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【樫出恒代さんに相談!】花粉症の症状を抑えるには、とにかく「免疫力を上げる」ことが正解?

免疫力は上がれば上がるほどいい、と信じていませんか?「でもそれは間違った思い込みなんです」とは、漢方ライフクリエーターの樫出恒代さん。「漢方では、上がり過ぎでも下がり過ぎでもない“中庸”の状態を理想とします」とのこと。では、その中庸の状態にある目安とは? OurAge世代向きのセルフチェックを伺いました。

 

 

 

樫出恒代(かしで ひさよ)
漢方薬剤師・漢方ライフクリエーター。漢方カウンセリングルームKaon代表。Kaon漢方アカデミー代表。新潟薬科大学薬学部卒業後、一人ひとりのこころとからだにていねいに向き合う漢方カウンセリングを提唱。連載「女性のための漢方救急箱」の味わいあるイラストは、本人によるもの。美容家・吉川千明氏との共著に「内側からキレイを引き出す 美肌漢方塾」(小学館)

 

 

<悩み>

花粉症やアレルギーがあるので、免疫力を上げること、食事ではカロリーを抑える事を意識しています。できるだけ症状が軽くなるよう、免疫力を上げていきたいのですが、漢方の観点では具体的に、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。(48歳・会社員)

 

<回答>

免疫は「上げる」「下げる」ではなく、正常に働いているかどうかが大切です。

 

免疫が上がりすぎると、アレルギーにつながることも

 

いただいた内容から気になったのは、短い文面の中に、「免疫を上げる」というキーワードが二度も登場している点です。ここに相談者さんの誤解を感じたので、まずそこからお話をさせてくださいね。

 

実は漢方的観点では「免疫は上がりすぎると、アレルギーの原因になりやすい」と考えられています。上がり過ぎも下がり過ぎも、どちらかに偏った体の状態は、病気を作り出してしまう、ということ。そのため漢方では、偏りのない中庸の状態を理想としているのです。

 

免疫力が上がり過ぎているとき、人の体は異物をより敏感に察知します。花粉やハウスダストなどにも敏感に反応するので、鼻水や皮膚のかゆみなどで、それらを出そうとするしくみが働きます。反対に免疫が下がり過ぎている時は、風邪を引きやすくなります。熱が出るのは、ウィルスを体の外に出そうとしているためです。

 

つまり、免疫はただ上げればいい、というものではありません。無理に上げても、その人本来の免疫力のバランスが崩れてしまえば、健康とは言えない状態になるからです。

セルフチェックでわかる!
あなたの免疫力は正常に働いていますか?

 

私はクライアントに対しても、免疫を上げようとか、下げようといった表現をすることはなく、いつも「自分の免疫を正常に働かせていきましょう」という伝え方をしています。免疫が正常に働いている状態とは、それぞれの人が本来持っている、自然治癒力がしっかりと働いているということ。漢方では、この自然治癒力の働きがとても重要だと考えられています。

 

では、自分の体の免疫力は正常に働いているのかどうか? それは、次の簡単なセルフチェックからでもわかります。

 

1.暑がり、または冷えている

樫出さん 冷え

 

暑がりでも寒がりでも、それは体の免疫がどちらかに偏っているサインです。相談者さんの48歳という年齢から考えると、更年期によるほてりやホットフラッシュ、手足の冷えなどのあるなしは、ご自身でも感じやすいのではないでしょうか?

 

漢方的な観点では、花粉症やアレルギーを持つ人ほど、体が冷えていることが多くあります。体内に溜まった余分な水分は、本来は汗や尿で排出されるのが理想。ですが、冷えがあることで免疫機能が正常に働かなくなるため、鼻水で出てしまう…というわけです。体が温まると物理的に鼻水も減るので、足湯、背中に湯たんぽを当てるなどのセルフケアはおすすめですよ。

 

2.夜中に目が覚める

 

免疫力が正常に働いている状態は、自律神経が整っている、と言い換えることもできます。45〜48歳頃(相談者さんの年齢)から増えてくる自律神経の乱れとして多い不調は、睡眠の質の低下。トイレで起きるなども含め、睡眠中に中途覚醒があり、朝まで眠り続けることができない場合は、免疫力も正常に働いていない可能性が大。朝すっきり起きられているか、夜はちゃんと眠くなるかどうかも、合わせて振り返ってみてください。

 

OurAge世代であれば、7時間以上の連続した睡眠を取ることが、正常な免疫の観点からも理想です。そのためには、食事は寝る3時間前に終わらせておく、寝る前にスマホやパソコンの強い光を浴びないなどを意識的に心がけていきましょう。

 

3.朝はお腹が空かない

 

朝食時が最も空腹であること=免疫力の状態も中庸であるといわれています(漢方的に考えて三食の理想の割合は、全体を100とすると朝食50昼食30夜20)。漢方の観点では、体の真ん中にある胃腸がちゃんと働いているかどうかをとても重視するからです。「朝は食べたいと思わない」「食欲がない」「何を食べてもおいしく感じない」という状態は、免疫のバランスが狂っているサインといえるでしょう。

 

お腹も空いて、胃腸がしっかりと活動し始めるには、朝一番に白湯を飲むのもおすすめです。胃腸の温度(38度)よりプラス5〜10度ぐらい、45〜48度ぐらいの白湯は体に負担をかけずに働いてくれます。

 

4.不安が多い

樫出さん 不安イラスト

免疫力を司る自律神経は、漢方でいう「気」の流れにも大きく左右されます。例えば、つねにいろいろな不安を抱えている人も、免疫力は狂いがちです。相談者さんのように更年期に当てはまる年齢の人は、責任世代でもありますよね。子どもや親、パートナーなど、自分以外の身近な人のトピックも増え、その分心が揺らいでしまう場面も多いことでしょう。

 

そのような具体的なお悩みは書かれてはいませんが、自分が嫌だなと思ったことは最低限しないなど、心の負荷はなるべく減らしておきましょう。漢方では、未来の不安や過去の後悔にとらわれず、「今を生きる」という心持ちが、中庸につながると考えるからです。


乱れた生活習慣は、「3日のワルツ」で取り戻す

 

どの項目もすべて、シンプルなことばかりですよね。ですが、これは何も漢方だけに限りません。要は当たり前の健康とは、結局ここに挙げたような生活習慣の積み重ねに尽きるのです。

 

食べすぎたり夜ふかししたり、どうしても正しい習慣を守れない日もあるでしょう。そういう時のリカバリーとして私が提案したいのは、「3日のワルツ」という考え方です。外食が2日続いたら、3日目は自炊する。前日の夜にドラマのイッキ見をしたら、翌日はなるべく早く寝る、などです。

 

少しくらい無理をしても、ひと晩寝て起きれば復活できた若い頃とは違い、40代、50代は3日のうちには、自分のリズムを取り戻してください。そうすることで免疫も体調もバランスが狂うことなく、自分らしいリズムに整えていけるのではないでしょうか。

 

漢方カウンセリング、その方に合った漢方薬の服用もおすすめです.

 

 

取材・文/井尾淳子

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