OurAgeの連載コラム『一条ゆかりの今週を乗り切る一言』が大人気の漫画界のレジェンド・一条ゆかり先生。
連載をまとめた金言集のパート2と、塗り絵ブックの2冊が同時発売となりました!!
なぜ先生の作品はいつまでも色褪せないのか。その謎にインタビューで迫ります。
撮影/富田一也 取材・文/佐藤裕美
一条ゆかりさん
Profile
いちじょう・ゆかり●1949 年9月19日、岡山県生まれ。1967年第1 回りぼん新人漫画賞準入選、1968 年「雪のセレナーデ」でデビュー。代表作に「デザイナー」「砂の城」「有閑倶楽部」「プライド」など。1986 年「有閑倶楽部」で第10回講談社漫画賞少女部門受賞。2007 年「プライド」で第11回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞。
塗り絵&金言集が同時発売に。
2冊そろえて一条ブートキャンプ!!
16歳の時に、貸本漫画で単行本デビューしてから60年! このたび、一条ゆかり先生の金言集(電子書籍)と塗り絵ブックが2冊同時発売となりました!!
金言集『男で受けた傷を食で癒すとデブだけが残る』は、OurAgeの人気連載『一条ゆかりの今週を乗り切る一言』をまとめたもので、大好評だった金言集パート1『不倫、それは峠の茶屋に似ている』に続く2作目です。
「連載は、2019年にスタートして、もう200回以上やっているのよね。自分でもびっくりです(笑)。
私があまり読者のことを考えずにズケズケしゃべっていると、担当編集者が『一条先生、うちの読者は打たれ弱いので、もう少し柔らかく…』って言うので、これでも優しく言っているつもりなんだけど。
みんなが見て見ぬふりしている弱いところにグッサリ刺さっているらしくてうれしいわ、すごく痛がってもらえて(笑)」
「たるんだ心に一喝!」というサブタイトルのとおり、本書には「幸せのすぐ後ろには、つねに『不幸さん』が出番待ちしてる」「機嫌をとらないといけない男は、たいしたことがない男」など、クスっと笑えてドキッとさせる数々の名言が収録。
漫画作品にも通底する「自分の足で立ってこその人生」という一条イズム満載の書です。
「自分で言ったことをすっかり忘れてるので、読み返しても『そのとおり!』って。私、いいこと言っているなぁと思います(笑)。
人の話を聞いていると、うじうじといつまでも悩んでいる人が多いのよね。そして誰かに背中を押されたがっているの。この本がそういう人のカンフル剤になればいいなと思っていますが! 私はちょっと背中を押しただけで決めたのは自分なんだから、結果が悪くっても私のせいにしないでね」
一方、塗り絵は『デザイナー』『有閑倶楽部』『プライド』といった代表作の扉絵や、ふろくのカレンダー用に描いたイラストなどカラー原画20枚に加えて、それらの塗り絵を20枚、計40枚のポストカードBOOK。
美しいイラストにうっとりしたり、塗って楽しんだりと、ファンにはたまらない一冊に。
「昔からのファンの人も楽しめるように古い作品を入れたり、『こんな絵も描けますよ~』というところをお見せするためにタイプの違う絵を入れたり、バランスよく選びました。
自分の描きたいものと画力が合ってきたのが、『デザイナー』の頃だったと思う。このストーリーにはどんな絵が必要なんだろうと考えながらガンガン描いていると、絵が勝手にうまくなるんですよね。
色鉛筆で塗るのがおすすめだけど、顔なんかは、自分にメイクアップするつもりで描くといいですね。メイクアップアーティストの人は、うまいんじゃないかな。影がどこにできるか知っているから。
だから光がどこから来るか考えて、影になるところを意識すると立体的になると思います。
それと、たまに絵を離して見ることですね。画家のモネは、睡蓮の絵を描くとき、ちょっと描くとダーっと遠くに行って見ていたらしいんだけど、近くでばかり見ているとバランスが悪くなるから、ときどき顔から離して、全体を見るようにするといいと思います。
といっても、実は私、塗り絵ってやったことないのよ。小さい頃から自分で絵を描いてたから(笑)」
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それにしても今見てもおしゃれで華やかなイラストには驚くばかり。年月を経てもまったく古びません。
「ただ、『りぼん』でデビューした頃は、本当にまだ絵が下手だったし、ストーリーの組み立て方もわかってなくて。それがいきなり売れちゃったから『これはヤバい!』って焦りましたね。
ギターのコードを3つか4つしか知らないのに、急に曲が大ヒットしたフォークシンガーみたいな感じで、実力もないのに注目されちゃったから」
デビュー当時は、「漫画家になるために必要な『私だけの個性』はほとんど持っていなかった。唯一、私が持っていたのは、『時代感』だったんだと思う」と振り返ります。
「昔、山口百恵が『時代と寝た女』と言われていたけれど、それに似たものが私にもあったんだろうなと。
それまでの少女漫画といえば、男が思う理想の女が主人公だったから、男のためなら耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍びっていう感じだったけれど、女性解放運動があって、女子が少し自由になってきた時代だったから、自立した女の主人公が求められていたのよね。
だから私の漫画では、女は男を殴るけど、男は女を殴らないの。『女だって男を殴ってやりたい時がある』っていうような女たちの気持ちを私が知らないうちに代弁できたから受けたんじゃないかと思う」
ただこうした「時代感」は、年月とともに失われていってしまうもの。ところが一条先生は、その時代時代を代表するようなヒット作を生み続けてきました。
「長く描いている漫画家さんって、気がつくと時代から取り残されて、“今”を描けなくなるんですね。それで時代ものやSFを描くようになるんだけれど、私はずっと今の時代を描いてきた。自分が一番自分で『偉いぞ! よくやったな』と思うところは、そこですね」
“今”を描くために心がけてきたのは、「若者と遊ぶこと」!
「そうすると若い人から悩みとかを聞かされるので、今どきの恋愛事情もわかるし、彼らの考え方もよくわかる。そうやって時代の空気を吸ってきたから、今の話が描き続けられたんだと思う」
こうしてトップランナーとして、長年に渡り、少女漫画界を牽引してきた一条先生。その作品が持つパワーは、今も色褪せることなく輝き続けています。
今回、発売された金言集では一条作品を彩る力強い女性たちの生き様を、そして塗り絵ではいつまでも瑞々しさを放つイラストを存分に楽しめるはずです!!
(一条先生の大忙しなプライベートと、美と健康についてのインタビュー後編はコチラ)
電子書籍限定
『男で受けた傷を食べ物で癒すとデブが残る たるんだ心に一喝!! 一条ゆかりの金言集2』
著者:一条ゆかり(集英社 1,760円)
描き下ろしショート漫画「その後の有閑倶楽部」も収録された大好評エッセイ「不倫、それは峠の茶屋に似ている たるんだ心に一喝!! 一条ゆかりの金言集」に続く第2弾。Success(成功)、Love(恋愛)、Happy(幸福)…迷えるあなたに贈る、一条流7章の“人生を楽しむエッセンス”。詳しくはコチラ。
『一条ゆかりポストカードBOOK 塗り絵俱楽部』
著者:一条ゆかり(集英社 1,980円)
一条先生本人が選んだカラー原画20枚と、それを丁寧に再現した塗り絵が20枚。計40枚のポストカードを、ミシン目で切り離せる形で収録。それぞれの制作秘話を語る口絵4ページも付いています。詳しくはコチラ。