ファッション・ディレクターとして、『nuit noire』(ニュイ ノワール)というブランドを立ち上げた黒田知永子さん。
最初のコレクションとして発表した黒いワンピースとブラウスは、長年に渡るモデル活動の中から抽出された、究極の3アイテムだ。
そのコンセプトを話してくれる彼女は、相変わらずきれいでチャーミング。
63歳の今も、キラキラ魅力にあふれている。その美貌と健康の秘訣は何?
(黒の魅力と大人のファッションについてのインタビュー前編はコチラ)
撮影/露木聡子 取材・文/岡本麻佑
黒田知永子さん
Profile
くろだ・ちえこ●1961年6月3日、東京都生まれ。大学生のときに雑誌『JJ』でモデルデビュー。その後『VERY』『STORY』『éclat』『MyAge』のカバーモデルを歴任。女性誌だけでなく、テレビ番組やCMなどでも幅広く活躍。スタイルBOOK『黒田知永子 Only My Way とっておきのワンピース』(宝島社)が発売中。公式サイト:https://kuroda-chieko.com/
変わってきたから、変わらない
インタビュー前編で、相変わらずキレイな秘訣を“ちゃんと変わること”と教えてくれた黒田知永子さん。
変わるって、何を? どんなふうに?
「そんな、大げさなことじゃなくていいんです。たとえば髪を切るとか、ピアスの穴をあけるとか、ネイルをしてみるとか(笑)。
ファッション誌を見て時代の変化を実感するのもいいし、街を歩いて若い人たちの服装を見るだけでもいい。ファッションブランドのコレクション写真を眺めて、流行を知っておくだけでもいい。
そういう小さな変化や気づきがいくつも自分の中に重なっていけば、前と同じ自分ではいられなくなると思うんです」
黒田さん自身も、ちょっとしたことで更新を重ねてきた。
「40歳を過ぎた頃に、ちょうどモデルの仕事が切り替わるタイミングで、髪をショートにしました。私は本能で生きているから、明確な理由とか、そういうのはないのだけれど、イメージを変えたいと、直感で思って(笑)」
その後、50代になり『éclat』のメインモデルとして活動を開始してからも。
「前髪をパン、と切ったりして。なんか、突然思うの、『そうだ、変えよう』って(笑)。
ちょっと変えればそれだけでメイクも変わるし、気分も上がる。似合う服だって変わるんです」
ピアスをあけたのも、同様のチャレンジ。さらに一昨年、片耳にもうひとつピアスホールを追加して、黒田さんの進化はちょっとずつ、だけど止まらない。
「時々そうやって、気分を変えることって、大事だと思います。何かを変えるのって、楽しいし。ピアスの穴をひとつ追加してみたら、片方なくしたピアスをまた使えるようになって、すごくうれしいの(笑)。片耳にふたつ並ぶと、印象も変わるしね。
そうやって何気なく自分が変わっていけば、選ぶ服だって変わるし、メイクも靴もバッグも変わっていく。すると、会った人に『変わりませんね!』って言われるの。
時代はいつも動いて流れて変わっているから、それと歩調を合わせて自分も変化させていないと時代遅れになってしまう。先端にいる必要はないけど、一緒に動いていれば、時代と同時に変化していけば、『変わらない』ということになるのかも」
そんなささやかな変化を下支えしてくれるのが、日々のセルフメンテナンス。
「美容は地味な努力だと思ってます。
今回出した黒いお洋服には肌を白く見せる効果があると私は思っていますけど、でもちゃんとお手入れした肌で、きちんとメイクをするほうが、着映えするのは確かです。
顔はもう、年齢を重ねれば誰しも、衰えるので。これだけは神様、平等ですから、手入れを怠ってはいけないと思う。手間はかかるんです。
若い時は素顔のままTシャツにデニムでもかわいいけれど、この年齢でそれをやったら『ああ、お掃除中なのね』って思われるだけ(笑)」
スキンケアで一番重視しているのは、保湿。
「肌が乾燥した途端に、カサカサカサってちりめんじわが出るから、シートパックを週2~3回はしたいし、ゴルフに行った日は必ずやっています。
あと、5倍から10倍の拡大鏡で自分の顔をじっくり見て、チェックしないと。
50歳を過ぎたら、たいてい老眼が始まるでしょ? ちゃんとよく見て、現実を直視して、手間をかければかけただけ肌は保てると思います」
ヘアは、メッシュ入り。黒田さんの最近のトレードマークだ。ショートヘアのアクセントになって、とっても良い感じ。
「コロナの頃からです。白髪染めがイヤでイヤでしょうがなかったから、本当は金髪にしたいって言ったんだけど、みんなに『やめた方がいい』って言われて(笑)。
金色に近づくための予行練習としてメッシュにすれば、白髪も目立たなくなっていいかも、と思ったの。このヘアにしたら、白髪染めをやめることができたしね。ヘアカットは月1ですけど、メッシュにするための脱色は3カ月に1回くらいですんでいます」
スキンケアやヘアケアの基本は、こまめにていねいに続けること。それでも10年前、20年前とは肌も体も違うと、実感しているという。
「無意識に鏡が目に入って、不意に写った自分の横顔が、ありえないくらい老けていて(笑)。“うわーっ! でも、これが現実だな”って。
あと、ふとしたときに口がへの字になっていると、本当に老け込んで見えるんです。だから、口角は上げないと。ここがくっと上がるだけで、顔全体が明るくなるから。頬から首、口のまわりは大事です。
それに頭皮マッサ ージもやるようにしています。顔と地続きだから大事ですね」
プロポーションに関しても、日々の努力は欠かさない。
「といっても、体重はあまり変わっていません。たぶんそんなに太りやすい体質ではないのだと思います。一応、毎日体重計には乗っています。
そんなに変わるわけじゃないけど、ちょっと重くなったら、食事を控えめにして調整します。
少しの変化ならすぐになんとかなるから。なんとかなるうちに、なんとかするのが太らないコツですね(笑)。
年齢的に、顔も腕も胸もお腹も、すべてが緩んで肉が落ちてくるから、体型は変わっていると思うけど」
体型が変わった? そうは見えないのは、きっとヨガをやっているおかげ。
「ヨガ、みたいなものです(笑)。友だちとヨガの先生についてレッスンを続けているんですけど、体が硬くて、いろいろと大変。
ヨガの先生が、『ウチでヨガをやっているって、外で言わないで』って言うくらい(笑)。
年齢を重ねても動ける体でいたい、いつまでもちゃんと歩きたい、それを目標に先生が指導してくださってます。股関節と背筋が大事なんだそうです!」
さらに、サプリメントも。
「知り合いのエステサロンの方の紹介で、血液検査をして、私の体に必要な栄養素を教えてもらって、ビタミン剤とかプロテインはとっています。
目も髪も肌も爪もなにもかも、タンパク質でできているから、ちゃんと補給はしておかないと」
そういえば、更年期は、どんな感じでした?
「あったあった、ありました。急に暑くなって、汗をかいたり。そもそも暑いの大嫌いだし、暑がりなんですけど、エアコンを切ったり窓を閉めたりして風がピタッと止まると、その瞬間から汗がだーっと。風が無いと、ダメなの。暑いって思った瞬間から、すっごく暑くなる。
その当時はかわいい扇子とか常時持ち歩いて、パタパタやっていました。いつのまにか、『そういえば私、最近暑くないな』って、更年期は過ぎていったみたい」
軽やかに、ニコニコしながら、60代を過ごしている黒田さん。
「いつまでモデルの仕事ができるんだろう? 私が決められることではないけれど、でも、なるべく長くファッションには関わっていたい。私たちのこの年代のファッションを、どんどん素敵なものにしていきたいです」
『nuit noire』(ニュイ ノワール)
フランス語の『nuit=夜』『 noire=黒』ふたつの単語を合わせてブランド名に。2024年秋冬のコレクションはワンピース2型、ブラウス1型の計3型。襟付きワンピース¥89,100 ベルト付きワンピース¥86,900 ファスナーブラウス¥46,200 ECサイトや不定期に開くポップショップなどで販売中。ニュイ ノワール公式ホームページはコチラ。