「大和当帰(やまととうき)」をご存知ですか?冷え症対策の薬湯によく用いられる薬草です。そんな大和当帰の生産地である奈良県宇陀(うだ)市に、元は庄屋の豪邸だったいう屋敷を改装し、薬湯につかれるという宿があります。
「うだ薬湯の宿 やたきや (以下やたきや)」は食事も敷地内の農園で育てた無農薬・有機野菜を使ったこだわりの宿です。最寄駅は、大阪駅から1時間ちょっとの近鉄大阪線「榛原(はいばら)」。駅まで送迎があります。
宇陀市は、日本最初の薬猟(薬草の採取)の里と言われ、日本書記にも登場する場所。薬湯は日本古来のリトリートという感じです。そのほかにも古くから女性に開かれた寺として女人高野(にょにんこうや)として知られる「室生寺(むろうじ)」や、龍の住まう場所もあると言われていて、観光に訪れる人も多いのです。
「榛原」の隣駅「室生口大野」駅からバスで室生寺や室生龍穴神社(むろうりゅうけつじんじゃ)、吉祥龍穴(きっしょうりゅうけつ)などのパワースポットを巡ることができます。秋深くなると、室生寺は真っ赤なモミジに彩られ、紅葉も楽しめます。清らかな室生川のほとりにある龍穴は、しめ縄の向こうにまさに龍がいそうで神秘的な雰囲気です。
堂々とした門構えの「やたきや」に到着。目の前には奈良の里山の美しい風景が広がります。
古い建物と和モダンな照明や家具などが調和した宿で出迎えていただいたオーナーご夫妻。ご夫人の田中ちか子さんは部屋に置かれたアメニティのルーヴルドーや復元ドライヤーを手がける会社の創業メンバーでなんとOurAge にもご登場!まったくの偶然でご縁に驚き!
まずはアンティークな箱火鉢のテーブルで、大和当帰ときなこがかかった本くずのお菓子とお薄をいただき、ほっと一息。そして、お部屋に向かう前に薬湯のモトづくり。
大和当帰の葉、その粉末をベースにわさび菜、大葉、人参、イタリアンパセリなど様々な植物の粉末を加えたものを香りなどを嗅ぎながら、自分でブレンドして不織布の袋に入れていきます。これをお風呂に浮かべて薬湯にして楽しむのです。
「やたきや」は、築300年という庄屋のお屋敷だった建物を改装したわずか4室の宿。私は、吹き抜けの2階にベッドが並び、梁の走る天井が美しい蔵を改造したお部屋に泊まりました。ご主人が畳店も経営されてもおり、半畳たたみのリビングルーム、和紙を畳にしたベッドルームと、とてもきれいで足触りのよさが抜群でした。
バスルームは香りのよいヒノキで囲まれており、ゆったり薬湯を楽しむ湯船は陶器製です。薬湯でほっこりと温まり、肌にやさいしルーヴルドーのアメニティとシャンプー後の復元ドライヤーで、髪は艶やかに肌はしっとりと心地よい湯上りでした。
夕食は朝採れ野菜や宇陀牛などを使った革新的なイタリアン。写真は、ヒゲまで食べられる香ばしいヤングコーンのグリルに黒ニンニクのソースをかけた一品。これが印象的でした。
朝食は黒豆も入った茶粥と当帰葉の入ったとろろ汁にいっぱいおかずが並びます。器がとても素敵で、奈良の陶芸作家のものや、蔵から出てきた江戸時代・慶応年代のものも使っているそう。
緑深い里で身体に優しい食事をいただき、歴史のある薬湯に浸かる一日。生き返った気分になれました。「やたきや」は、ランチ・ディナーの外来利用も可。秋の紅葉を楽しみながら訪れてみては。宿泊は、2名1室2食付き、1部屋につき63,800円~(税・サ込)。