モデルの黒田知永子さんが手がけるファッションブランド『nuit noire』(ニュイ ノワール)がデビューした。
レジェンド・モデルとして活躍するかたわら、長年つちかってきたファッションセンスをフルに生かして、新しい挑戦だ。
3パターンの黒い服には、いったいどんな思いが込められているのだろう?
黒い服が好きなのはなぜ? 普段の生活で、どんなふうに着こなしているの?
撮影/露木聡子 取材・文/岡本麻佑
黒田知永子さん
Profile
くろだ・ちえこ●1961年6月3日、東京都生まれ。大学生のときに雑誌『JJ』でモデルデビュー。その後『VERY』『STORY』『éclat』『MyAge』のカバーモデルを歴任。女性誌だけでなく、テレビ番組やCMなどでも幅広く活躍。スタイルBOOK『黒田知永子 Only My Way とっておきのワンピース』(宝島社)が発売中。公式サイト:https://kuroda-chieko.com/
黒って、とても華やかな色だと思うんです
黒田知永子さんが作った黒いワンピース2型とブラウス、とっても素敵だ。
ワンピースは膝下丈で、品が良くてシルエットがきれい。ビジネスシーンやちょっとしたお出かけにぴったり。ボウタイ付きのブラウスはエレガントな印象で、なんならデニムに合わせてもお洒落に決まる、オールマイティな1枚。
どちらも黒無地だから、冠婚葬祭にも活躍しそう。
「そう、冠婚葬祭、そこから考えたんです。そもそも式服って、けっこうお値段が高い割には、かわいいのがないじゃないですか。
冠婚葬祭だと、服装はこうじゃないといけない、ああじゃないといけないって、ルールがあるのかもしれない。でも、礼を逸しなければ、ありきたりの礼服じゃなくてもいいと思うんです。
私自身、結婚式でも喪のときにも、日常的に着ているものを着ていくことが多いです。だから、普段おしゃれに着ることができて、冠婚葬祭の、いざというときにも気後れせずに着ていける、そんな服を作りたかったんですよね」
となると、色はもちろん、黒になる。
「私、黒は万能な色だと思っているんです。黒は地味、暗いと思い込んでいる人が多いけど、実は黒って華やかな色だと思う。大好きなの(笑)。
年をとってくると、顔が暗く見えるからって黒を避ける人もいるけれど、それ、間違いだと思う。黒を着ているほうが、肌が白く見えたりするんですよ」
普段も着られるように、という思いは、服のディテールに込められている。
「やっぱり着心地が一番大事だから、生地は厳選しました。肌触りが良いし、伸縮性があって、自宅でのお手入れも可能。
そして黒は黒でも、浅い黒じゃなくて濃いめの黒にしました。あと、ボタンは私の大好きなくるみボタンです。
シルエットは年齢を重ねた方でも着やすいように、絶妙に緩みがあります。ポップアップショップに見に来て下さった方で、『私にはこのサイズは無理かも』っておっしゃる方がいたんですけど、試着したら全然OKで、すごくお似合いでした。
一見、細身に見えるかもしれないけど、着てみると案外大丈夫な服なのかも(笑)」
大人の女性のニーズを、しっかり反映している。もちろん、黒田さんはファッションモデルで、デザイナーではないけれど、服のことはよーく知っている。
「今までどれだけの服をお仕事で着てきたことか…。そして投資してきたことか(笑)。
『今日はこういう気分だからこの服で出かけたい』と思って服を選びます。子どもの頃も『こういう服が着たい』とか『これはイヤ』とか、うるさかったみたい(笑)。
今も、こういう場所に行くからとか、誰々と会うからとか、その日の目的とは関係ないんです。自分の気分優先なのね。何か決めるときには、本能に従う。直感の人だから(笑)」
大学生の頃からモデルを始め、以来ずーっと、さまざまな服を着てきた。数多くの服に袖を通した結果、自分に選ぶのは、着心地の良い服ばかり。
「ワードローブを開けると、黒・紺・グレーのオンパレードです。時々ちょっとインパクトのあるものも着るので、そういうものも入ってはいるけれど。
シンプルなデザインが多いですね。似たような形が多いから、たたんでしまってあるニットなど、照明を明るくしないとどれがどれやらわからない(笑)。でも手で触ると触感で、『あ、あのセーターだ!』ってわかるんですよ」
そんな彼女が選び抜いた素材、こだわりぬいたデザインで、3つのアイテムはできあがっているのだ。
「だから今回はディレクターという立ち位置です。今までもコラボ商品だったり、デザインやコンセプトについて意見を言わせていただく仕事はいくつかしてきましたし。
今回も、『ここにこだわって、こういうディテールでお願いします』とお話しして、それをすべて反映してくださるデザイナーさんはじめスタッフがいて、できあがった服たちなんです」
最初の挑戦ということで、控えめに3アイテムからの出発だけど。
「ゆくゆくは、Tシャツ。Tシャツって『たかがTシャツ、されどTシャツ』だと思うので、本当に自分が欲しい、自分が好きなものを作って提供したいです。
私は、誰かにプレゼントをするとき、自分の好きなものを贈りがちなんです。独りよがりかもしれないけど(笑)。その延長みたいなものかな。あと、ニットなんかも作りたいです」
そんなファッションの達人・黒田知永子さんに、聞いてみた。
40代、50代の読者たちの中には、「今までの自分の服が似合わなくなってきた」「何を着たらいいのかわからない」と悩む声が多いのですが。
「ね、なんで似合わなくなるんでしょうね?! でもファッションに思い込みは禁物ですから。
体型はこんなに変わっているし、世の中もこんなに昔とは違うのに、自分の洋服に対する感覚は昔のまま、自分が一番良かった頃のファッション感覚で止まってしまっている人が多いような気がします。
サイズも、小さいサイズを着られるのが自慢だったりするでしょ? そんなこと、全然自慢にならない。ちょっと大きめを着てゆるっとさせているほうが痩せて見えるのにね。
だから大切なのは、上手に変わっていくことだと思う。自分にはこれ、と決め付けないで、『こんなのが似合うようになったわ』って、変化を楽しまないと損です。
『これは私には無理』なんて思わずに、いろいろ試着してみるのも大事。今まで視界に入らなかったジャンルの服が、実はとても似合ってしまうことだってありますから」
今も現役、バリバリ活躍中。いったいどんなライフスタイルで、60代の今もきれいで元気で魅力的なのか。ヘルス&ビューティの話題は、インタビュー後編で!
(黒田さんのスキンケアやヘアケア、健康についてのインタビュー後編はコチラ)
『nuit noire』(ニュイ ノワール)
フランス語の『nuit=夜』『 noire=黒』ふたつの単語を合わせてブランド名に。2024年秋冬のコレクションはワンピース2型、ブラウス1型の計3型。襟付きワンピース¥89,100 ベルト付きワンピース¥86,900 ファスナーブラウス¥46,200 ECサイトや不定期に開くポップショップなどで販売中。ニュイ ノワール公式ホームページはコチラ。