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八重山の島は今が旬「星のや竹富島」で 味わう“島テロワール”な滞在(前編)

小野アムスデン道子

小野アムスデン道子

世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、旅の楽しみ方を中心としたフリーランス・ライターへ。
旅と食や文化、アートなどライフスタイルについての執筆や編集、翻訳多数。
日本旅行作家協会会員。
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「星のや竹富島」で味わう

“島テロワール”な滞在(前編)

 

 

こんにちは小野アムスデン道子です。日本の最南西端の島々である八重山諸島の一つ、竹富島。冬でも温暖できれいな水域で育つ車海老や、島野菜などは今まさに旬を迎えています。島の伝統建築の48棟が集落のように立つ「星のや竹富島」で提供されている、この旬の素材を生かした冬限定の料理コンセプト「島テロワール」のディナーと島の暮らしを感じる充実の滞在を、2回に分けてご紹介します。

竹富島は八重山諸島の中で最大の石垣島から近く、高速艇で約10分。竹富島に到着すると緑が青々と元気に茂り、ブーゲンビリアやハイビスカスの花が咲き乱れていました。

ここは、島の周囲が約9kmと小さく、空港のある石垣島とは風景が異なります。サンゴ礁が隆起してできた島で、そのサンゴが細かく砕けた美しい白砂が敷かれた小道に、サンゴでできた石垣に守られ、伝統的な琉球赤瓦の家々が立っています。

のんびりした空気とその小さな島らしい風景がなんとも美しいのです。

観光客を乗せた水牛車が集落の中をゆっくり歩いていきます。

 

竹富島に来るのが初めてという方は、まず港に着いたら、港からすぐの竹富島ビジターセンター「ゆがふ館」を訪れるのがおすすめ。心を一つ協力し合う“うつぐみ”の心を大事にする竹富島のことを行事や歴史、言葉や農作物、民芸などいろいろな面から、目や音で感じられるように展示した、入館料無料のミュージアムです。

旧暦の1月には田植えをしにお隣の西表島へ向かったことや(サンゴ土壌の竹富島は稲作に不向きだったため)、2月には海からアーサー(あおさ)を採るなど、自然の恵や営みで島の1年が示され、年間の大事なお祭りの興味深い展示も。島の豊作を願って9、10月に行われる種子取祭(タナドウィ)は、10日間にわたって祝う重要なお祭りで、奉納芸能も行われ、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。小さな島の祭りをはじめ、様々な“うつぐみ”が感じられます。

ゆがふ館の“ゆがふ”は「天からのご加護により豊穣を賜る」という意味だそう。

 

竹富島ビジターセンター 竹富島ゆがふ館   https://www.taketomijima.jp/

ゆっくりした空気と自然からの恵みを大事にする島の心。いつもの忙しい日常から離れられるのがうれしい竹富島。「星のや竹富島」は、約2万坪の敷地で、白砂の小路に並ぶ琉球赤瓦の48棟の一戸建てが客室。

スパ棟、プール、見晴し台、集いの館、畑(キッチンガーデン・命草の庭)もあって、まさに島の集落に暮らすような気持ちの滞在ができます。

まず、レセプションで命草(ぬちぐさ:島民の健康を支えてきた野菜やハーブを総称する島の言葉)のお茶をいただき、客室になる家に向います。白砂の路にサンゴで組まれた石垣が続くなか、琉球赤瓦の屋根の上に鎮座した一棟一棟表情の違うシーサーが迎えてくれます。

入り口には、魔除けの意味もある伝統的な石積み(ヒンブン)が立ち、しきたりにのっとり左側から家へ。

木造平屋建ての風がよく通る造りで、縁側は全て南側で広々した庭に面しています。広さやバス、畳み敷きなどの特徴で4タイプある客室のうち、宿泊したのは2名で宿泊できる「ガジョーニ」。

板敷きのゆったりした部屋の中央にある白いバスタブが印象的で、寝室はキングサイズベッドでゆっくり休めます。

 

 

冬の晴天の一日は、温かで湿気もなく爽やか。西海岸にある白砂がきれいなビーチ、コンドイ浜を訪れました。

海開きは3月中旬ですが、猫が日向ぼっこするのんびりした浜で透明な海の青さに癒されました。「星のや竹富島」からは無料のビーチ行き送迎バスが出ています。

海と青空、緑や花が美しい竹富島は、背の高いスギやヒノキが生えていないので、花粉症の心配がありません。「星のや竹富島」では5月の末まで、海辺のピクニックやお部屋でのハーブバス、月桃のアロマオイルのスパなどのプログラムを組み込んだ「花粉さよなら滞在」を実施しているそう。

 

 

「星のや竹富島」に戻って、ディナーまでのんびり過ごします。

料理にも登場する命草を畑に見に行ったり、グアバやパッションフルーツが敷地に生えているのを発見したり、ゆんたくラウンジで三線(さんしん)の演奏を聞きながらゆっくりと。

 

 

お食事の前に、軽くアペリティフをということで、「島風アペロ」を緑に囲まれた素敵な場所「風のテラス」で。

 

「島テロワール」のディナーは、アペリティフに加えて全8品のコース。生産物を育てる際に影響する土壌や天候そして歴史と人の営みまでを「テロワール」と意味づけ、竹富島の特徴的なテロワールで育った冬の旬の食材がふんだんに使われています。

 

 

1品目は「ガザミと島豆腐のクープ」で、琉球ガラスのグラスにワタリガニ(ガザミ)のタルタル、島豆腐、長命草のムースが層をなしてとてもきれい。長命草のグリーンな味とカニのクリーミーさが合います。

2品目「車海老のサンゴ焼き 命草ソース」は、シャコ貝の上の熱したサンゴの下から、月桃の葉にくるまれた車海老が登場するというプレゼンテーション。

ふんわりと月桃の香りをまとった車海老はきれいな水域で育てられ、今が旬。甘くてとてもコクがあります。

そのままで、またはナンプラー、ピーナッツオイル、長命草で作った酸味のあるソースをつけても、どちらもそれぞれにおいしい。

3品目「フォアグラとクブシミのポワレ イカ墨のリゾットと共に」は、島の素材である甲イカ(クブシミ)をフォアグラの甘味が引き立てます。上にのせられたチュールと下のリゾットはイカスミで。沖縄のジューシー(炊き込みごはん)を転じたリゾットにもぷりぷりしたイカが入って、歯触りも味も見事です。たんかんのソースで爽やかさも。

4品目は「竹富の芋 3種の調理法」で、黄、白、紫の竹富芋をそれぞれ、揚げてチーズをのせて、蒸してトリュフを添えて、香ばしくローストしてナッツをのせてと3種の調理法でという趣向。手前に添えられたトリュフバターはお好みで。リッチな風味で一緒に食べるのもまた味わいが楽しい。

5品目「車海老のポワレとそのビスク 人参のクリームと共に」は、一口目にビスクの濃厚な味わいに驚き、人参のクリームを混ぜるとマイルドに味わいが変わり、カリッとしたポワレがまたアクセントを添えて、この組み合わせの妙が抜群でした。

6品目はメイン「牛フィレ肉 パン包み焼き 命草のベアルネーズと共に」。長命草とフーチバ(よもぎ)を練り込んだパンの中から、ほどよくサシが入った牛肉登場。

エシャロットのベアルネーズソース、島らっきょに緑のフーチバやハンダマ(水前寺菜・金時草)、赤いインカの涙とも呼ばれるスーパーフードの甘酸っぱいスウィーティードロップを添えて。

7品目「あかね芋の軽いタルト」と8品目「マンゴーのババ  泡盛の香り」は、ダブルデザート。どちらも芋のほっくりした甘味やマンゴーのリッチな甘味を、クリームが軽やかに仕上げています。ババ(サバラン)は添えられた泡盛を自分でフィナンシェに注いで好みの味に仕上げる楽しさも。泡盛は「玉の露 5年古酒」で、ふくよかな香りが濃厚なマンゴーと黒糖風味のフィナンシェにマッチ。

 

どの品も旬を迎えた食材の味、食感の生かし方やそれを引き立てる命草の使い方が見事で、竹富島の自然の恵が洗練された料理で味わえました。プレゼンテーションも凝っていて一品一品出てくるのが楽しみで、もう時間を忘れてしまったほど。

 

「島テロワール」ディナーコースは2020年3月10日まで。料金12,000円(税・サービス料別)、宿泊者限定です。

 

残り1日は、竹富ミンサー織りに挑戦し、ゆったりしたスパで寛ぎ、「星のや竹富島」の島時間を楽しみます。

次回をお楽しみに。

 

 

 

星のや竹富島

沖縄県八重山竹富町竹富

0570-073-066 (星のや総合予約)

https://hoshinoya.com/

 

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