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朝起きたときの「なんか疲れた…」をなくすには

疲れを取るには睡眠が大事、とわかってはいるけれど、なかなか思うようにはいかないのが50代。「自分にとってのベストな睡眠を見つけることが、まずは疲労回復の第一歩」と言うのは、休養に詳しい片野秀樹先生。平日の睡眠時間を補う昼寝についても、調子を落とさずにメリットだけを享受する「正しい寝方」を伺いました。

「ベストな睡眠」って? 魔法の答えはありません

 

ただ「寝る」だけでは活力を上げられないことは、第4回でもお伝えしたとおり。

とはいえ、睡眠は生理的休養の柱をなすもので、疲れを取るためにはとても大切。

 

睡眠の最も大事な役割のひとつが細胞の修復です。

「昼間の活動で傷ついた細胞の修復を行うのは、主に夜の睡眠中です。昼間も修復はされていますが、活動のほうに酸素が優先的に使われているため、優先度は低い。
一方で睡眠中は消費する酸素が少ないために、修復に手をかけられる。それが疲労の回復になります。

ほかにも、肥満生活習慣病、感染症の予防のほか、認知症の予防にも睡眠はとても重要な役割を果たしています」(片野秀樹先生)

 

50代の正しい睡眠って?

でも、50代ともなると夜よく眠れなかったり、忙しくてそもそも睡眠時間が足りていないという人も多く、朝起き抜けなのに「疲れた…」とつぶやく人も少なくないでしょう。

 

「睡眠に関しては『睡眠時間は○時間がいい』とか『成長ホルモン分泌のゴールデンタイムは夜10時から深夜2時』などいろいろな説がありますね。

睡眠の重要さを体感としてみんなわかっているから、ベストな睡眠を得るべくさまざまな情報を得ようとします。
でも睡眠に関しては、実はまだわかっていないことも多く、個人差が大きい。

 

睡眠時間の長さは10時間寝ないと調子が悪い人もいれば、3時間で大丈夫という人もまれにいます。
また、90分間の眠りを1日に5回に分けてとるというケースも。

成長ホルモンに関しては、深い眠りのときに分泌が盛んになることは確かであるものの、実験を行ったのがその時間帯だったために『夜10時~深夜2時』とされました。今ではその説は否定されています」

 

要するに、睡眠は個人差が大きく、万人にとっての正解というのはないということ。

「とはいえ、やはり短すぎると細胞の修復には不十分で疲れは取れませんし、脳の老廃物であるアミロイドβが十分に排泄されずに認知症のリスクは高まります。

最近、深い眠り(深睡眠)を重視することで睡眠時間の短さを補うような説も見受けられますが、やはりある程度の時間の長さは必要。

 

少なくとも6~7時間程度は確保すべきでしょう。

短い睡眠では食欲増進ホルモン量が増える、という報告もあります。

それより短い人は、まず生活サイクルの見直しを検討してみてほしいと思います」

 

睡眠時間が長すぎるのも健康にとってはリスクがあります。

「例えば疲れているからと週末に10~12時間も寝だめをしたとしましょう。

実はたった1日寝て過ごしただけでも、体を動かす骨格筋の筋タンパク質は0.5~1%も減ってしまうのです。

 

それが土日の2日間、毎週だったら?

ただでさえ筋力の衰えが加速しやすい50代にとって、いいことのはずがありません。
また第5回でもお話ししたように、寝てばかりいて体を休めた気になっていても、疲労の回復をむしろ遅らせているのです」

 

記事が続きます

平日の睡眠不足を補う「15分の昼寝」

とはいえ、50代の多くは平日の睡眠が足りていない人のほうが多い模様。

 

そんな人はぜひ「15分程度の短い昼寝」を取り入れて。

パワーナップ

「昼寝には、疲れがすっきり取れる、判断力や集中力が上がる、作業効率が上がるなどさまざまなメリットがあります。

でも、あまり長く寝てしまうと夜の睡眠に差し支えますし、眠りが深くなると起きるのがつらい。

ベストは15分程度でしょう。

 

昼休みにデスクに突っ伏して、などでもOKです。
いつのまにか寝落ちしてしまう、ではなく、午後のパフォーマンスを上げるために計画的に昼寝をとる。

それを『パワーナップ』と呼びます。

 

もしもっと寝たい、寝られる時間や場所があるという人は、1時間半後にタイマーをセットしても。

ご存じのように、睡眠は浅いレム睡眠とノンレム睡眠が交互になっており、1ターンは約90分間。

ちょうど1ターンが終わるときに合わせて目覚ましをかければ、スムーズに起きられるでしょう。

でもこれも平均の話なので、自分がどのくらいならすっきり起きられるのか、試しながら見つけていくのがいいと思います。

 

画一的な答えを求めるのではなく、どう寝ると調子がいいのか、まずは自分自身を知ることが大切です

 

記事が続きます

リカバリーウェアを活用して夜の睡眠の質を高める

睡眠に難をかかえる50歳にとって、最近よく目にする「リカバリーウェア」なるものはとても気になる存在。

 

「リカバリーウェア自体は、遠赤外線の作用で体を温めたりするものなど以前からありました。

ですが、かつては『雑品』という扱いで、機能的なことはあまりうたえなかったのです。

それが3年ほど前に『遠赤外線血行促進用衣』という医療機器としてのカテゴリーができたことで、一気に広まってきました。

多くは遠赤外線で体を温めて血流を促すというもので、第5回でお伝えしたように血流を促すことは疲労の軽減になります。

 

私自身が開発に携わっているリカバリーウェアは、これらとは異なり、自律神経に働きかけるタイプのものです。

これまでの研究結果から、皮膚への刺激により副交感神経へ作用することが明らかになっており、それによってリラックスが得られ、疲労回復が促進されます。

 

50代になると夜中に目が覚めてしまって、という人も多いでしょう。

そういう人にとっても、自律神経をサポートしてくれるためよく眠れるようになります。
自分なりのベストな眠りを見つけるためのひとつのソリューションとして、取り入れてみるのもいいと思います」

 

 

【教えていただいた方】

片野秀樹
片野秀樹さん
博士(医学)
公式サイトを見る

一般社団法人日本リカバリー協会代表理事、ベネクス執行役員。東海大学大学院医学研究科、国立理化学研究所客員研究員等を経て現在は老人病研究、未病研究等に携わる。休養に対する社会の不理解を解消すべく、多方面で活躍。著書に『「休み方」を20年間考え続けた専門家がついに編み出した あなたを疲れから救う 休養学』(東洋経済新報社)がある。

 

 

イラスト/二階堂ちはる 取材・文/遊佐信子

 

 

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『「休み方」を20年間考え続けた専門家がついに編み出した あなたを疲れから救う 休養学』

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