私一条は、小娘の頃から集英社に豪華な食事をおごられまくった、ラッキーな女です。小娘に不似合いな銀座の鮨から、一流のフレンチ、イタリアン、冬には河豚と、妬まれること請け合いの美食のテーブルを堪能した、その経験から発見したことがあります。
それは、「接待上手」という技があるように「接待され上手」という技もある、という発見です。接待してくれる人の面倒をできるだけ省いて、「よし!いい接待したぞ」と、満足感を持ってもらえるテク。こちらを惜しみなく公開いたします!!まあ簡単に言えば「一条流接待されマニュアル」ですかね。一条流なのでだいぶ偏っていますが、そこのところはスルーでよろしく。
まず!接待をしようとする人は大抵「何を食べたいですか?」と聞きます。この時に大切なのは選択肢を二つ用意することです。
「鮨が好きです。でもフレンチもいいな」と、相手の判断に委ねる!これが大事!!鮨一択だと、相手が「昨日食べたし、当分鮨はいいや」と思ってるかもしれないし、まさかの鮨嫌いかもしれないし、いい鮨屋を知らないかもしれません。
でも、「フレンチでもいいな」と、もうひとつ選択肢があれば、相手の都合のいいようにできるじゃありませんか。一条は鮨なら毎日でもいいけど、フレンチなら週イチ…月イチでもいいや。
ここで、いちばんダメなのが「何でもいいです」ってセリフ。これはダメ!選択肢がありすぎて何にしたらいいか迷ってしまうし、「接待する人の好みにあうように努力した」という事実があったほうが、「自分は結構頑張った」という満足感が生まれるので、相手は気分がよくなるんですね(笑)。「この店、今話題なんですよ~」などと、うれしそうに教えてくれるはずです。
「ぜひお連れしたい店があるんですよ!」って言われたら、仕方がないのである程度の情報を聞きましょう。《それ、ちょっと嫌だなあ》と思ったら「ごめんなさい、ちょっと好き嫌いが多くって。大人なのに恥ずかしいです」とか言って絶対断りましょう。気分の乗らない店で接待されるのは結構苦痛ですよ。
それと、行く前にドレスコードを調べる!これは大必要。お店の名前を聞いたら、ネットで値段をチェック。高い店なら、それなりの恰好をしていかないと、相手もあなたも恥をかきます。そして相手が男性だったら、やっぱりそれなりに華やかな服装で行ったほうが喜ばれますね。いい店になればなるほど男性は色の濃い背広になるから、あなたが黒のワンピなら間違いなく葬式の帰り。だいたい値段が高くなるほど、和食じゃなければお店の人も黒です。
その昔、編集部のおじさんが高いフレンチをご馳走してくれると言うので、私は買ったばかりの、忘れもしないヨシエイナバの高い黒いスーツを着ていったんですよ。ブラウスは、襟元まできちっと締まっていて、品の良い大人のスーツスタイルよ!
さあどうよ!一条頑張ったのよ、文句ないでしょ!?って、自信満々でレストランに入った私を見たおじさんの…顔に!あからさまにがっかり〰〰!️って書いてあった!!
その時、私は自分の役目を知りましたね。誰も私にPTAの会長のような服は望んでいない。素人とプロの中間くらいの華やかさ。できれば「半チチ、ボディコン」で来てほしいんだろー!!ってね。
それ以来、ご馳走になる時、パーティーに行く時の私の戦闘服はボディコンです。「花」として存在していられるような華やかな服装をできるだけ心がけてます。サービス残業はしないけど、サービスボディコンは結構しましたね。
予定外だったのはなぜか、男より女にウケる。「触らせて〜♬」と女子にたくさんチチ触られました。減るもんじゃなし、いいけどさぁ、懐かしい変な思い出です。
話を戻すと、接待されている時は、引っ込んで黙ってるのでなく、積極的に場を楽しむこと。当たり前だけど、たとえまずくても文句を言わないこと。次に会った時、かならずお礼を言うこと。これらを守っていけば、きっとまた美味しい思いができる…かもしれない(笑)
ちなみに接待されプロの一条が、自分でつけたキャッチコピーは《ガード下からフレンチまで》(笑) 。どんな場所にも合わせてみせまする❤
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取材・文/佐藤裕美
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