断捨離を経て、21年暮らした一軒家からマンションに引っ越し
断捨離で、自分にとって心地よくない感情も手放せるように
柳井尚子さん(58歳)
♦持ちモノを3割減らして生活をコンパクトに
もともと片づけは得意で、クローゼットや引き出しにモノを隙間なく収納しては、その整然とした状態に満足していました。一方で、モノの多さに使いたいモノがすぐに見つからず、「何か違う。きっと私のしまい方が悪いせいだ」と自分を責めることも。今思えば、あれは片づけではなく、単にモノを押し込んでいただけだったんですね。
その頃たまたま目にしたのが断捨離の動画でした。実践してみたところ家の中はすっきりし、探しモノに時間を取られることもなくなって。すると不思議なことに自分にも変化が起き、「今と違う暮らしを体験してみたい」と思うようになりました。
そんなとき、まるで計ったように、夫から「住み替えをしないか?」という提案が。当時、私たちが住んでいたのは、21年前に細部までこだわって建てた、床面積約100㎡の一軒家。娘たちとの思い出が詰まった家でしたが、なぜかそういう選択肢もあると素直に思えたんですよね。
その後、夫婦二人には広かった家を売却し、57歳のときに70㎡の新築マンションに引っ越し。家がコンパクトになった分、3割ほど持ちモノを減らしました。娘たちが独立したあとだったのも、ちょうどいいタイミングでした。
●棚に飾るものは気分で替えて
リビングの壁、床などの色はマンションのモデルルームを参考に。「飾り棚に置いたものが引き立つように、空間に余裕を持たせて飾っています」
私が断捨離から得た最も大きなものは、自分で考えて、決めて、動く。「自分軸で生きる」ということでした。
もちろんそれまでも、自分の考えで動いているつもりでいたんです。でも断捨離を学び、「本当にそうだったのかな。親は・妻は・子育てはこうあるべきというのは、親や世間からの刷り込みなのでは?」「言いたいことを言わずに我慢するのは正しいの?」等々と思うように。そもそも自分が日常的に我慢している自覚すらなかったことに、断捨離に出会って気づいたのです。
●「前の家と新居」の断捨離前後
嫁入り道具の婚礼簞笥は前の家に置いてきました。現在は、その家の新しい住人が使ってくれているそう。「新居にあるのはこの和簞笥だけ。リビングのインテリアは、まず簞笥の置き場所を決め、そこから家具の配置を考えました」
●「ダイニング」の断捨離前後
以前に比べ、シンプルかつモダンな雰囲気になったインテリア。新居のダイニングコーナーは、ルイスポールセンのペンダントライトがアクセントに。テーブルと椅子、ソファなどは冨士ファニチアのもの
♦心地よくない感情を自然に手放せるように
断捨離では何を捨てて何を残すか、自分で判断して決めていきます。ほかの誰でもない、「今の私」が使いたいモノを残すのです。そのプロセスを繰り返すうち、湧いてくる気持ちを受け入れ、心地よくない感情は手放せばいいと自然に思うようになりました。断捨離は住居を快適にするだけでなく、生きることをラクにする手段でもあると思います。
棚上段には亡き愛犬クララちゃんの写真。その下にある本のようなものは、選りすぐった家族写真のアルバム。写真をさらに減らすべく、現在も断捨離中です
【お話を伺った方】
大分県生まれ。22歳で保健師として大分市役所に入職。25歳で結婚、40歳まで専業主婦に。二女の子育てが一段落した40歳のとき仕事に復帰。働きながら学び、50歳のときには保育士の資格も取得。51歳で断捨離と出会い、53歳で断捨離トレーナーになる
※断捨離はやましたひでこさんの登録商標です
写真/本人提供 取材・原文/上田恵子