家磨きは自分磨き。磨いた私も磨かれる
お金の観念を変えた断捨離。学ばなかったら家を買おうとは思わなかった
佐藤ひとみさん(53歳)
♦家磨きは自分磨き。磨いた私の気分がいい
断捨離を始めたのは、公営住宅に住んでいた47歳のときです。
育児が思うようにいかずモヤモヤを抱えていた当時の私は一切モノを捨てず、百均グッズを駆使してきっちり収納することに力を入れていたのですが、鬱屈した気持ちは積もるばかり…。なんとかしなきゃと思っていた矢先に出会ったのが断捨離でした。「モノが少なければ、頑張って片づけなくても片づいていく」という言葉に目からウロコが落ち、2年間猛勉強。2020年1月に認定を受け、断捨離トレーナーになりました。
大先輩である断捨離トレーナーの大澤ゆう子さんが「磨いた私も磨かれる」とよく口にされるのですが、本当にそのとおり。ステンレスのシンクをピカピカに磨いたところで、誰に褒められるわけでもありません。でも磨いた私の気分がいいんですよね。シャキッと背すじが伸びて、自分まできれいになったように思える。まさに家磨きは自分磨き。断捨離を実践している人たちが、みるみるあかぬけてきれいになっていくのは、必然なのだと思います。
「玄関の中と外の掃き掃除は毎日。隅に蜘蛛の巣を張られてしまうので、毎朝家族を見送ったあとにチェックしています」。靴箱の上や外側も毎日拭いているそう
♦お金はエネルギー。停滞ではなく循環させる
断捨離を始めていちばん変わったのは、お金に対する観念です。断捨離では「まず不要なモノを出す。出せば必要なモノが入ってくる」と考えるのですが、お金も同じ。これは無駄遣いせよという意味ではなく、「お金はエネルギーなので、停滞させず循環させたほうがいい。遣うべきときに遣うことで、よりよいものを手にできる」という考え方です。
●あえて左右に空間を空けインテリアとして見せる
インテリアとして際立つよう、チェストはあえて左右に空間を空け、壁の真ん中に置いて。部屋には姿見も置き、家族の更衣室ともいえる場所になっています
以前の私は、とにかく節約命。「お金は遣わずにとっておかなくてはいけない。遣わなければ手元に残る」と強く信じていました。それが「お金は遣うためにある」と思考が変わっていったのです。
●食器は最適量に!
家族3人分の食器と、この写真には写っていませんが、食器棚の左サイドにしまってあるケーキ皿などを含め、佐藤家にある食器はいたって少なめ。食器は空間に対して最適量。「ひとつの食器に何役も兼ねてもらうことが、食器を増やさないコツです」
夫から「家を買おうか」と相談されたのはその頃でした。それまでそんな話が出たことはなかったのに、おそらく私のマインドが変わったことで夫にも変化が表れたのだと思います。現在は手に入れた築30年のマンションをセミリフォームし、夫と8歳になる娘の3人でゆったりと暮らしています。ちなみに世帯年収はずっと変わっていません。変わったのはお金に対する観念だけです。
●「キッチン」の断捨離前後
娘が1歳だった頃の佐藤家のキッチン
断捨離を学び、トレーナー検定試験に合格したとき暮らしていた公営住宅
現在の住まいである、築30年のセミリフォームしたマンション
断捨離を学ばなかったら家を買おうとは思わず、今も公営住宅に住んでいたはず。また子育てに関しても心に余裕ができました。あのとき、断捨離に出会ってよかったとしみじみ感じています。
【お話を伺った方】
愛知県生まれ。短大卒業後、名古屋テレビ放送(現在の通称メーテレ)に入社。退職後上京し、船越英一郎率いる劇団に入団。13年間の東京生活を経て地元に戻る。42歳で結婚、45歳で娘を出産。「愛知豊田断捨離会」代表
※断捨離はやましたひでこさんの登録商標です
写真/本人提供 取材・原文/上田恵子