- 「ひとりで大丈夫?」という言葉にショック! ひとり旅再開のきっかけに
人気連載『鍋・保存袋・ボウル1つで簡単!ONEレシピ 』でもおなじみ、料理家・エッセイストとして、OurAge世代女性の気持ちに寄り添いながら、いつも新たな視点を提案してくれる山脇りこさん。特にひとり旅にまつわる著書は、大きな支持を集めています。あらためて、山脇さんがひとり旅を始めたきっかけとは?

「20代前半まではひとり旅もしていたのですが、結婚してからはなかなかできていなかったんです。49歳のときに、台湾で台南通の方のグループ旅に誘われて参加したことが、ひとり旅再開のきっかけに。旅行中、私がひとりでホテルに帰ることになったときに、その旅のリーダー的存在の方に『ひとりで大丈夫?』と聞かれたんです。
これが結構ショックで。ひとりでホテルに帰れるかもあやしまれるぐらいに、私って頼りないんだなと。そんなふうに見られるのは本意じゃないし、できることなら、ひとりでも大丈夫だと思われたいな、と。ひとり旅がしたい、というよりは、旅を含めて、いろいろなことをひとりでできる人でありたいと思ったことが、大きいのかもしれません」
決してひとり行動が好きなわけではない、と山脇さん。結婚してからのこの数十年は、旅好きの夫と一緒に出かけることが大半だったと言います。

夫はひとり行動はなくてもいいと思ったらしいのですが、私はひとり時間は全集中していろいろ見たり感じたりして、それを報告する楽しみもあるから〝ふたり旅でひとり旅〟もいいな、と発見しました。最初から最後までひとりだと不安だったら、こんなふうに誰かと行く旅行で、まずは短時間から、ひとり旅にチャレンジしてもいいかもしれません」
自分とじっくり向き合うひとり旅で、ごきげん貯金がいっぱいになる
年齢を重ねると、日常から離れた環境にストレスを感じたり、新たなことへの挑戦が億劫になったりしがち。見知らぬ場所を訪れる旅なら、なおさらそう感じることも。

でも、いざ行ってみると楽しさも不安も、すべてが気持ちの財産になるんですね。『ごきげん貯金』がどんどん貯まっていく感じがするんです。何かひとつのことに対する感想も、誰かと一緒だと、相手の感想か自分の感想かわからなくなってしまうことがあるのですが、ひとりだから自分の思いに集中できる。『私とふたりで歩いている』ような、自分自身とじっくり向き合う感覚が心地いいんです」

『ごきげんひとり旅』を始めとする旅のエッセイには、その場その場で山脇さんが見たこと、聞いたこと、感じたことが、臨場感たっぷりに綴られています。旅先で日記やメモなどを記しているのでしょうか?
「手書きでメモすることもたまにはあるのですが、大体は、スマートフォンの音声入力でメモを残しています。記録しておきたいことがあったら、スマホに向かってブツブツと話しかけています。京都でも、鴨川を歩きながら感じたことをスマホに話したり、今回の新刊のあとがきに入れた東福寺の庭師のお話も、このメモに残していました。音声からの変換なので、入力の正確さを欠くこともあるのですが、できるだけ思ったときにすぐ残すようにしています」
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機嫌が悪くなったとき、へこんだときにふと見返す旅の写真たち
また、旅先では写真もたくさん撮るのだそう。

「あとから本をまとめるときに、写真を見返すのはもちろんですが、そのためっていうより、自分の気分が上がるリストみたいな感じかな。機嫌が悪いときや、へこんだときに、ふと移動のバスの中などで旅の写真を見返すと、ちょっと元気が出る、楽しくなれるんです。特に、一番多く訪れている京都の写真は見返すことが多いです」
次回は、新刊『歩いて旅する、ひとり京都』のテーマであり、山脇さんがこれまでに200回以上(!)訪れているという京都について、深掘りしてお話を伺います。
『歩いて旅する、ひとり京都』
山脇りこ著 1430円(税込)/集英社

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山脇りこ
やまわき りこ●料理家としてテレビ番組、新聞、雑誌、WEBなどで、旬を大切にしたシンプルな手順で作りやすいレシピを提案している。『いとしの自家製』(ぴあ)、『明日から、料理上手』(小学館)など著書多数。台湾好きでも知られ、旅のガイドブック『食べて笑って歩いて好きになる 大人のごほうび台湾』(ぴあ)など台湾三部作もある。文筆家としても活躍の場を広げ、ひとり旅の楽しさを綴った『50歳からのごきげんひとり旅』(大和書房)がベストセラーに。近著に、もうすぐ還暦を迎える著者が、60代をごきげんにすごすための準備や心構えを書き下ろした『ころんで、笑って、還暦じたく』(ぴあ)がある。Our Ageで『鍋・保存袋・ボウル1つで簡単!ONEレシピ 』を好評連載中。
撮影/菅原有希子 取材・文/野々山幸


