これは私のマンガ『ブライド』に出てくる銀座のクラブ「プリマドンナ」の菜都子ママのセリフです。オペラ歌手を目指すヒロインの史緒ちゃんが、プリマドンナでアルバイトで歌うようになって、そこでピアノを演奏していた菜都子ママの息子の蘭丸と、いい雰囲気になるんですよ〜。
でも、蘭ちゃんが天才ピアニストのベティからワールドツアーに誘われていると知って、自分の存在が彼のものすごいチャンスを捨てさせると考えて、本当は好きなのに「遊びだった」みたいにわざと蘭ちゃんを突き放して身を引くのよ。同じ音楽を志す者として、そのチャンスの重みがしみじみと分かるから、つらいのよね。
苦しむ二人を見て、事情を察した菜都子ママが史緒ちゃんに言ったのが、「間違ったと思ったらすぐやりなおすのよ。後悔が少しで済むわ」という言葉。
いやあ〜まさにその通りよ!自分で考えて書いて言うのもなんだけど、本当にそうよ!
その日の問題は、その日に解決するのが一番。サッサと謝って、やり直せば、痛手も少ないんだけど、たいていの人は、プライドが高くて自分の間違いをなかなか認められなかったり、素直に謝りに行けなかったりして、グスグス、グスグス、何日も何か月も何年も抱え込むからね〜。謝ったら病気になるとでも思っているのだろうか…。
長くおいておくと、ろくなことがないのよ。漬物も味噌も甘酒も、発酵が進みすぎるとカビは生えるは、そのうち饐えて(うわっ!すえるってこんな字書くんだ。こんなに長く生きているのに、口にはしても漢字見たの初めて)酸っぱくなって食べられなくなるから。そのうち忘れてしまうけど、ちょこちょこ思い出しては気になるし、寝つきも悪いし、夢見も悪いし、どんどんどんどん取返しのつかないことになるのよ~~。
いわゆる「こじらせる」ってやつですね。私、なんか好きなんだよね~この言葉(笑)。誰が考えたんだろう、実にうまい表現だわ。やり直しのきかない感じがすご~く出てるし、古民家のきったないガタガタしてなかなか開かない木のトイレや、窓のちっちゃな鍵がうまく入らなくってイライラしてたあの感じ。あ、これが解る人は、間違いなく昭和の人ですね(笑)。
何ごともこじらせることのないように、失敗したと思ったら、いかに早く軌道修正するか!ソレが大事です。
そういえば、以前、うちでアシスタントをしていた人が、「最近、デブこじらせちゃって」って言ったのよ。「見事な表現だ!うまいっ!」って、思わず笑っちゃいました。生半可なダイエットではすでに手遅れって感じが、よく伝わりましたねぇ。
「プライド」集英社文庫<コミック版>
取材・文/佐藤裕美
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