「熟年」って言葉があるけれど、中年以降になると、人間として円熟すると同時に、熟れすぎて、傷んでくるところが出てきます(笑)。
そうするとやはり濃い味付けが必要になってくるんですね。野菜なんかもそうですけれど、「あら、ちょっと古くなってきたわね」というとき、煮込んだりして手を加えれば、なんの問題もなく、おいしく食べられます。
同じように、私たち熟年は、生のサラダで食べられるほど活きがいいわけではないので(笑)、カレーとかトムヤムクンとか、スパイシーな味付けが必要になってくるんです。素材の良さだけでは勝負しづらいという話ですね(悲)。
では、その「味付け」って何かといえば、自分の強みになるオプションということです。とくにこの年齢になると、人に喜ばれることや人を癒す能力や技術が最大の武器になります。
たいしたことじゃなくてもいいんですよ。料理ができる、マッサージが得意、パソコンを教えられる…など、生活に密着したことのほうが人の役に立ったりします。「私にはなんの特技もなくて」という人は、ボランティアに行くのでもいいと思います。
そうすると、あーら不思議、ただの中年のおばさんから、いろんな人に必要とされる人に。女としての賞味期限もぐーんと…伸びるかもしれません。
「おいしい男の作り方」1989年7月刊単行本カバー
取材・文/佐藤裕美