情報。
演劇をはじめ、表現することに鈴木さんは本気で取り組んでいる。
「最近よくバレエとかミュージカルとかダンスの動画を観るんです。
私たちの仕事は、脚本があってカメラがあって照明があって監督がいて、いろいろ揃わないとほぼできない仕事なので、体ひとつで表現するということに、とても憧れがあるんですね」
それは舞台の上だけでなく。
「なるべく削ぎ落として削ぎ落として、荷物を捨てて立っていられる人に憧れます」
すっくと立つ、その姿が美しいからこそ、今日のようなメンズライクなコスチュームもぴたりと決まる。
「お仕事でスーツを着ることが多かった時期があって、そのときは本気で、背筋をピシッと伸ばすことを心がけていました。今も、ですけど。
体幹、姿勢、大事ですよね。何もしないでいると衰えていくばかりですから(笑)、なるべくキープ、現状維持しようと思っています」
先へと進むその過程には、向かい風が吹くこともあるはず。ストレスを感じるときには、どうやって対応しているのだろう?
「ストレス、ね。それはもう、いろんなところに感じると思いますけど・・。
でもストレスって言っちゃうと、なんでもストレスになるから、あまりストレスって思わないようにしてますね」
50代の今、こんなにタフに仕事に打ち込んでいる鈴木さんを見ていると、なんだかすごく励まされる。この先、どんな未来を作って行くのか、追いかけたくなる。
「ダンスは習いたいなと思ってますけど、あまり先のことは考えていなくて(笑)。
特に私たちの仕事は、いただくお仕事なので。声をかけていただかないと、始まらないんです。私ごときが『こうしたい』と言っても、必ずしもそうできるものではないので。
それよりはこう、周りの方とのご縁を大事にしながら、逆に、何が来ても対処できる人間になっていきたい。そう思っています」
『ミステリと言う勿れ』
累計発行部数1800万部を突破している田村由美の人気漫画を原作に、2022年1月期の連続ドラマとして放送された『ミステリと言う勿れ』。今回は原作の中でも特に人気の通称「広島編」を、豪華キャストで映画化。天然パーマがトレードマークの大学生・久能整が広島を訪れ、地元の名家・狩集家の遺産相続に巻き込まれることに・・。
2023年9月15日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷 ほか全国ロードショー
配給:東宝
原作:田村由美「ミステリと言う勿れ」(小学館「月刊フラワーズ」連載中)
監督:松山博昭 脚本:相沢友子
出演:菅田将暉
松下洸平 町田啓太 原菜乃華 萩原利久
鈴木保奈美 滝藤賢一 でんでん 野間口徹
松坂慶子 松嶋菜々子
伊藤沙莉 尾上松也 ・ 筒井道隆 永山瑛太
角野卓造 段田安則 柴咲コウ
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