断りたいのに断れない、理不尽なことをされても言い返せない、本心は別なのについついまわりに合わせてしまう…。大人になっても、はっきりNOを言うのはけっこう難しいもの。そこで、子どもだけでなく大人にも人間関係の基本がわかると話題の絵本、『子どもを守る言葉 「同意」って何?』をテキストに、上手にNOを言うためのレッスン、開講です!
お話を伺ったのは
藤岡淳子さん
Junko Fujioka
大阪大学大学院名誉教授、もふもふネット代表、臨床心理士、公認心理師。非行や犯罪行動のある少年と成人の教育プログラムの実施や管理・監督などに力を注ぐ。『性暴力の理解と治療教育』(誠信書房)など著書多数
『子どもを守る言葉 「同意」って何? YES、NOは自分が決める!』
レイチェル・ブライアン 作
中井はるの 訳
世界中で大人気の動画『Tea Consent(お茶と同意)』のアニメーターである著者が「同意」の概念とともに、自分自身と相手を大切にする意義とハウツーを紹介する絵本。ポップなイラストとともに“人間関係”のABCがわかりやすく描かれ大人にも人気。
¥1,760/集英社
◆『子どもを守る言葉 「同意」って何? YES、NOは自分が決める!』詳細はこちら
上手にNOを言うにはレッスンが必要だったんだ!
けっこう長い年月を生きてきても、なかなか卒業できないのが、人間関係にまつわる悩みです。特に、ほかの人と自分の意見や考えが違うとき、相手に何かを押しつけられたとき、はっきり「NO!」と言えずに困ることは、いくつになっても起こるもの。読者アンケートによれば、そんな状況が「よくある、時々ある」と答えた人が7割以上に。なかには「いつもそれで悩んでいる」という人も。
読者アンケート
Q 本当はイヤなのに、NOと言えず、困ったこと・辛かったこと・苦しんだこと・悩んだことはありますか?
アンケート回答 Top5
NOと言えない相手は誰? その理由は?
誰に対して「NO」と言えない・言いにくいですか? (複数回答)
- 1 職場の上司・先輩……43%
- 2 職場の同僚……30%
- 3 自分の親……25%
- パートナー……25%
- 5 義理の親……16%
「NO」と言えない・言いにくいのはなぜですか? (複数回答)
- 1 相手を怒らせたり、機嫌を損ねるのが怖いから……59%
- 2 相手に悪い・傷つけたくないから……43%
- 3 こちらが弱い立場だから……40%
- 4 NOを言っても聞き入れてくれる相手ではないから……32%
- 5 みんなによい人だと思われたいから……16%
- 嫌われたくないから……16人%
相手で多かったのが職場関連。上下関係が明確なだけに断りにくいよう。理由を見ても、「怒らせるのが怖い」「こちらが弱い立場だから」など萎縮しすぎている節が伺えます。「NOを言っても聞き入れてくれる相手ではない」のは、親やパートナーなど家族が大半。NOを言わないのは長いバトルの末のあきらめ!?
人とのつき合い方をテーマにした、子どもも大人も学べる絵本
『子どもを守る言葉「同意」って何?』は、副題に「YES、NOは自分が決める!」とあるように「NO」を言う&聞きとる大切さがわかりやすく描かれていると、大人にも話題です。本の翻訳時に監修にかかわった心理学の専門家、藤岡淳子先生に、この本の軸となる考え方を詳しく伺いました。
「自分が望まないこと、イヤな要求に対して『NO』を言うのは、本来、その人が持つ当然の権利です。けれど、日本人の多くは自分の意見を言うのに慣れていませんよね。大昔から、農耕中心の社会で大勢で作業を行うなかで、波風立てないように自分の考えや想いを抑えてきた民族的風土があるからでしょう。それが今でも続いている気がします」
『子どもを守る言葉 「同意」って何?』の象徴的キャラクターは“キミ=「王」”。「キミは『キミ』という『世界にたったひとつだけの大切な国』の『王』なんだ」。この言葉、大人の私たちも改めて嚙み締め、胸に刻みたい!
NOと言いにくいシチュエーション4例
VS 仕事仲間
上司や先輩、同僚に業務以外の雑用や急な残業をけっこうな頻度で頼まれる。本当は断りたいけれど、立場が弱いので、ついYESと。
VS 友だち
ママ友主宰の幼児教室、お金がかかるし気が乗らないけれど、断ると機嫌を悪くされるので渋々参加しています(泣)。
VS パートナー
夫と意見が対立しても、表面上は従っている。反論すると怒るし、関係が悪化するだけだから。
VS 義母
同居する義母はとにかくワガママ。理不尽な言動に辟易しているけれど、NOを突きつけると“倍返し”の目に遭う。夫も義母の肩を持つのであきらめています。
上手にNOと言える人になる!
どうやら歴史的にも私たち日本人は、上手に「NO」を言うトレーニングをされてきていないよう。
「そもそも上手にNOを言うには、自己の確立や他者とのコミュニケーションのとり方など、さまざまな要素が求められます。この本に描かれていることが、まさにそれ。欧米では、幼い頃から家庭や学校で学んでいる内容ですが、残念ながら、日本ではほぼ行われていないのです。
とはいえ、今からでも大丈夫。この本で理解して練習を重ねるうちに、我慢したりモヤモヤをため込んだりせずに、自分の気持ちを上手に伝えられるようになりますよ」
次回はそのレッスンの具体的な方法をご紹介します。
イラスト/©レイチェル・ブライアン(『子どもを守る言葉「同意」って何?』より) 構成・原文/村上早苗