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津波から命を守るには? 夏休み、海へのお出かけ前にぜひ確認を!

旅行中は楽しい休暇を楽しみつつも、災害に対する警戒も忘れずにいたいもの。例えば、もし海の近くにいるとき地震が起きて、津波が発生したらどのように行動すればよいのでしょうか? 出かける前や現地に着いたとき、ほんの少し意識するだけでも、命を守る行動につながります。

土地勘のない旅先では、普段以上に警戒を

こんにちは。防災士、防災食アドバイザー、管理栄養士の今泉マユ子です。

 

夏休みを前に、海や山へ旅行の計画を立てている方もいらっしゃるのではないでしょうか。土地勘のない場所では、避難場所や避難ルートがわからず、備えも十分ではないので、災害に対してとても脆弱です。リゾート地での休暇を楽しみながらも、災害に対する心構えはしっかりと持っておきたいものです。

 

特に、海の近くにいるときに地震が起きたら、津波を警戒しなければなりません。これは、2011年3月11日に発生した東日本大震災での教訓として、多くの方の記憶に深く刻まれていることでしょう。

 

海辺で暮らしている方であれば、津波発生時にどこへ避難するのかを日頃から確認し、訓練やシミュレーションを行って備えていると思います。

 

ですが、普段、海の近くで暮らしていないと、なかなか津波を「自分ごと」としてとらえることが難しいかもしれません。

 

そこで今回は、「もし、海辺にいるときに地震が起き、津波の危険が迫ったら、どう行動するか」について、一緒に考えていきましょう。

 

海の近くにいるとき地震が起きたら、一刻も早く高台へ!

地震が発生し、津波が警戒されるとき、避難する際に注意したい点を以下にまとめました。海の近くにお住まいで、普段から意識しているという方も、改めて確認してみてください。

 

特に(6)は、旅行者よりも、自宅が海の近くにある方がついやってしまいがちな危険な行動です。ぜひこの機会に、しっかり意識していただきたいと思います。

 

(1) 防災無線やラジオでしっかり情報収集を

屋外スピーカーなどから流れる防災無線を落ち着いて聞くようにしましょう。津波が迫っているかどうか、災害の状況がどのようになっているか。正しい情報をいち早く得ることが、安全な避難への第一歩です。

 

(2) 友人や家族を待たず、各自で避難すること

津波から命を守るために大切なのは、「一刻も早く、高い場所へ避難する」ということです。誰かを待っている間に、避難のタイミングを逃してしまうかもしれません。あらかじめ、「万一、地震が起きて、津波の心配があるときは各自で高台へ向かう」ということを、旅行に同行する家族や友人と確認し合っておくことも大切です。

 

(3) 車には乗らない!

車での避難は、渋滞などに巻き込まれるリスクが高く、命にかかわる危険があります。避難は、徒歩が基本です。

 

(4)防波堤を過信しないこと

「防波堤があるから大丈夫」とは限りません。避難場所や避難所も万全とは言い切れないことがあります。今いる場所は本当に安全か? と常に考え、油断せずに行動しましょう。

 

(5) 絶対に海の様子を見に行かない!

避難の途中や、避難場所に着いたあとで、「津波が来るのか気になる」と思っても、とにかく海には近づかないことが鉄則です。実際に、「見に行った人が波にのまれた」という事例も少なくありません。

 

(6) 宿泊施設(家)に戻るタイミングに注意

避難したあと、最初の波が小さかったり、時間がたったりすると、荷物を取りに戻りたくなるかもしれません。でも、津波は1回では終わりません。2度、3度と繰り返し襲ってくるのです。津波警報や注意報が解除されるまでは、絶対に戻らないでください。

 

実際に、過去の津波では、「無事に避難したのに、その後家に戻ってしまい、次に来たより大きな波に巻き込まれて命を落とした」という悲しい事例が数多くあります。

 

「このように、海の近くで地震が発生した場合、気をつけたい点はたくさんあります。
なかでも「(6)戻るタイミング」は、とても大きな分かれ道です。

 

それでは次に、「津波は繰り返しやってくる」という特徴について、もう少し詳しくお話ししたいと思います。

 

甚大な被害をもたらしたのは3度目の津波

津波の危険性についてはよく、地震直後に起きる最初の津波だけでなく、時間をおいて発生する「第2の津波、第3の津波」に注意が必要だといわれています。

 

私自身も、知識としてはその点は常に意識してきました。ですが、それを改めて現実のこととして強く感じたのは、千葉県旭市にある「旭市防災資料館」を訪れたときです。

旭市防災資料館にて。津波の大きさがわかるパネルが展示されています

 

管理人の方に、津波の被害についてお伺いし、
「津波は繰り返しやってくる」
「時間差で、何度も発生する」
といった重要な教訓を、改めて実感しました。

 

2011年3月11日に発生し、東日本に大きな被害をもたらしたマグニチュード9.0の巨大地震により、千葉県の旭市でも震度5強が観測され、命を落とした方、行方不明になった方が16人と記録されています。

 

千葉県の旭市では、道路や建物の損壊による被害も多く報告されていますが、何よりも多くの命を奪ったのは地震発生から約2時間半後、3度目に押し寄せた、最大7.6mにも達する大きな津波でした。

 

そして問題は、それが「3度目」の津波だったことです。

 

地震のあと、避難していた人たちは、避難場所から1度目の津波を見ていました。そして、もちろん2度目の波も警戒し、避難場所から海の様子を見ていました。

 

しかし、第2波が比較的小さかったことから、「もう大丈夫かもしれない」という空気が漂い始めたといいます。

 

取るものも取りあえず避難してきたため、「暗くなる前に、家の様子をみにいこう」と考え、自宅に戻る人が増えてきました。

 

そのとき、3度目の津波が、想像をはるかに超える規模で襲ってきたのです。

 

このような悲劇を繰り返さないために、津波警報や注意報が解除されるまでは、一時的であっても海に近づかない。決して戻らない。

 

このルールを、どうかご自身と大切な人の命を守る行動として、強く心に刻んでください。

旅に出たら、街中の表示をしっかりチェック!

旅行などで海の近くを訪れた際、もし津波が発生したら、特に怖いのは「土地勘がまったくない場所にいる」ということです。

 

地元の方であれば、高台の位置や避難ルートを日頃から把握していますが、旅行者はそうはいきません。そのため、「どこへ逃げたらいいかわからない」状態が、より深刻な危険につながってしまうのです。

 

そこでおすすめしたいのが、現地に到着したらすぐ、「避難に関する表示」を探してチェックすること。私自身も、海辺に限らず旅先では必ず、「もし今、災害が起きたら、どこへどう逃げるか?」を意識しながら移動しています。避難場所や津波避難タワーを示す標識、海抜を示す案内板、津波避難ルートなどが設置されていることが多いので、歩きながら注意して見るようにしましょう。

 

例えば、高知県は防災意識がとても高く、いたるところに、津波や避難に関する標識や表示が設置されていました。こうした標識に目を向けるだけでも、いざというときの判断につながります。

 

観光で訪れた場合も、こうした表示を見つけたときは、必ず確認しておきましょう。表示されている内容を見ると、その場所でどのような災害が起きる危険性が高いのかがわかります。
津波注意報の標識

津波警戒地区であることを知らせるとともに、津波避難場所の方向を示している標識

津波タワー

緊急時にはここを拳で破って入るのだそうです

 

また、海が近いのはリゾート地だけではありません。例えば、私の住まいがある横浜市も海に面しており、日常の生活圏にも津波リスクがあります。

 

実際に、駅の周辺などには、「津波が起きた場合、どの方向へ避難すればよいか」を示す標識や案内表示が設置されています。このように、身近な場所にも“もしも”を想定した表示があることを知っておくと、普段の生活の中でも「防災の視点」を持つことができます。

横浜駅近隣に掲示されている津波避難情報のパネル。高台の方角が⇒で示されています

 

どちらの方角に高台があるのか、津波避難場所、津波避難タワーがどこにあるのか、海の近くにいるときは、掲示されている標識を確認する癖をつけておくと安心です。

 

これから夏のお出かけシーズン。海の近くに滞在する予定がある方はぜひ、お出かけ前に、あるいは到着してからでも、「もしものとき」どう行動するか考えてみてください。
今泉マユ子
今泉マユ子さん
管理栄養士、防災食アドバイザー、防災士、日本災害食学会災害食専門員
公式サイトを見る
Instagram

管理栄養士としてレシピ開発、食育、SDGsクッキングの指導を行うとともに、防災食アドバイザーとしても活躍。災害時でもポリ袋と湯煎で簡単にできる調理法「お湯ポチャレシピⓇ」の指導や備蓄アドバイスなどを行う。さらに、2017年には防災士の資格を取得。食の範囲にとどまらない幅広い防災活動に従事する。これまでに、全国で行ってきた講演は400以上。日本栄養士会災害支援チーム(JDA-DAT)リーダー。東京消防庁から拝受した感謝状は11枚になる。著書に『SDGsクッキング(全3巻)』『親子で学ぶ防災教室』シリーズ(理論社)『かんたん時短、「即食」レシピ もしもごはん』(清流出版)など23冊。テレビ出演200以上、ラジオ出演300以上。新聞、雑誌、WEBサイトなどでも活躍中。

取材・文/瀬戸由美子

 

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