2025年2月、惜しまれつつも建て替えのために休館した「帝国劇場」。1911年の開場以来、多くの名作が上演され、日本演劇界を育てて来た場所といっても過言ではない、文化の象徴のような劇場です。
舞台に立った出演者の方にとっても、来場者にとっても「特別な場所」であった帝劇との最後のお別れの場となるのが、銀座三越で開催されている、この『帝国劇場展』です。
アンバサダーは、井上芳雄さんと森公美子さん
この展覧会のアンバサダーには、ミュージカル界のプリンスとして知られる井上芳雄さんと、初帝劇はアンサンブルとしての出演、それから41年間舞台に立ち続けて来られた、森公美子さんが就任されました。
3月27日(木)のプレスイベントには、お二人も登場。
意外にも共演経験が無いというお二人が、帝劇での思い出や、展覧会の魅力などを紹介してくれました。
森公美子さん「3列目の端で迎えた初舞台」の思い出
初舞台は、1984年『屋根の上のバイオリン弾き』にアンサンブルとして出演。その時は、舞台上の並び順も3列目の端だったそう。
それから2列目、1列目の端と出世(?)していき、2014年『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』の主役・デロリス役で、とうとう「0番」(センター)に立てたと振り返っていました。
井上芳雄さん「務めることに精一杯だった、ルドルフ役」の思い出
井上さんの初舞台は2000年6月『エリザベート』のルドルフ役。いきなりシングルキャストで、3カ月のロングラン。務めることに精一杯で余裕もなかった、と思い出を語りました。
お二人の熱弁を聞いていると、出演する役者のみなさんにとって「帝劇に立つ」「帝劇の0番(センター)に立つ」ということが、どれほど大きなことなのか、帝劇という劇場の偉大さを改めて感じられる気がします。
一方、スタッフの皆さんを含め、裏側はとてもアットホームなんだそう。炊き出しを全員で食べたり、誰も“偉い人”がいなくて、関わっている全員が全員に「よろしくお願いします」と言うのが普通。ファミリーで作品を作っているという感覚がとても温かいのだとか。
役柄で敵対している人同士が、大抵は仲良しという楽しいエピソードも披露してくれました。
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気になる展示物をご紹介
会場に入ってすぐの場所には、「帝国劇場の年表」や初代帝国劇場の屋上にあった「翁の面」の装飾、『放浪記』他、多くの作品を手掛けた菊田一夫氏の帝国劇場への思いなど、帝国劇場の歴史をパネルと展示物で知ることができます。
ミュージカルの衣装!
井上さんと森さんの後ろにあるのは、ミュージカル『マイ・フェア・レディ』でイライザ役の大地真央さんが着た衣装。その右には『風と共に去りぬ』のスカーレット役、米倉涼子さんの衣装もあります。
他にも『エリザベート』や『ローマの休日』、『ラ・マンチャの男』などの衣装もあって、ファンならずとも見ごたえのある展示になっています。
うれしいバックヤードの再現展示!
普段見ることのできない、出演者用のスペースが再現されています。
こちらが、「座長が使用する5-1楽屋」。
森さんが「驚くほど、忠実に再現されている」とおっしゃっていました。
好きな俳優の方もきっと座ったかもーと、思いをはせながらソファーに座ってみるもよし、主役の気分で鏡の前で記念撮影するのもよし、特別な体験ができるスペースとなっています。
さらに、貴賓室の再現展示もあります。
モニターには「帝劇キャストのインタビューなどの秘蔵映像」が映されるので、尊い方たちの座ったソファーでそれを見て楽しむことができます。
この写真右の椅子は、稽古場で使われていたもの。
「もともとは東京宝塚劇場の貴賓室で使われていたもの。それが古くなったので帝劇の稽古場の休む椅子となり、最後は更衣室の休む椅子になった」と、会見で井上さんが教えてくれました。
「ただのくたびれた椅子に見えるかもしれませんが、数々の俳優が座っています。
稽古場で座るときは、大抵落ち込んでいるとき。そういう“いわれ”を知らないと、ただの汚いソファーに見えるでしょうが、ひとつひとつの展示物に、僕たちの思い入れがあるんです」。
最後には「ツアーガイドをやりたい」と言うほどの井上さんの帝劇への熱い思いは、展示物の紹介でも感じられました!
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他にも見どころがたくさん!
関係者入口に設置されている「着到板」
「1階観客席」の座席表
他には、帝劇最後の公演、CONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』に出演されたみなさんのサイン、帝劇ファンのみなさんから寄せられたメッセージ、展示の最後には「新・帝国劇場 パース」もあります。これを見ると、新しい帝劇の完成が待ち遠しくなりますね。
フォトスポットも用意されています
普段、オーケストラピットが設置されることが多い、幻の1階XA列の座席が展示されていて、座って写真を撮ることができます。あまり使われていないためか、椅子がとてもきれい!
ここは、アクスタやぬいぐるみを置いて写真が撮れるようになっています。「推し活」にはピッタリの場所ですね。
また、帝国劇場展限定「フォトブース」も用意されています。簡単に言うと帝劇がバックに映るプリクラ。これは、うれしいサービスではありませんか?
9階には「Café IMPERIAL」!
椅子やテーブルもそのままに、「Café IMPERIAL」が9階で再現されています。
行かれた方はご存知の、冷たい飲み物にはコースター、暖かい飲み物にはスプーン、ケーキを食べればフォークがお持ち帰りできるサービスも同じだそうです。
うれしいのは、あの「幻の豚まん」もメニューに含まれていること。幕間(まくあい)に立って食べることが多かったあの豚まんを、椅子に座ってゆっくり堪能できます。
また、井上さんの差し入れの定番「福砂屋のフクサヤキューブ」はお土産として、森さんの定番「とんかつまい泉」のポケットサンド(森公美子さんの特別焼き印入り・イートインもテイクアウトも可)も用意されています。
ちなみに、会見場で井上さんと森さんに用意されていたのも、この椅子とテーブルでした。
最後にグッズをご紹介します。
定番のトートバッグやシアターベア加え、クロージングのグッズとして人気の万年筆やIMPERIAL AROMAなども用意されています。
また、この展示会の特別なグッズとして、シアターベア用の衣装ライオンスタイルや帝国劇場展記念缶に入ったスイーツもお目見え!
こちらの缶、左側は、帝劇の外観をプリントしたもの、右側は半券を切ったあとのチケットのサイズになっています。空になったあとも、チケットの保管に使えるのはうれしいですね!
「今日は帝劇 明日は三越」
三越は帝国劇場の舞台衣装や装飾を手掛けるなど、1911年の帝国劇場の開館以来、深い関わりがあります。
このコピーは「帝国劇場で観劇した後、翌日は三越で買い物を」、演劇とショッピングを楽しむ文化の象徴として有名なキャッチコピーです。
今回特別に、それを使ったグッズもあります。
この展示会のコンセプトは「帝劇へのお客様の想いを未来につなぐ」。新しい帝劇がお披露目される未来も、同じように観劇もショッピングも楽しめる日常であることを願いたいと思います。
「帝国劇場展~THE WORLD OF IMPERIAL THEATRE~」詳細
会期:~4月27日(日) 10:00~20:00(最終日17:00終了)
※入場は各日終了1時間前まで
※全日程、日時指定制での有料展覧会
会場:銀座三越 新館7階 催物会場
■カフェ「Café IMPERIAL」
会場:銀座三越 新館9F 銀座テラス テラスルーム
営業時間:各日11:00~19:10(最終日17:10終了)
座席料:1,100円(1テーブル(2席))
※座席(イートイン)の利用は事前予約制(有料)
※予約受付:利用希望日2日前の23:59まで。先着順
※最終日は16:30最終入場
※40分の完全入替制
※テイクアウト・おみやげ販売コーナーは予約なしで利用可能
「帝国劇場展~THE WORLD OF IMPERIAL THEATRE~」公式サイト
取材・文/本誌編集部