長い下積みを経て、40歳直前で大ブレイク。
ピン芸人として活躍する一方で、劇団「山田ジャパン」に所属する一俳優として舞台に立ってきた。
いつも笑顔で、いつもパワフル。50代の今も、そのイメージは変わらない。
いったいどうやってその元気、キープしているの?
(芸人になるまでの紆余曲折と「あだ名」についてのインタビュー前編はコチラ)
撮影/富田一也 取材・文/岡本麻佑
いとうあさこさん
Profile
いとう・あさこ●1970年6月10日生まれ、東京都出身。1997年、お笑いコンビ「ネギねこ調査隊」を結成。2003年にコンビ解消後、ピン芸人として活動を開始。現在レギュラーで地上波番組4本、ラジオ3本に出演中。2008年から劇団「山田ジャパン」の旗揚げメンバーとして、劇団公演には必ず出演している。主演映画『鈴木さん』(’22)など俳優としても活躍中。
気力は人の500倍。アルコール分解力も驚異的!
「周りにいる人たちから、『いつも元気だよね!』とか、すごく言われますけど、私の元気は気力なんですよ。気力はたぶん、人の500倍くらいあると思います。
神様は私に、ふたつの力をくれたんです。ひとつは気力、もうひとつはお酒の分解力(笑)」
まずはその、気力の話から。
「家から出かけるとき、最初に『よっこいしょ!』って気力をオンにすると、あとはだーっとエンジンがかかるんです。
もちろん50代に入ってからは体の痛みとか疲れとかあるんですけど、エンジンさえかかればその日一日、ずーっとフルに動ける。最初にブルンブルンブルンッて、そこが大事です」
エンジンをかけて、ガソリンとなるのは、おいしいもの。
「飲食が大事なんです。別に高価なものじゃなくても、おいしいと思うものを口に入れたい。それにお酒も大好きですし」
かなりの酒豪と言われているけれど、年に1回受ける人間ドックで、内臓の数値に問題が生じたことはないという。
それが神様がくれたふたつめの力、アルコール分解力。
「これだけ飲んでいるのに、肝臓の数値もまったく問題がないんです。しかもこれ、奇跡なんですけど、内臓脂肪がないんですって。
もちろん『肥満』という文字は必ずついておりますが。ということは逆に言うと私の脂肪はすべて皮下脂肪。ぞっとしません?(笑)」
とはいえ、そんなあさこさんでも、50代に入る頃から体調に変化が。
「やる気満々人間のつもりで生きてきたんですけど、急にやる気が出なくなったというか。
ソファに寝っ転がって、ずーっとスマホで、とうもろこしと麦を育てるゲームをやっていて、気がついたら4時間ぐらい経っていたんです。『あぁ、私、こんな人間じゃなかったのにな』って」
心配になって人間ドックのときに婦人科の先生に相談したら、こんな返事が返ってきた。
「『あさこさん、50歳になっちゃったから、ホルモン、なくなる。疲れる。やる気でない。それ、しょうがないねー!』って。台湾出身の先生なので言葉がシンプルなんです(笑)。
それで傷つく方もいらっしゃると思いますけど、私は『そうか、しょうがないんだ』と思って、よけいダラダラするようになりました(笑)。
本当にしばらくは何もできませんでしたから、受け入れるしかなかった。納得したというか、抗う力もなくなっていて」
ようやくそんな状況からは脱したものの、「これがいわゆる更年期か」と、しみじみ実感したという。
そんな頃から活用しているのが、アミノ酸。基本的にはサプリメントよりも毎日の食事が大切だと思っているけれど、これだけは別格だという。
「私は黄色い粉と呼んでいて(笑)、ここ一番、頑張るときにはなめています。最初になめてみたら『ええ?』っていうくらい元気になったので。
普通にドラッグストアで手に取った、ゴールドだったかプロだったか。最後の1本が終わって次を買うから名前とか覚えていないんだけど、アミノ酸界でもわりとリーズナブルなお値段の。
私がそういう話をしたらいろんな人が『このアミノ酸いいよ』とか、あれこれ教えてくれたり、高価なアミノ酸をくださったりしたんですけど、そっちは全部ダメで。安上がりにできているんですね(笑)」
あとは、毎日お風呂に入ること。
「もともと江戸っ子ってわけじゃないですけど、本当にカラスの行水で、しゃーっと浴びて『てやんでい!』って出たいから、湯船になんかつかれなくて(笑)。
でも今は無理にでも湯船に入って、体の疲れをリセットするようにしています」
さらにルーティンワークとして続けているのが、ラジオ体操とラジオ英会話。
「去年のお正月特番かな、『マツコの知らない世界』に、世界中の豪華クルーズに行かれている女性が出てきて、南極クルーズを紹介していたんです。
その中で彼女が英語の船内放送を聞いて『今日は上陸できないって言ってたけど、行けるみたいよ』ってさっと立ち上がるのを見て、『うわ、カッコいい!』って。
英語をちゃんと自分で理解してすっと動ける大人になりたいと思って、ラジオ英会話を始めました。60で南極に行きたいというところからのスタートです」
ラジオ体操は、ラジオ英会話のついでにやってみた。
「やってみたら、すごく気持ちいい。体操のお兄さんがいつも元気に『行ってらっしゃい!』って言ってくれるので、楽しいんです。
真面目にやるとラジオ体操第一と第二で約10分、けっこうクタクタになりますけど、そんなのがいいんですね」
自分のエンディングのために、一升瓶を抱えた遺影を用意してある話、仲良しの大久保佳代子さんと一緒にお墓を見に行った話、子どもの頃3年間ほどフィギュアスケートを習っていたのでプロフィールにそう記載したら、ディズニー・オン・アイスからオファーがあって、わざわざスペインまで行って特訓をした話。
「でもね、リフトしてくださるふたりの外国人男性が、私を持ち上げるたびにうめいていました。重かったんでしょうね(笑)」
インタビュー中、ついでに披露してくれる話もすべてエンターテインメント。気力充実の日々の暮らしは、本当に楽しそうだ。
「私ね、ソックスとブラジャーが嫌いなんです。縛られたくないんです。
ブラトップという素晴らしい発明をユニクロさまがしてくださったおかげで、まぁ、油断させてます(笑)。足が冷たかったり、いろいろ問題はあるんですけど、自分の好きにしているのが一番快適じゃないですか。
食事に関しても、自由に、好きに食べていたら、急激に太りました。ここ10年くらい一定の体重だったので、人間って自分の体型の限界があるのかなって思っていたけど、すべてを解放してみたら、あ、ちゃんと太るんだなって(笑)」
とはいえ、私服とすっぴんでカメラの前に立ってくれたあさこさんは、お肌ぴかぴかで元気いっぱい。やりがいのある舞台を前に、十二分に魅力的だ。
自由に、自分で選んだやり方で生きて、ありのままの自分を愛せる自分なら、それがベスト! 2024年6月10日、54歳の誕生日を前に、あーちゃんは輝いている。
『愛称⇆蔑称 』
教師歴5年の畑中忠平(原 嘉孝)は長野県佐久市の川北中学校で校長(黒田アーサー)や教頭(いとうあさこ)のサポートを受けながら初の学年主任を務めることになる。が、東京の中央区銀座から双子の兄弟(二葉勇・二葉要)が転入してきて1週間もしないうちに、母親から激しいクレームが。「あだ名を禁止してください」というのだが…。
作・演出 山田能龍
2024年3月7日(木)~15日(金)全14回公演 六行会ホール
3月15日(金)16時~の回はライブ配信も