はじめまして。
断捨離トレーナーの大澤ゆう子です。
断捨離トレーナーとなって10年、今までおよそ3000人以上のおうちのお悩みに向き合ってきました。
その年代は、上は70代から下は40代まで。
「ウチは子どもと夫が散らかし放題。夫婦共働きですが、家事は私のワンオペ。片づける気力がわきません」「母が亡くなり実家を片づけたいけど、モノが多すぎて。それに残された父が何でもとっておきたがるので困っています」など、お悩みはそれぞれです。
その様子を見ていて感じるのは、よき妻、よき母、よき娘でありたい、いやそうであらねばという思いで、長年やってこられた人たちだということ。
♦断捨離は更年期世代にこそおすすめ
そのように家族第一でやってきた方にも、子どもの独立、パートナーの定年、親の死など人生の節目といえる出来事が訪れます。それがちょうど40代50代、つまりOurAge読者のみなさんの年代です。
そしてそこへ重なるようにやってくるのが更年期。
思わぬ心身の変化、不調に戸惑っている方もいらっしゃることと思います。
更年期の更という字には「かえる、かわる、入れかわる」という意味がある、ときいたことがあります。
だとすれば更年期は、人生をかえる、入れかえるとき。
断捨離は、人生を変えます。
モノとの関係性を自分に問い、モノを絞り込み、残したモノを手入れし活かしていくことで、それまで気づかなかったことに気づくようになり、結果、人生が変わるのです。
やってみればわかります。
まさに人生を変える断捨離は、人生を入れかえる時期「更年期」にぴったりなのです。
そこでこの連載では40代50代の方々に向け、私の家をモデルケースとして、断捨離の実践例をご紹介していこうと思います。
さっそくですが、我が家の様子をお見せします。
私が暮らしているのは、築30年の一軒家です。
[これが大澤さんのキッチン。どこもかしこもピカピカ!断捨離トレーナーとして活動するだけではなく、ハウスクリーニング会社の代理店(モップやマット等の交換やハウスクリーニング業務など)も営んでいる大澤さんは、掃除のプロ。「ガスコンロは数年前に買い換えましたが、ほかは家を建てたときのままです」〕
この家に越して10年ちょっとたったころ、夫が病で亡くなりました。
まだ40代はじめという若さでした。
夫亡き後、私は大手ハウスクリーニング会社の代理店を営みながら、二人の息子を育てました。
その息子たちも無事に巣立ち、現在は一人で暮しています。
〔きれいに磨き上げられ、神々しささへ感じるシンク。その日ごろのお手入れ法は、ずばり「水滴を拭き取る!それだけです」。また「洗いかごや三角コーナーは持っていません。食器や調理道具は洗ったら、ペーパータオルで水気を拭き取ってしまってしまいます。生ゴミも小さなポリ袋に捨て、つど処分。ゴミ箱も我が家は台所にあるものひとつだけです」〕
ハウスクリーニングの仕事はいまもやっており、それと並行して、断捨離トレーナーとしても活動。
自宅で月に2回ほど『断捨離&掃除の学校』という〝汚れの断捨離〟のレッスンをメインとした教室を開いています。
実はモノを片づけることだけが断捨離ではありません。
断捨離にはモノの断捨離と汚れの断捨離のふたつがあるのです。
モノの断捨離=モノを絞りこみ、棚にしまう。
モノが減り、床にモノを置きっぱなしにすることがなくなれば、動きやすくなります。
動きやすくなれば、掃除がしやすくなります。
汚れの断捨離=掃く、拭く、磨く。
いわば掃除のこと。モノについた汚れを落とす作業です。
このふたつはセット。
どちらか片方だけやればOKということではありません。
そういえば、この連載の打ち合せの際、私が「掃除」という言葉を口にしたら、担当編集者さんから「掃除という言葉が出てくると、その記事はウケません。掃除って仕方なくするもので、たのしいものではないから。年末の大掃除の時期以外は、掃除の記事はあまり読んでもらえないんです」と真っ先に言われ、驚きました。
確かに子どもの頃から親に「部屋が汚い、掃除をしなさい」と注意され、ときには「女の子なんだから、掃除くらいしなさい」と言われたり。掃除は〝やらなきゃいけないもの、やらされるもの〟で、〝積極的にやりたいもの〟ではないのかもしれません。
でも家は居場所であり、明日への活力を養う場所。
つまりあなたという大事な存在を入れる器です。
その器をきれいで、清々しく快適な場所にするには汚れの断捨離(掃く、拭く、磨く)は欠かせません。
♦汚れの断捨離がしやすい家とはモノが少なく、すっきりした家
汚れの断捨離をするために必要なのが、モノの断捨離なのです。
〔上の写真:簡単なランチならスツールに座って、キッチンの作業台で食べることも。「ここに座って食事をすると、ちょうど庭が眺められて気持ちがいいんです」。下の写真:これがキッチンから見た庭の光景。「あ、ゆずが今年も実ったとか、そろそろハナミズキが咲きそうとか……季節を感じられます」〕
〔上の写真:お気に入りのスツールは新潟の家具工房にオーダーしたもの。「お手入れは乾拭きするだけ。それでちゃんと艶が出てきます」。下の写真:磨き上げられたリビングの床は鏡のよう!「日中、この床に横になることも。日差しのぬくもりを感じながらゴロゴロするのは、最高ですよ」〕
面倒くさい
時間がない
疲れている
どうせ掃除してもまた汚れる
掃除をしたくない、しない人の言い訳はいろいろです。
中には「汚くったって、ホコリくらいで死ぬわけじゃない」という人も。
〔上の写真:食器棚はこれひとつのみ。下の写真:食器棚の中。上段にはガラスの器や白が基調の器を収納。カップ&ソーサーは自宅で開催している「断捨離&掃除の学校」の際、生徒さんにお茶を出すときにも活躍。東北や九州など全国から生徒さんが集まる「断捨離&掃除の学校」のお茶の時間は、ふだんは人にいえない本音がポロリと出たり、それをきいてみんなで励まし合ったりと大事な時間〕
死にはしなくても、汚れを放っておけば確実に健康を蝕みます。
たとえば現代の住宅環境は高断熱、高気密。
あたたくて、湿気やすいので、カビが生えやすい。
またそこにホコリが積もれば、ダニもわき、これらはアレルギーの一因となります。
(ちなみにあたたかくて湿気があり、ダニがいる場所は、ゴキブリが好む場所でもあります)
〔上の写真:食器棚の一番下には空っぽの空間が。これを見て、思わず「スペースがもったいない」と言った編集スタッフに「スペースがあるからとモノを入れる。だからモノが減らないんです」〕
アレルギーは症状となって体にあらわれるので可視化されますが、汚れが人に与える悪い影響は目に見えないことにも及んでいます。
それは心への影響です。
散らかりっぱなしで、汚れが放置された家に暮らし続けている人がとる行動は大きくふたつあります。
ひとつ目は「見て見ぬふりをする」。
そういう人は予定をたくさんつめこんで、なるべく家にいないようにしたり、何かに依存することで現実逃避します。
ふたつ目は「隠す」です。
たとえば窓を一年中締め切り、カーテンはひいたまま。
部屋や押し入れにモノを放り込み(隠し)、そのまま数年、ときには10年近くも放置したり。
でも見て見ぬふりをしようが、隠そうが、心の隅では「ああ、やだな」と感じているのです。
そしてそういった日々の小さな不快は、自己肯定感を下げたりイライラの原因になったりします。
〔小皿がたくさんあるのは「断捨離&掃除の学校」で生徒さんにお菓子を出すため。「大皿でお出しするより、1人分ずつ小皿に盛ってお出しするほうがおもてなしになるし、格も上がりませんか」〕
〔コーヒー豆や茶葉、ティーポットなどお茶の道具は一カ所にまとめて収納。5枚ある小さなトレイは、やはり「断捨離&掃除の学校」で生徒さんにお茶菓子を出すときのため〕
〔キッチンの床下収納には玄米と根菜、漬物が。「玄米は農家から取り寄せていて、ごはんを炊くときに、食べる分だけつどつど家で精米しています。漬物も自家製です。たくあん、白菜漬け、梅干し……季節ごとにいろいろ漬けます」〕
現実逃避や自己肯定感の低さだけではありません。
家にモノがあふれ、掃除ができていない人たちによく見られる傾向はまだあります。
未来への不安
過去への執着
被害者意識
他人への依存
強い孤独感
でも断捨離をやっていくうちに、こうした問題は解決できます。
【お話を伺った方】
1960年群馬県生まれ。断捨離提唱者やましたひでこさんのベストセラー「新・片付け術 断捨離」で断捨離を知り、2012年に第一期断捨離トレーナーとなる。長年、大手ハウスクリーニング会社の代理店を営んできた経験から人気テレビ番組「ウチ、断捨離しました!」(BSテレビ朝日)では〝ピカピカの魔術師〟としてたびたび登場。自宅では月2回、断捨離と掃除の基本などを教える「断捨離&掃除の学校」を開催、多くの断捨離と掃除の悩みに向き合っている
※断捨離はやましたひでこさんの登録商標です