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梅雨&台風シーズンは水害に警戒! 命を守るカギは正確な情報収集と早めの避難

梅雨から、夏・秋の台風シーズンは大雨による災害に警戒が必要です。「大雨警報」や「大雨注意報」が発令されたら、どのような行動をとればよいのでしょうか。水害時の命を守る行動として、最も大切なことは正しい情報を入手して、早めに行動すること。水害が起きたときの避難場所や避難方法について、日頃から考えておくことも重要です。

水害はどこでも起こる! 河川が近くになくても要注意!

 

こんにちは。防災士、防災食アドバイザー、管理栄養士の今泉マユ子です。

 

災害時に命を守るために、今からできることを考えていきましょう。今回のテーマは「豪雨のときの行動」です。

 

近年では、例年の数カ月分に相当するような大量の雨が短時間に降る「ゲリラ豪雨」が増えています。これにより、河川の氾濫、道路の冠水、住宅の浸水、土砂災害など、さまざまな被害が発生します。

 

水害というと、河川が近くにある場所で起こるものと思ってしまいがちですが、川がない地域でも浸水が起こることがあります。それが「内水氾濫」です。

 

内水氾濫は、大雨が降って道路や公園に水がたまり、排水が間に合わなくなることで発生します。すると、マンホールから水があふれたり、住宅の中や地下に水が流れ込んだりすることがあります。

 

水害はどこにいてもその危険性があります。だからこそ、「自分の住む地域で水害が起きたら、どう避難するか」を、平常時から考えておくことが何より大切です。

 

安全に避難できるかの「カギ」は情報

 

水害から命を守るには、「正しい情報をいち早く得て、すぐに行動する」ことが何より重要です。そのためには、普段から大雨や台風などの気象情報に関心を持ち、チェックする習慣をつけましょう。水害をもたらす大雨や台風は、事前にある程度の予測ができます。

 

また、避難情報をどのように受け取るかも、平常時から確認しておくことが大切です。
・テレビ・ラジオのニュース
・防災アプリや気象庁の情報
・自治体のメール配信サービス
・防災行政無線(屋外スピーカー)
このように、複数の情報源を組み合わせて、確実に情報を得られる態勢を整えておきましょう。

大雨警報が出たら早めに避難! 地下は特に警戒を

 

激しい雨が予想されると、「大雨注意報」や「大雨警報」が発表されます。このような警報が出たら、「避難が必要かどうか」ではなく、「どう避難するか」を考える段階です。

 

危険があるときは早めに避難するというのが基本ですが、特に地下にいるときは危険に気づきにくく、逃げ遅れるリスクが高くなるため、注意が必要です。

 

地下が浸水すると一気に水が流れ込み、あっというまに水没する、水圧でドアが開かなくなる、といった危険性があります。

 

過去には道路の冠水が原因で地下に水が流れ込み、命を落とす悲しい事故が起きました。

 

福岡市博多駅周辺のオフィス街が豪雨により冠水し、その影響でビルの地下階が浸水。ビルの地下1階で働いていた飲食店の従業員が逃げ遅れて命を落としました。

 

また、東京都新宿区では、低地の住宅地が冠水し、住宅の地下室が浸水。エレベーターで様子を見に行った居住者が、水没した地下室に閉じ込められて亡くなりました。地下室には外階段もありましたが、水圧でドアが開かず、エレベーターも濡れて動かなくなっていたそうです。

 

地下にいると、地上の雨の状況がわかりにくいため、行動の遅れにつながることがあります。地下にいるときこそ、気象情報や避難情報を常にチェックする意識がとても重要です。

 

車でのアンダーパスの通行は避ける!

 

車を利用することが多い方にぜひ気をつけていただきたいのが、アンダーパスの通行です。

 

アンダーパスとは、鉄道などの下をくぐるように、道路が立体交差している場所のこと。最も低いところでは、周辺の地面より約5mも低くなっています。周辺の道路に降った雨水は、このアンダーパスに流れてきます。

 

アンダーパスには、流入した雨水をくみ上げる排水ポンプが設置されていて、冠水を防止するようになっていますが、予想を超える大雨の際には排水が追いつきません。

 

そして、すり鉢のような形をしているため、いちばん低い部分に水が集中し、あっというまに、深さ30cm程度の水たまりができてしまいます。

 

「深さ30cm程度なら大丈夫でしょう?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ところが、水しぶきでタイヤが滑ると、急な坂道を上れなくなることがあります。

 

その場合、車を置いて逃げるしかなくなりますが、ためらっていると水位がどんどん上がってきます。そして、車のドアの高さまで水が来ると、水圧でドアが開かなくなり、脱出できなくなる恐れがあります。

 

「このくらいの雨なら大丈夫」「前の車が通行できたから安心」と思わず、車でのアンダーパスの通行は避けるようにしてください。

 

また、万一、車が水没し、水圧でドアが開かなくなったときのために、車には脱出用ハンマーを備えておきましょう。

緊急時脱出ハンマー

ハンマーは、運転席と助手席、後ろの席からも手が届く場所に置いています

シートベルトが外れない事態に備えて、シートベルトカッター付きのものがおすすめです。

 

体験を通じてわかった「水圧の怖さ」

 

水圧で地下のドアや車のドアが開かなくなるというのはどのような状況か。リアルに想像してみることはなかなか難しいかもしれません。

 

東京都にある東京消防庁「本所防災館」には「都市型水害体験コーナー」があり、水位ごとに実際の水圧を体験することができますので、機会があればぜひ一度、訪れてみてください。

 

私は2023年4月に訪問し、地下のドアや車のドアに水圧がかかった状態での開放体験をしてきました。

 

水位ごとにドアにかかる水圧を体験

 

川の氾濫や集中豪雨によって地下に水が流れ込んだ状態を想定したコーナーでは、水位を「10cm」から選んでの体験が可能です。水位10cmでは両手で力いっぱい押してなんとか開けられましたが、20cmになるとドアはかなり重くなり、30cmでは私の力ではまったく開けることができませんでした。

 

乗車していた際、車が水没した状況を体験

 

水圧の怖さを実感できる、とても貴重な体験でした。

記事が続きます

自宅近隣の水害リスクをハザードマップで確認

 

自宅にいるときは、避難するか自宅にとどまるかは、命を守るうえで大切な判断となります。普段からさまざまな状況を想定して考えておきましょう。

 

まずはハザードマップを確認!
最初のステップは、ハザードマップで自宅周辺の水害リスクを確認することです。ハザードマップには、災害の種類別(洪水、土砂災害、津波など)に危険な区域や避難場所が表示されています。

 

水害に備える場合は、「洪水」「内水氾濫」などが記載された水害用のハザードマップを見ましょう。

 

チェックポイント:
・自宅は浸水想定区域に入っているか?
・どのくらいの高さまで水が来る可能性があるか?
・いちばん近い避難場所はどこか? そこまでの安全なルートは?

 

2018年の西日本豪雨で大きな被害を受けた岡山県倉敷市真備町では、ハザードマップで想定された浸水区域と、実際に浸水した区域がほぼ一致していたと報告されています。

 

「どこに避難するか」も考えておこう

 

自宅や勤務先が川沿い・低地・高潮リスクの高いエリアにある場合は、あらかじめ避難先を複数考えておきましょう。

 

・近くの避難所(徒歩で行かれるか?)
・近隣の高層マンションの上層階(親戚・知人宅を含む)
・安全なホテル など

 

また、台風や豪雨で交通機関が止まり、帰宅困難になるケースもあるため、職場や学校周辺の避難場所も確認しておくと安心です。

 

以前、九州に台風の予報が出たとき、友人は「交通が止まっても出勤できるように」とすぐ、職場近くのホテルを予約したそうです。チェックイン時は大行列、ホテル近くのコンビニの棚は空っぽ。さらに、自宅周辺のスーパーも水や食料が売り切れて、早めに閉店してしまったとのこと。こうした話を聞いて、「早めの判断・行動」がどれだけ重要かを再認識しました。

 

なお、自宅にいる場合、浸水や暴風で外へ避難するのがかえって危険な場合もあります。そんなときは、できるだけ高い場所・安全な部屋(崖から離れた2階など)にとどまる判断が必要な場合もあります。自宅近くにより安全な建物があれば、近隣避難(近くのマンションの上層階など)を選ぶのも有効です。

 

「災害時にはパニックにならずに冷静になり、落ち着いて行動しましょう」と言われますが、実際はどうでしょうか。大雨のとき、家の中に水が入ってきているのに「まだ大丈夫」「自分は大丈夫」と逃げない人がいました。

 

落ち着いた行動をとろうとすることで、逃げ遅れてしまうことがあってはなりません。

 

冷静な行動というのは、行動を控えるということではなく、命を守るために、一人一人が自ら判断し、適切な避難行動をとること。

 

その力を養うためには常日頃から、避難場所、ハザードマップ、住まいについて確認し、災害時に必要なものを備え、正確な情報の入手方法を知り、災害時の連絡方法、災害発生時の行動を考えておくことが大切です。

 

【教えていただいた方】

今泉マユ子
今泉マユ子さん
管理栄養士、防災食アドバイザー、防災士、日本災害食学会災害食専門員
公式サイトを見る
Instagram

管理栄養士としてレシピ開発、食育、SDGsクッキングの指導を行うとともに、防災食アドバイザーとしても活躍。災害時でもポリ袋と湯煎で簡単にできる調理法「お湯ポチャレシピⓇ」の指導や備蓄アドバイスなどを行う。さらに、2017年には防災士の資格を取得。食の範囲にとどまらない幅広い防災活動に従事する。これまでに、全国で行ってきた講演は400以上。日本栄養士会災害支援チーム(JDA-DAT)リーダー。東京消防庁から拝受した感謝状は11枚になる。著書に『SDGsクッキング(全3巻)』『親子で学ぶ防災教室』シリーズ(理論社)『かんたん時短、「即食」レシピ もしもごはん』(清流出版)など22冊。テレビ出演200以上、ラジオ出演300以上。新聞、雑誌、WEBサイトなどでも活躍中。

 

取材・文/瀬戸由美子

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