いつまでも色褪せない作品同様、75歳となった現在も若々しく、バイタリティあふれる一条ゆかり先生。
漫画の仕事は第一線を退いていますが、そのプライベートは、何やら大忙し。
もう年だからと諦めない、美と健康へのあくなき追及が、一条先生を今なお前進させています。
(「女は男を殴るけど、男は女を殴らない」一条先生の作品が、いつまでも色褪せない理由を語ったインタビュー前編はコチラ)
撮影/富田一也 取材・文/佐藤裕美
一条ゆかりさん
Profile
いちじょう・ゆかり●1949 年9月19日、岡山県生まれ。1967年第1 回りぼん新人漫画賞準入選、1968 年「雪のセレナーデ」でデビュー。代表作に「デザイナー」「砂の城」「有閑倶楽部」「プライド」など。1986 年「有閑倶楽部」で第10回講談社漫画賞少女部門受賞。2007 年「プライド」で第11回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞。
日々の楽しみは創意工夫と実験!?
藤本典子さんは予想外に地味だった
長期に渡る漫画連載は、2010年、大ヒット作『プライド』を最後に終了し、現在は執筆活動とプライベートライフを楽しんでいる一条先生。
「漫画を描くのを辞めた理由はいろいろあって、まずは体の問題ですね。
緑内障や腱鞘炎が悪化して、体が悲鳴を上げていたこと。それからまだ動けるうちに『一条ゆかり』を横に置いて、『藤本典子』(一条先生の本名)にご褒美をあげたかったんです。
これまでずっと一条ゆかりの奴隷だったけれど、その足かせをはずして、藤本さんに『よくやった』と、自由にさせてあげたったの」
かくして悠々自適な生活を送っていたのですが、「予想外に藤本さんが地味過ぎた(笑)」と笑います。
「仕事をやめれば、一条ゆかりがしぼんで、藤本典子が勝手に大きくなると思ったんだけど、やっていることがケチ臭いのよ。
真っ白なお皿にマニキュアで絵付けしたり、バカラのグラスの箱でティッシュボックスを作ったり(笑)。藤本さんは見るものすべてを自分好みにカスタマイズせずにはいられない体質だったの。しかもなまじ器用なもので、かわいくできちゃうから世界にひとつしかない 私だけのものを作りまくってます。
子どもの頃、すごく貧乏なうえに6人兄弟で生存競争が激しかったら、『これは私のもの!』ってマーキングする必要があったんだけど、これってその名残だと思う(笑)。
今はお金があるんだから、『買えよ、自分』って感じよね。本当に人から見たら、『何やってんの、あの人』って思うだろうけど、今の私にとってはそれが小さな幸せだったりして。
いや~、藤本さん、やってることが小さい(笑)」
漫画界のレジェンドという華々しさから一転、創意工夫と実験が日々の楽しみに。美容と健康に関してもその精神が反映されています。
「食べ物は、タンパク質をたくさんとるようにしています。パンも自分で作ってるんだけど、小麦粉の他に、きな粉、豆乳、卵などタンパク質を豊富にして、これにくるみや屋上で育てたブルーベリーを入れたりして。
ご飯は、最近、発酵玄米にしています。試しに食べたら、うんちがするりんと出たので、やっぱりすごい効果があるんだなと思いました。ダイエットしている人にもおすすめですね。
それとたいていは自炊なんだけど、週に2回は、ランチでお魚定食を食べるようにしています。魚に含まれてるDHAは、動脈硬化を予防する働きがあるから大事よね。
お魚定食の日は『あの店も行きたいけど、こっちの店のも食べたいし』って死ぬほど悩みます。何を食べるかが、ほとんど生きがいになっているような…。まさに食べるために生きているような私の人生…(笑)」
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また化粧品も自分で作ってしまうというからすごい!
「ニベアのクリームと馬油をミックスして練って、ビタミンCを入れて自分好みの濃度にした美容クリームを作ったり、米ぬかを発酵させて発酵化粧水や麹水を作っております。
最近、いいなと思っているのは、これは自家製ではないんだけど、ユンスというブランドの美容液。純度100パーセントの生レチノールが入っているという優れもので、なかなか肌の調子がいいのよ。
だけどね、遺伝子セラピーというのをやったら、抗酸化物質とビタミンCが圧倒的に足りないって結果がでてショック。毎日水素を1時間吸ってるし、Cのサプリも飲んでるのにィ。
銅とビタミンC、ビタミンD3が足りないらしく、とりあえず毎日ビタミンCは3000飲んでます! もう大変よ。
ちなみに原因は、老化と脳疲労とストレスだって。心当たりがありすぎで文句が言えませんわ」
普段はすっぴんという一条先生の美肌は、飽くなき探求心ゆえのたまものなのでした。
「ビタミンDもちゃんと飲んでるから骨密度は問題なし、ホリエモンが飲んでいるという老化防止サプリNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)っていうクソ高いサプリも飲んでます。
私はよく人から、『いいですね、体が丈夫で』とか、『たくさん食べても太らない体質で』とか、まるで生まれつきのように言われるけど、私がどれだけ、健康と美容とダイエットにお金と時間を費やしていることか知ってほしい!! (笑)」
仕事をやめて“隠居”どころか、現役感バリバリ。
ほかにもリビングに取り付けたバレエのバーを使ってストレッチしたり、お風呂にエプソムソルトを入れて血行を良くしたり。さらに頭の体操のために韓国語を習うなど、毎日が活気にあふれています。
「韓国語は中断していた時期もあったけれど10年くらい続けていて、今は週に1回、先生に家に来てもらっています。
単語を覚えるのは苦手だし、韓国ドラマも観ないから、さっぱり上達しないんだけど、人間の脳って、まったくストレスがないと劣化するらしいの。『キーッ! この単語、知らんがな』ってくらい適度にストレスがかかったほうが脳トレになるんじゃないかと思うの」
とはいえ、「最近はストレスが多すぎて」と嘆く場面も。
「ここ数年はOurAgeのせいで、余計な仕事をさせられるから大変なのよ。
『不倫、それは峠の茶屋に似ている』(金言集パート1)では、うっかり『有閑倶楽部』のその後を漫画で描いちゃったし、今回も塗り絵ブックの絵の修正で朝まで作業したり…。
早寝早起きの規則正しい生活が夢だったのに、一条ゆかりがさっぱり休ませてくれないの(笑)」
そう言いながらも、あれもこれもと前向きにトライする一条先生。衰えないバイタリティこそ、若さの秘訣なのでしょう。
そういえば、OurAge読者の多くが悩んでいる更年期の頃はどうだったんでしょうか? さすがの一条先生も大変だったのでは!?
「知らない。更年期、これからなんじゃない?(笑)」
「青春は飴のように伸びる」という一条先生の名言がありますが、まさにそれを実践しているご本人なのでした。
電子書籍限定
『男で受けた傷を食べ物で癒すとデブが残る たるんだ心に一喝!! 一条ゆかりの金言集2』
著者:一条ゆかり(集英社 1,760円)
描き下ろしショート漫画「その後の有閑倶楽部」も収録された大好評エッセイ「不倫、それは峠の茶屋に似ている たるんだ心に一喝!! 一条ゆかりの金言集」に続く第2弾。Success(成功)、Love(恋愛)、Happy(幸福)…迷えるあなたに贈る、一条流7章の“人生を楽しむエッセンス”。詳しくはコチラ。
『一条ゆかりポストカードBOOK 塗り絵俱楽部』
著者:一条ゆかり(集英社 1,980円)
一条先生本人が選んだカラー原画20枚と、それを丁寧に再現した塗り絵が20枚。計40枚のポストカードを、ミシン目で切り離せる形で収録。それぞれの制作秘話を語る口絵4ページも付いています。詳しくはコチラ。