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これまでに200回以上訪れた! 山脇りこさんがすすめる、ひとりでも行きやすい京都旅【新刊『歩いて旅する、ひとり京都』インタビュー】

ベストセラーとなった著書『50歳からのごきげんひとり旅』に続く旅エッセイ『歩いて旅する、ひとり京都』が発売されたばかり。新鮮でありながら共感を呼ぶ、山脇りこさん流のひとり旅の極意とは? 後編では、新刊のテーマでもある京都の楽しみ方や、ひとりでも入りやすいお店の選び方などを教えてもらいました。

京都を歩く旅は、頭がすっきりと整理されて心に効く

前回、「気持ちがへこんだときに、京都の写真を見返すことが多い」と話していた山脇さん。これまでに200回以上(!)訪れているそうですが、40代後半で久々にひとり旅をしたときに選んだ場所も、京都だったと言います。

「当時、私の母の具合が悪くなり、実家がある長崎に時間を見つけては帰省していました。おりしも私は更年期真っ只中でいつも機嫌が悪く、つらそうな母のそばにいても何もしてあげられず、さらに暗い気持ちに。行き詰まっていたときに、長崎から東京に戻らず、途中で京都に寄ってみることにしました。

 

実に25年ぶりのひとり旅でした。行ってみると、歩くだけで気持ちが満たされて、ネガティブスパイラルから脱出するきっかけになったんです。ただひとりで歩いていただけで、救われた気がしました。それからは、何度もひとりで京都を訪れて、歩いて心の充電をすることが定番に」

見どころが多い京都の中でも、おすすめは「歩いてまわる京都」

「京都はお寺などの観光地が多いので、目当ての場所を『点』で巡りがち。それももちろんいいのですが、私の場合は、行きたい場所は1か所か2か所で、『線』を歩く旅をしています。京都は歩くだけでも新しい発見があって楽しい。今回の『歩いて旅する、ひとり京都』では、例えば三条通を端から端まで歩き、見つけたこと、気づいたことなどを綴っています。鴨川を上から下まで歩いてみたり。

歩く旅の楽しさはもちろん、歩くことの効用も実感しているのだとか。

「歩くというと、特に年齢を重ねてからは健康にいいとか、死ぬまで歩きたいから散歩する、と思いますよね、私もそれもあるのですが、もっと感じている効能があって、私は歩くと頭がすっきりして、心が楽になるなと思っているんです。ある本で読んだのですが、歩くとセロトニンというごきげんになるホルモンが、分泌されるらしいんです。

 

歩くことって気持ちに効くみたいなんですよ。私も実感しています。旅先だと2万歩ぐらい歩くのですが、歩きながら頭の中が整理されて、仕事で行き詰まっている案件があったら、解決までの段取りが見えてきたり。仕事だけでなく、母のことや、夫とのことなど、ひとりで歩いていると、普段自分の中で気になっていることを考えるんですよね。歩きながら考えていると、優先順位が見えてきたり、これは大したことじゃないなと思えたり」

ある時は、忙しくてご無沙汰していて気になっていた友達のことを思って、友達は1日にしてならずだと、京都からハガキを送ったこともありました。ささやかなことだとしても、歩くことの心へのプラス効果って確かにある。今回の本では、大阪も、大津も、明石も、歩いてまわっています。」

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ひとりごはんが苦手だからこそ、厳選した入りやすいお店を著書で紹介

また、京都旅の醍醐味といえば「食」ですが……実は、山脇さんはお店でのひとりごはんが苦手なのだそう! なかなかお店に足を踏み入れることができず、建物のまわりを3周ほどぐるぐるとして、様子を伺うなんてことも。

「私がよく一緒に仕事をさせてもらっている都会で働く女性たちは、ひとりごはんが平気だという人が多いんです。でも、それはマイノリティだと思うんですよね(笑)。私は、ひとりで寿司店に行くのも、大いなる挑戦!行ってみたいと思ってから2年以上かかりました。この本の中で、勇気を出して初めて行ったひとり寿司についても書いています。

 

本の中では、そんなひとりごはんが苦手な私が入りやすいな、心地よいな、と思ったお店のご紹介もしています。カウンターがあって、緊張感なくリラックスして過ごせるお店や、女性がひとりでやっている優しいお味の料理の店など、ひとり京都旅の参考にしてもらえたらうれしいです。大阪の、推し店も書いていますので」

好きなものをテイクアウトして、ホテルで食べたっていい

『歩いて旅する、ひとり京都』の中では、京都ならではのおいしいテイクアウトのお店も紹介されています。

 

ひとりごはんのハードルが高ければ、テイクアウトしてホテルで食べるのも旅の楽しみです。私は、おいしい和菓子を朝ごはん用に買っておいたり、朝のランニングや散歩の帰りに朝からやっているおパン屋さんによったり。おいしい精進のお弁当も京都ならではです。

 

あらためて、食を愛する山脇さんが考えるいいお店選びのポイントとは?

 

母がよく言っていたのですが、料理には作った人の手あとが出ると。うまく言えないのですが、食材の切り口や、盛り付け方などに〝手〟が見えるというのでしょうか。好感が持てると『手がきれいな料理』だと言っていたんです。高いとか安いとか、評判がいいとか悪いとかではなく、すごくパーソナルな部分でみんながそれぞれに感じていることなんじゃないかな。

 

その部分が自分の感覚と合うかどうかを、私は大切にしています。要するに、ああこの料理好きって思えるってことなのですけど。おいしいは十人十色なので。旅では、多くの場合、初めてのお店に行くことになるから、難しいですよねー。最後は店の前に立って感じる、直感を信じます

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晩秋は、出町柳から鞍馬山や比叡山に向かう叡山鉄道の旅がおすすめです

秋〜冬にかけてのだんだんと寒くなる季節には、こんな風流な歩く京都もイチ押しなのだそう。

「叡山鉄道が好きなんです。出町柳から鞍馬山や比叡山に向かう2両くらいのかわいい電車です。時々スペシャルな観光車両も走っています。車窓からの紅葉もきれいですし、寒くなって冬枯れしていく様子もいいんです。

 

一乗寺あたりで途中下車をして、美しい庭でなんとも落ち着く詩仙堂や、独立系でユニークな書店恵文社一乗寺店などまわることも。この辺りはインバウンドの方々もまだそんなにいらっしゃらず、静かで、暮らしがある京都を感じます。そしてまた電車に乗り、最後は比叡山を歩いて心が凪いでいく、そんなコースです」

 

『歩いて旅する、ひとり京都

山脇りこ著 1430円(税込)/集英社

何度も京都を訪れている著者が、京都をひとりで歩く旅を提案。ひとりごはんが苦手でも入りやすいお店や、安心して泊まれるホテルガイドなど、ひとり旅にやさしい情報が満載です。歩きながらその場その場で感じたこと、考えたことも臨場感たっぷりに綴られていて、読むだけでまるで京都を一緒に歩いているような気分に。京都から少し足をのばして、こちらも歩いてまわりたい大阪、滋賀、明石、城崎のおすすめスポットも紹介。

★書籍の詳細、ご購入はこちらから 

 

山脇りこ

やまわき りこ●料理家としてテレビ番組、新聞、雑誌、WEBなどで、旬を大切にしたシンプルな手順で作りやすいレシピを提案している。『いとしの自家製』(ぴあ)、『明日から、料理上手』(小学館)など著書多数。台湾好きでも知られ、旅のガイドブック『食べて笑って歩いて好きになる 大人のごほうび台湾』(ぴあ)など台湾三部作もある。文筆家としても活躍の場を広げ、ひとり旅の楽しさを綴った『50歳からのごきげんひとり旅』(大和書房)がベストセラーに。近著に、もうすぐ還暦を迎える著者が、60代をごきげんにすごすための準備や心構えを書き下ろした『ころんで、笑って、還暦じたく』(ぴあ)がある。Our Ageで『 』を好評連載中。

 

撮影/菅原有希子 取材・文/野々山幸

 

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