言葉の通りですね。とくに付け足すことはありません(笑)。よく言われることだし、みんなもわかっていると思うけど、それでも人間、おいしい話に弱いのよね。
私もかつてそれを痛感したことがありました。あれはまだ20代半ば、『りぼん』で連載していた頃のことです。珍しく『マーガレット』の編集部の人にご飯を誘われたんですね。
普通だったら、『何か頼みごとをされるのかも』って警戒するところだけど、レストランを聞いたら、銀座の『マキシム・ド・パリ』だって言うじゃないの。『行きます!!』って即答しました(笑)。
『マキシム・ド・パリ』といえば、日本のフレンチレストランの先駆けとなった名店で、絶対行きたいと思っていた憧れのお店。このころ私は“フレンチの階段”を着々と登っていたときで、最終目標が『マキシム・ド・パリ』だったのです!も~~、国体を飛ばして、オリンピック参加気分で、即答!!
初『マキシム・ド・パリ』は素敵だったわ~!!深紅に彩られ空間はとてもシックで、アールヌーヴォー調の内装も超私の好み。
もちろんお料理も素晴らしかったんだけど、何より驚いたのがギャルソンの紳士の心遣い。本当に感じが良くて、豪華なのにすごくリラックスさせてくれるの。
私が「マナーとか、よくわからないから、高級フレンチ店は緊張します」と言ったら、「フレンチのマナーは、たったひとつ。おいしく食べることです」と言ったのよ!!めちゃくちゃかっこいいでしょ!?さすが一流は違うと思ったわ。
1.5流くらいの店だと慇懃無礼な感じで、お客さんのことを上から目線で見てたりするけど、一流のお店は、お客さまをくつろがせてくれるのよね。そしてこのとき、デザートで食べたナポレンパイは、私の生涯最高のスイーツとなりました。
でも、この素晴らしいディナーの代償は高かった!結局、編集部の人に頼まれて『マーガレット』で80ページの読み切りを書くことに!おかげで腱鞘炎になりました…。ということで、文字通り、おいしい話には裏があり。みなさんも気をつけて!!
「Rose」特典 描き下ろしポスター
取材・文/佐藤裕美